『折り紙衛星の伝説 年刊日本SF傑作選』 大森望/日下三蔵 編 (創元SF文庫)
毎年毎年お疲れ様ですといった感じの傑作選。今回はなんでこれが選ばれたのかというものが多かった気がする。作品そのもの力ではなく、2014年に活躍した人、見出された人という視点で選んでないか?
個人的ベスト1作品だけ選ぶとすると、「「恐怖の谷」から「恍惚の峰」へ」かな。次点で「わたしを数える」。
○ 「10万人のテリー」 長谷敏司
ゲーム中だけに実行される人工知性というアイディアもさることながら、アナログハック・オープンリソースという試みが面白いと思った。日本ではシェアワールドはなかなか成功しないので、ちょっと興味深い。
○「猿が出る」 下永聖高
もっと後味の悪い話だと記憶していたら、意外にさわやかな結末だった。
○「雷鳴」 星野之宣
それにしても、恐竜の謎は尽きないものだ。雷に結びついた連想もおもしろい。
○「折り紙衛星の伝説」 理山貞二
SFのロマンをストレートに表現するこのタイトルは反則的。収録作が「百年塚騒動」の方じゃなかったのは残念。
○「スピアボーイ」 草上仁
これはよい。スペースオペラは西部劇から来たものだしね。
○「Φ」 円城塔
初読の時は途中で気付いたが、わかった上で最初から再読してみると、思っていた以上に美しい。
○「再生」 堀晃
SF作家というのは何を書いてもSFになるものなんだなぁと。
○「ホーム列車」 田丸雅智
誰もが考えたことがあるようなネタ。そのままホームで寝てしまうというあたりがほのぼのしていて良かった。
○「薄ければ薄いほど」 宮内悠介
『エクソダス症候群』風。宮内悠介は完全に作風を確立してしまったが、ここからどう崩していくかが課題になるかも。ホスピスは緩慢な自殺というのは厳しい視点だが、反論は難しい。
○「教室」 矢部嵩
不条理。グロイ。
○「一蓮托掌(R・×・ラ×ァ×ィ)」 伴名練
うーん、やっぱりラファティはわからん。
○「緊急自爆装置」 三崎亜記
なぜ自爆なのか。
○「加奈の失踪」 諸星大二郎
だから、ネームバリューだけで選ぶな。
○「『恐怖の谷』から『恍惚の峰』へ0その政策的応用」 遠藤慎一
例のあれ。おお、論文形式なのに、ちゃんとSFになってる。すごい。
○「わたしを数える」 高島雄哉
いろいろなものがなんともミスマッチでありながら、なんだか切なくなる感じ。数えることは認識することというテーマはおもしろい。
○「イージー・エスケープ」 オキシタケヒコ
『トリノホシ』は、やってません。
○「環刑錮」 酉島伝法
著者本人のちょっとした解説があると、格段にわかりやすくなるものだ。
○「神々の歩法」(第6回創元SF短編賞受賞作) 宮澤伊織
いかにもゲームのシナリオ的な。アメコミの絵柄で脳内再生される感じ。え、この人、魚蹴さんだったのか!
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