神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] 火星のタイム・スリップ

2009-07-10 23:47:18 | SF
『火星のタイム・スリップ』 フィリップ・K・ディック (ハヤカワ文庫 SF)




1964年に出版された、1994年を舞台とした近未来SF。
2009年の今でも、火星移民は遠い夢というのが悔しい。

自閉症の子供は時間感覚が異なるという学説から、タイム・スリップができるのではないかという仮説を導き出し、なんとか過去にタイム・スリップして大金持ちになろうとするお話(偏った意訳)。

山田正紀の『神獣聖戦』への影響でも論ずるべきかもしれませんが、それはさておき……。

今読むと、自閉症や精神症への誤解に満ちていて、差別小説とも取られかねないですね。
当時は“あのドイツ製の薬”として言及されているサリドマイドや、その他の薬害、公害により、生まれ来る子供への恐怖というものがあったのでしょうか?
また、精神病理学がやっとまともになってきて、精神病というものは誰もがかかるかもしれない病気であるという、新しい恐怖があった時代なのかもしれません。

SFでは外挿による未来予測の機能が注目されますが、現在の映し鏡としての機能も大きいことは何度も言及している通りです。
したがって、過去の名作SFは読者を著作された当時の世相へタイム・スリップさせてくれる装置でもあるのです。
そんなことを強く考えさせられたりしたり。

ガビッシュ!
ガブル、ガブル、ガブル……。