『S-Fマガジン 2012年2月号』 (早川書房)
今月の特集は日本人作家特集。とはいっても、常連の作家さんではなくって、新顔が多い印象。SFに春が来てから、有望な物書きさんたちがSFを明示的に目指してくれるようになったと考えてもいいんだろうか。
しかし、去年のランナップを見てみると、伊藤計劃、小川一水、大西科学、籐間千歳、三島浩司なので、急に替わったというよりは徐々に変わりながら、ベテランどころか、遂に中堅執筆陣さえ押しやったという感じ。
この辺は第何世代と呼ぶべきなんだろうか。神林長平、大原まり子、夢枕獏あたりが第3世代。その後、冬の時代にホラーやライトノベルでデビューしたのが第4世代。前者の代表が瀬名秀明で、後者の代表が小川一水あたりか。冬が明けてSF新人賞、小松左京賞関連で伊藤計劃、円城塔、上田早夕里あたりが第5世代になるのか。今回の特集で取り上げられた創元SF短編賞なんかで出てきた人たちは第5世代の後半になるのか、それとも、新たな第6世代になるのかは、彼らの活躍次第といった感じ。
新世代の台頭と対決するかのように、第1世代の星新一、光瀬流の記事もあり。星新一は《現代SF作家論》シリーズとして。作家論シリーズと言いつつ、作品論が多いような気がするのだが、今回は確かに作家論。1001話の星新一を千一夜物語のシェヘラザードになぞらえた語りはなかなか面白かった。
その星新一論を書いた宮野由梨香は光瀬龍の「阿修羅王はなぜ少女か 光瀬龍『百億の昼と千億の夜』の構造」でSF評論賞を受賞してデビューしたわけだが、その光瀬龍の評伝が立川ゆかりによって今月から連載開始。しかも、光瀬龍婦人と阿修羅展を見にいった話題から始まる。まさに阿修羅つながり。
きっと昨年お亡くなりになった小松左京も、こうやって評伝を書かれてどんどん歴史になっていくんだなと思うと、ちょっと感慨深いものがある。
◎「ヨハネスブルグの天使たち」 宮内悠介
南アの民族紛争と、落ち続ける運命を背負ったアンドロイドの不思議な絆の話。夕立のように降り続ける少女型アンドロイドというビジュアルの奇抜な綺麗さと、民族紛争の過酷な汚さの対比が非常に印象的。民族紛争に対する視線も、むやみに理想を振りかざすのではなく、現実を放置するのでもなく、良く考えられていると思う。
◎「小さな僕の革命」 十文字青
ネットの中にしかない現実が存在することを、現代に生きる我々は否定することができない。しかし、そのネット中の現実は糞みたいなものだ。それ以上に、現実は糞だ。少なくとも、この日本ではデモで革命など起こるわけもない。そしてもちろん、ネットですら。
○「不思議の日のルーシー」 片理誠
重い話の後でほっとする作品。SF入門用として「小学5年生」とかの学習雑誌に最適だと思うのだが、そういう学習雑誌はすでに時代遅れ。今の子供たちはどうやってSFと出会うんだろうか。やっぱり、ライトノベル経由なんですかね。
○「真夜中のバベル」 倉数茂
天才少年の終わらない夏。普遍文法の発見がどこでどうなって新人類抹殺につながるのかはよくわからないが、永遠の夏のイメージはどこか胸を締め付けるものがある。
-「ウェイプスウィード(前篇)」 瀬尾つかさ
今月は前篇だけなので評価保留。ただ、本の形をしたロボットという設定は実に微笑ましくて良い。
今月の特集は日本人作家特集。とはいっても、常連の作家さんではなくって、新顔が多い印象。SFに春が来てから、有望な物書きさんたちがSFを明示的に目指してくれるようになったと考えてもいいんだろうか。
しかし、去年のランナップを見てみると、伊藤計劃、小川一水、大西科学、籐間千歳、三島浩司なので、急に替わったというよりは徐々に変わりながら、ベテランどころか、遂に中堅執筆陣さえ押しやったという感じ。
この辺は第何世代と呼ぶべきなんだろうか。神林長平、大原まり子、夢枕獏あたりが第3世代。その後、冬の時代にホラーやライトノベルでデビューしたのが第4世代。前者の代表が瀬名秀明で、後者の代表が小川一水あたりか。冬が明けてSF新人賞、小松左京賞関連で伊藤計劃、円城塔、上田早夕里あたりが第5世代になるのか。今回の特集で取り上げられた創元SF短編賞なんかで出てきた人たちは第5世代の後半になるのか、それとも、新たな第6世代になるのかは、彼らの活躍次第といった感じ。
新世代の台頭と対決するかのように、第1世代の星新一、光瀬流の記事もあり。星新一は《現代SF作家論》シリーズとして。作家論シリーズと言いつつ、作品論が多いような気がするのだが、今回は確かに作家論。1001話の星新一を千一夜物語のシェヘラザードになぞらえた語りはなかなか面白かった。
その星新一論を書いた宮野由梨香は光瀬龍の「阿修羅王はなぜ少女か 光瀬龍『百億の昼と千億の夜』の構造」でSF評論賞を受賞してデビューしたわけだが、その光瀬龍の評伝が立川ゆかりによって今月から連載開始。しかも、光瀬龍婦人と阿修羅展を見にいった話題から始まる。まさに阿修羅つながり。
きっと昨年お亡くなりになった小松左京も、こうやって評伝を書かれてどんどん歴史になっていくんだなと思うと、ちょっと感慨深いものがある。
◎「ヨハネスブルグの天使たち」 宮内悠介
南アの民族紛争と、落ち続ける運命を背負ったアンドロイドの不思議な絆の話。夕立のように降り続ける少女型アンドロイドというビジュアルの奇抜な綺麗さと、民族紛争の過酷な汚さの対比が非常に印象的。民族紛争に対する視線も、むやみに理想を振りかざすのではなく、現実を放置するのでもなく、良く考えられていると思う。
◎「小さな僕の革命」 十文字青
ネットの中にしかない現実が存在することを、現代に生きる我々は否定することができない。しかし、そのネット中の現実は糞みたいなものだ。それ以上に、現実は糞だ。少なくとも、この日本ではデモで革命など起こるわけもない。そしてもちろん、ネットですら。
○「不思議の日のルーシー」 片理誠
重い話の後でほっとする作品。SF入門用として「小学5年生」とかの学習雑誌に最適だと思うのだが、そういう学習雑誌はすでに時代遅れ。今の子供たちはどうやってSFと出会うんだろうか。やっぱり、ライトノベル経由なんですかね。
○「真夜中のバベル」 倉数茂
天才少年の終わらない夏。普遍文法の発見がどこでどうなって新人類抹殺につながるのかはよくわからないが、永遠の夏のイメージはどこか胸を締め付けるものがある。
-「ウェイプスウィード(前篇)」 瀬尾つかさ
今月は前篇だけなので評価保留。ただ、本の形をしたロボットという設定は実に微笑ましくて良い。