《サザーン・リーチ》三部作の二作目。いまだ〈エリアX〉の全貌は掴めず。
『SFが読みたい!』にランキングされ、Web本の雑誌でもSFとして紹介されていたけれども、これはフォーマット的には完全にホラー小説。第1部の『全滅領域』は構成上あのような形にならざるを得なかったんだろうけれども、第2部になっても基本的には変わらず。
何が起きているのかは主人公の主観的にしか語られず、思わせぶりな謎だけが提示され続ける。読者は、新局長となって赴任した主人公である〈コントロール〉とともに、〈エリアX〉に対する最前線基地である〈サザーン・リーチ〉の謎を紐解いていくことになる。
前局長の正体が未帰還の〈心理学者〉であるという愕然とする事実が簡単に明らかになるものの、その先の究明は遅々として進まず。もうひとつの重大事項である〈心理学者〉と〈燈台守〉の関係が明らかになるのは終盤。かといって、中だるみなわけではなく、主眼は〈コントロール〉と〈サザーン・リーチ〉が巻き込まれたスパイ合戦じみた権力闘争。
この側面もまた、〈エリアX〉に負けず劣らずの魑魅魍魎が跋扈する謎領域なのだけれど、主人公の〈母親〉とやらが絡んでさらにカオスに。当初、この〈母親〉というのは何かのコードネームかと思っていたのだけれど、どんどん本物の母親だということがわかってきて、これまたホラーっぽい感じに。子供の職業にまで過干渉し、手駒に使う凄腕スパイの母親って、どう考えたってホラーネタでしょう。
最後には遂に帰還した前局長と共に〈エリアX〉の侵攻が始まるわけだけれども、主人公は〈生物学者〉を追って逃亡してしまうため、最終的に何が起こったのかはわからず。
ついに邂逅した〈生物学者〉とともに〈エリアX〉に飛び込んだ〈コントロール〉の運命はいかに……。といういかにもな終わり方で次巻へ続く。
第3部はSF的な広がりのある結末を期待したいのだけれど、果たしてどうなるか。
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