非英語圏SF特集として、フランス、中国、インドのSF作品を紹介。
非英語圏SFといえば、レムやストルガツキー兄弟のような、ロシア・東欧のSFがまず思い浮かぶが、今回はもっとなじみのない国に目を向けてみようということ。
インドが非英語圏かというと、また変な議論になってしまうので、それはさておき。
フランスはジュール・ベルヌの生まれた地であるし、SFの世界ではもっと紹介されてもいい気がする。フランスの出版事情はあまりよく知らないのだけれど、ちょっとWebで当たってみたら、フランス語圏として独特なエリアがあって、ベストセラーリストは翻訳よりも国内作品が多いらしいとのこと。その辺は、日本語の壁がある日本と近いのかも。
今回のスタンリー・チェンのように、一度、英語を経由して日本語訳というルートがあるのも面白い。こういう翻訳業が成り立つためには、それなりの市場が無ければならないので、マイナーな国のSFが翻訳されるには、各国でもっとSFブームが来てくれなければということか。
SFというジャンルそのものが知られていない国では、ファンタジーやスリラー風な作品が多くなりそうだけれど、きっと面白い作品が世界にはまだまだあるに違いない。
○「パッチワーク」 ロラン・ジュヌフォール/稲松三千野訳
新☆ハヤカワ・SF・シリーズで刊行予定の『オマル』のシリーズ短編。シリーズがどういう雰囲気で進んでいるのかといった点が垣間見える一篇。フランスの移民問題も関係しているのかな。
○「鼠年」 スタンリー・チェン(チェン・チュウファン)/中原尚哉訳
閉塞した社会を打破するためのマッチポンプ。だと解釈したのだけれど。いずれにしろ、重苦しくて悲惨なディストピアなんだけれど、どこまで中国の現実が反映されているのかはわからない。
○「異星の言葉による省察」 ヴァンダナ・シン/鈴木潤訳
どういうわけか頭に入らず、二度読み直した。結局、なんだかよくわからない。これはラブストーリーなのか?
○「廃り」 小田雅久仁
不思議都市伝説怪談系。SF方面としては「廃り」の生態をもうちょっと深く書き込んで欲しかったか。色を喪った街を彩る光のページェントとなるラストシーンが美しい。
連載にも覚書で一言コメントを。
○「SF COMIC SHORT-SHORT」 第五回:小原愼司
その気持ちはよくわかる。原始的!
○「大破砕 怨讐星域 第29話」 梶尾真治
こんなこともあろうかと、という老職人のチカラ。
○「絞首台の黙示録 第3回」 神林長平
アイデンティティを揺さぶり続ける蒟蒻問答。
○「エピローグ〈1〉」 円城 塔
ストーカー、もしくは、クラークの第三法則?
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