神なる冬

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[SF] ワン・ドリーム ~みんなでひとつの悪い夢~

2012-03-18 17:07:48 | SF
『ワン・ドリーム ~みんなでひとつの悪い夢~』 中井拓志 (角川ホラー文庫)





これはコメディなんだろうか。それとも、他人の悲劇は喜劇に見えるというやつだろうか。

他人に悪夢を見せられるという能力を、科学的に増幅して非殺傷兵器にしようというプロジェクト。戦争をしちゃいけない自衛隊にとては、確かに喉から手が出るほど欲しい兵器かもしれない。しかし、それを一般市民にまで意図的に被曝させ、データを取ろうなんていうのはいい迷惑。

自衛隊内の派閥争いや足の引っ張り合いがイラつく。陸自と空自ってこんなに仲が悪いのか。そして、海自はどこに行った。なぜかこの自衛官たちが、まるでサムライみたいな怪しい言葉づかいをしているので、実は偽物で正体は某国の……なんて変な深読みをしてしまったくらい。自衛隊内ってこんな言葉使うのか?

SFネタとしては、夢の伝播ということなんだろうけど、今回は科学ネタとしてもちょっと強引か。カルト宗教なんかの集団幻覚は一種の催眠術みたいなものなのではないかと思うのだが、そのあたりの科学考察が弱かったような。

しかも、最後に待っている真相は、確かに度肝を抜かれるが、もう笑ってしまうしかない。完全なる喜劇。

ラスト直前までは、何が起こっているのだかさっぱりわからない感じで進むのだが、怒涛の解決篇が馬鹿すぎ。最初から意図してこんな構成にしたのか、ちゃんとホラーを書こうとしていたのかは判断が付かないのだけれど、もうなんというか、「馬鹿すぎw」としか言いようがない。

こういう馬鹿話は好きなのだけれど、前半の読みずらさがマイナス。もうちょっと話の筋を整理しても良かったんじゃなかろうか。

ただし、この小説で語られる、「物語の救い」の強さと、その強さゆえに惑わされる人々という構図はなかなか興味深いし、日ごろ自分が考えていることにも通じる。

現実が不幸だったり、退屈だったりするある種の人々にとっては、物語は麻薬なのですよ。要するに物語中毒。それがなおかつ伝染性を持ったら、というアウトブレイク小説だったりするんですね、これ。




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