神なる冬

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コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] ブルー・シャンペン

2010-09-26 12:41:48 | SF
『ブルー・シャンペン』 ジョン・ヴァーリイ (ハヤカワ文庫 SF)


これまでSFを結構な数、読んでると思ってきたんだが、まだまだ読み残している傑作はあるものだ。ヴァーリイの一連の作品もそのひとつ。嫌いというイメージすらないので、決して食わず嫌いというわけではないのだが、要するに縁が無かった(笑)

古本屋で¥100の棚にあったという出会いが、ここまで大きな感動を呼んでくれるとは。最近、古本屋巡りもあんまりできないんだが、やっぱり、月に一回ぐらいは古本屋巡回が必要だな。

この短編集は、スタイリッシュでポップで格好よくて刹那くて、とにかくすばらしい。短編集としてはティプトリーの『たったひとつの冴えたやり方』を越えるかもしれない。どうして今まで読んでなかったのだろうと後悔した。

ハヤカワも、こんな小説を目録落ちさせてる場合じゃないよ!




「プッシャー」
YES! ロリータ NO! タッチ。そんな話かと思ったら、オチに吹いた。
時間を越えたプラトニックなラブストーリー。


「ブルー・シャンペン」
宇宙空間に浮かぶシャンペングラスと、黄金のジプシーという豪華絢爛な視覚イメージと、それに相反する障ガイ者の尊厳という重たいテーマ。さらに、刹那いラブストーリー。これぞ、美しくて哀しいSF。


「タンゴ・チャーリーとフォックストロット・ロミオ」
物語としては「ブルー・シャンペン」の続きだが、かわいそうな幼女を救えという、まったく別なお話。
見かけも精神年齢も7歳だが、実は30年もの間、犬たちだけを伴侶として暮らしてきた幼女女性のキャラクター描写がすばらしい。星雲賞授賞も納得の傑作。
チクタクがチャーリーに教えた唄の訳も、浅倉節が冴え渡ってすばらしい。

「選択の自由」
♪性別選択の自由、あははーん。もし妻が急に男性になってしまったら。コメディに流れがちなこのテーマを真正面から取り組んだ、これまた刹那いラブストーリー。


「ブラックホールとロリポップ」
さらに幼女物。ほのぼのした親子関係が、SF的な設定で病的な精神の深淵を見せ、さらに背筋が寒くなるような寓話へと落とし込まれる感じ。これもベストSF級の傑作だと思う。


「PRESS ENTER ■」
ハッカーなるものが世の中に生を受けた時代に生まれた物語。ウィリアム・ギブスンのサイバーパンクと同時代に書かれたながら、あくまでも現代に足をつけたミステリ。アジアに対するミステリアスさと、朝鮮戦争、ベトナム戦争の傷跡が物語を彩り、多層的な読み方が出来るようになっている。最後の最後まで、自殺か他殺かが明かされないもやもやさが、コンピューター社会の到来に対するパラノイアと合わさって、不安な読後感を与えてくる。




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