神なる冬

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コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] S-Fマガジン2017年2月号

2017-02-01 22:32:09 | SF

『S-Fマガジン2017年2月号』

 

一度は頓挫しかけた伊藤計劃『虐殺器官』のアニメ映画がついに公開。これに合わせて、ということなのか、単にタイミングがあっただけなのか、ディストピアSF特集。

『虐殺器官』の映画化はもちろん、ハクスリー『すばらしい新世界』、オーウェル『動物農場』も新訳化。ついでにベスター『破壊された男』(創元版の『分解された男』の方が通りがいいが)も登場。しかし、これってディストピア?

折りしも、独裁的なアメリカ大統領が誕生し、世の中は悲観ムード。アメリカでも『一九八四年』が売れ始め、日本のネット界隈では『虐殺器官』はトランプを予言していたと話題になる始末。

特集記事にもディストピアSFにかこつけてトランプ現象をdisるという高級話芸がふんだんに。この人たちは、トランプを支持する人々にとってこの世はすでにディストピアだということが本当に理解できていなかったのだろうか。

だいたい、SFなんて小説だろうがアニメだろうが、ディストピア要素のない物語なんてありやしない。いや、SFだけじゃなく、ディストピア要素の無い物語なんてラブコメぐらいなものじゃないか。

ディストピアSFガイドにおいても、あれもこれもディストピア。本当に、ディストピアって何なんだろう。

誰かにとってのユートピアは、誰かにとってのディストピアだなんて簡単なことに、本当に気付いていなかったのだと。そんなの小学生にでもわかるだろうに。すべての人に幸福が訪れるユートピアだなんて、総論賛成各論反対の最たるものじゃないか。

結局、我々は現実と折り合いを付けながら生きていくしかないのよ。自分にとってのディストピアをできるだけ避けられるように頑張ってはみるけどね。



○「セキュリティ・チェック」 韓松
なんだこりゃ。アメリカで安全と引き換えに失われた自由。それが中国に残っている。が、その中国はセキュリティチェック済み。

○「力の経済学」 セス・ディキンスン
ミームの感染。思想警察。メディアの功罪。いろいろ示唆に富んでいる。

○「新入りは定時に帰れない」 デイヴィッド・エリック・ネルス
タイムパラドックス的にいろいろおかし過ぎてダメ。

○「交換人間は平静を欠く〈前篇〉」 上遠野浩平
いったいこの物語がどっちに向かっているのか、さっぱりわからん。

○「博物館惑星2・ルーキー 第一話 黒い四角形」 菅浩江
師匠と弟子の物語はともかく、芸術とは何かがよくわからん。わからんだらけ。

○「と、ある日の訪問者」 宮崎夏次系
自意識過剰じゃないですか。ありのままで。

○「あしたの記憶装置」 やくしまるえつこ
QRコードを読み込ませてみたら、なんか生活音っぽいMP3が降ってきた。やっぱり、いまいち面白さがわからない。

○「裏世界ピクニック ステーション・フェブラリー」 宮澤伊織
きさらぎ駅も有名になったものだなと。

○「プラスチックの恋人」 山本弘
実は、今回から連載開始されたコレが一番の読みどころなのではないか。セクサロイド系の話は過去にもあるが、いわゆる非実在青少年問題にこれだけ直接的に切り込んだものは初めてのことだろう。二次元児ポ問題に限らず、三次元合法ロリや、AV強要、セックスワーカーの人権問題まで含めて語ることができるのか、今後に期待。

 



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