神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] SFマガジン2012年2月号

2012-01-16 23:23:26 | SF
『S-Fマガジン 2012年2月号』 (早川書房)




今月の特集は日本人作家特集。とはいっても、常連の作家さんではなくって、新顔が多い印象。SFに春が来てから、有望な物書きさんたちがSFを明示的に目指してくれるようになったと考えてもいいんだろうか。

しかし、去年のランナップを見てみると、伊藤計劃、小川一水、大西科学、籐間千歳、三島浩司なので、急に替わったというよりは徐々に変わりながら、ベテランどころか、遂に中堅執筆陣さえ押しやったという感じ。

この辺は第何世代と呼ぶべきなんだろうか。神林長平、大原まり子、夢枕獏あたりが第3世代。その後、冬の時代にホラーやライトノベルでデビューしたのが第4世代。前者の代表が瀬名秀明で、後者の代表が小川一水あたりか。冬が明けてSF新人賞、小松左京賞関連で伊藤計劃、円城塔、上田早夕里あたりが第5世代になるのか。今回の特集で取り上げられた創元SF短編賞なんかで出てきた人たちは第5世代の後半になるのか、それとも、新たな第6世代になるのかは、彼らの活躍次第といった感じ。

新世代の台頭と対決するかのように、第1世代の星新一、光瀬流の記事もあり。星新一は《現代SF作家論》シリーズとして。作家論シリーズと言いつつ、作品論が多いような気がするのだが、今回は確かに作家論。1001話の星新一を千一夜物語のシェヘラザードになぞらえた語りはなかなか面白かった。

その星新一論を書いた宮野由梨香は光瀬龍の「阿修羅王はなぜ少女か 光瀬龍『百億の昼と千億の夜』の構造」でSF評論賞を受賞してデビューしたわけだが、その光瀬龍の評伝が立川ゆかりによって今月から連載開始。しかも、光瀬龍婦人と阿修羅展を見にいった話題から始まる。まさに阿修羅つながり。

きっと昨年お亡くなりになった小松左京も、こうやって評伝を書かれてどんどん歴史になっていくんだなと思うと、ちょっと感慨深いものがある。




◎「ヨハネスブルグの天使たち」 宮内悠介
南アの民族紛争と、落ち続ける運命を背負ったアンドロイドの不思議な絆の話。夕立のように降り続ける少女型アンドロイドというビジュアルの奇抜な綺麗さと、民族紛争の過酷な汚さの対比が非常に印象的。民族紛争に対する視線も、むやみに理想を振りかざすのではなく、現実を放置するのでもなく、良く考えられていると思う。

◎「小さな僕の革命」 十文字青
ネットの中にしかない現実が存在することを、現代に生きる我々は否定することができない。しかし、そのネット中の現実は糞みたいなものだ。それ以上に、現実は糞だ。少なくとも、この日本ではデモで革命など起こるわけもない。そしてもちろん、ネットですら。

○「不思議の日のルーシー」 片理誠
重い話の後でほっとする作品。SF入門用として「小学5年生」とかの学習雑誌に最適だと思うのだが、そういう学習雑誌はすでに時代遅れ。今の子供たちはどうやってSFと出会うんだろうか。やっぱり、ライトノベル経由なんですかね。

○「真夜中のバベル」 倉数茂
天才少年の終わらない夏。普遍文法の発見がどこでどうなって新人類抹殺につながるのかはよくわからないが、永遠の夏のイメージはどこか胸を締め付けるものがある。

-「ウェイプスウィード(前篇)」 瀬尾つかさ
今月は前篇だけなので評価保留。ただ、本の形をしたロボットという設定は実に微笑ましくて良い。


1月15日(日)のつぶやき→「始動イベントが気になるけど、これから「ロボジー」見る!」

2012-01-16 03:12:40 | つぶやき
14:50 from twicca
始動イベントが気になるけど、これから「ロボジー」見る!

22:24 from Tween
3DS電池切れて、すぐにアダプターつないだんだけど、復活しなかったぽ。そろそろ罠かなってときに!

22:57 from gooBlog production
[映画] ロボジー blog.goo.ne.jp/kats-takami/e/…

23:32 from gooBlog production
[SF] 都市と都市 blog.goo.ne.jp/kats-takami/e/…

by kats_takami on Twitter

[映画] 宇宙人ポール

2012-01-16 00:00:14 | 映画
『宇宙人ポール』


(C)2010 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED



twitterにさんざん書いた上にアップを忘れていたので、もう書かなくてもいいかとも思ったけど、とりあえずblog entryとして残しておくことにする。



その手の人たちにはあまりに有名なロズウェル事件。このとき、本当に宇宙人が捉えられていたら。そして、その宇宙人はアメリカの影でアポロ計画や科学技術発展に貢献し、さらに人類と宇宙人の友好的な邂逅のために、自分をモデルにした映画製作にも参加していたら……。

ブラックコメディの国、英国からやってきたワナビーな二人組、グレアムとクライブは、サディエゴのComi-conに参加するついでに、キャンピングカーでアメリカ西部のエイリアン名所巡りを計画する。

その愉快な旅の途中、エリア51近くのハイウェイで事故った黒塗りの車を救助しようとした時、車の中から現れたのはメン・イン・ブラックどころか、グレイ型宇宙人のポールだった。

自分の星へ帰るため軍の収容施設を抜け出して来たポールを、ランデブーポイントの“見ればわかる場所”まで送り届けるために、彼らの珍道中が始まる。



主人公二人はイギリスのオタクで、彼らに対するアメリカ人の扱いはナードとゲイ(もちろん彼らはゲイではない)へのあからさまな差別と偏見に満ちている。しかも、キリスト教原理主義者まで出てきてしっちゃかめっちゃか。この辺りはアメリカを外部から見られる視点ならではのものなのかもしれない。

社会派ネタはその程度で、あとは映画とコミックが中心のオタクネタ満載。スピルバーグネタが多いのだけれど、細かいところまで含めると本が一冊書けるんじゃないかというくらいのネタだらけ。たぶん、オタク度の濃さによって笑いどころが変わってくるので、いろいろ判定に使えます(謎)

それなりの濃さのわたくしといたしましても、冒頭のComi-conからニヤニヤしっぱなしの心地良い映画でした。



twitterに書いてたのはこんな感じ。もっとあるけど。

冒頭とラストの舞台となるサンディエゴcomic-conは実在するコンベンション。

彼らがめぐるエイリアン名所もことごとく実在する。HISとかでツアー組んでくれたら、数千人が行くレベル。

見ればわかるという目的地は確かに見ればわかるのだが、若い人は知らないんじゃないか?

そういうネタがほとんど解説されない。でも、コメディとしてよくできているので、オタクじゃない人も疑問に思わない。ってか、ただのネタだと思ってる?

スピルバーグの映画はポールのアイディア。きっとルーカスもそう。

Webとかのキャスト紹介で、シガニーは完全にネタバレ。

ソーセージは食べる癖に死んだ鳥は食べない。あと、M&M'sも好き。

ID説信者の改宗にはスパゲッティーモンスター教より強力。ラーメン。

育ちきった悲劇のヒロインにも優しい。年増好みかもしれない。

いつも半ズボンを穿いているが、上半身は裸。見えなくなる時には全裸になるがあの下には下着を穿いてないので、たぶんあれは半ズボンじゃなくて、大きめのパンツ。

この映画が作られらた理由は実在するエイリアンに出会っても気絶しなくなるように大衆を教育するため。(そうだろ、白状しろよCIA!)

右隣りでポップコーンを食い続けるカリポリ夫婦も、左隣のちょっと臭うおたく(笑いのツボが似てる!)も、真後ろのリア充カップル(彼女談:なんかよくわかんなかった)も気にならないくらい笑えた。



最後にちょっと蛇足。巷では泣ける映画みたいに言われているけど、実は自分としてはそこの部分の評価は低め。そもそも、ポールのあの特殊能力は不要だと思うんだよね。あんなのが無くても、十分泣かせるストーリーにできたと思う。エイリアンは特殊能力を持って当然みたいな考えがあるんだろうか。生身の生命体なら、機械無しじゃ何もできないくらいでもよかったと思うんだけど。