拝啓、世界の路上から

ギター片手に世界を旅するミュージシャン&映画監督のブログ(現在の訪問国:104ヶ国)

トゥーロン国際大会のU23日本代表の試合で思ったこと

2012-06-02 | その他


やはりというか、予想通りの残念な結果(グループリーグ最下位敗退)に終った、U23日本代表のトゥーロン国際大会。

一方で現状が浮き彫りになったという点では、非常に意味のある大会だったと思います。



さて、結果は先に知っていたものの、週末に録画した対エジプト戦の映像をみました。

左サイドで崩されたというコメントをあちこちでみかけたので、特に酒井高徳選手の動きに注視してTV観戦したのですが、第二戦の比嘉選手はともかく、エジプト戦の酒井高徳選手は個人的には良かったという印象です。


母親がドイツ人ということから、ドイツ代表に呼びたいとまで言われ、強豪シュトゥットガルトで絶対的なレギュラーにまで成長した酒井高徳選手は、今やドイツでは、日本代表レギュラーSBの内田選手と同等以上の評価を得ています。

自分も彼が出場した今年1月からのブンデスリーガでの試合はスカパーの映像で全部みていますが、その成長は確かに著しいものがあります。


彼の持ち味は積極的な攻撃参加。

トゥーロンのエジプト戦では、周りがうまく彼を生かしきれていない部分はあったものの、らしさは随所に見えました。

サイドバックの積極的な攻撃参加は現代サッカーの常識ですから、むしろそのスペースを埋められていない、センターバックとボランチにこのチームの本質的な問題があります。


エジプト戦の最初の間接フリーキックは、不可解な判定で、明らかに審判の演出による1点でした。

3点目となるFKも、本来ファールではなかったものの、しかし問題は得点者をフリーにしてしまった山村選手のマークの甘さと、同様に2点目の失点も完全にCBやボランチのマークのズレ、そして終始ずるずると下がり続けた最終ラインと、間延びした中盤(の底)に問題があったと思われます。


今巷では、サッカーのロンドン五輪代表を語る際に、オーバーエイジ枠に誰を呼ぶのかという話題で持ちきりですが、個人的にはセンターバックを2人、そしてボランチ1人が必要というのは、このトゥーロンの3試合を通して、自分の意見が変わることがありませんでした。

2014年時には、ひょっとしたら日本代表のレギュラーに定着していてもおかしくない、酒井宏樹選手、酒井高徳選手の両サイドバックを生かす意味でも、これがベストチョイスだと自分は感じています。

ただしロンドン五輪まではあまりに時間が短く、そういった意味でこのオーバーエイジで選ぶべき3人は、個々の能力の高さ以上に、代表やチームで長く一緒にプレイしてきた、連携がある程度完成された3人である必要があります。

ボランチのOA枠有力候補の名前の1つに、関塚監督の下での経験がある中村憲剛選手の名前がありますが、個人的な主観でいえば、上記の理由から、本来であれば、日本代表レギュラーの吉田選手、今野選手の両CBと、ボランチにはチームでサイドバックの経験もある長谷部誠(または細貝萌)選手が最適だと思われます。


しかし現在の日本サッカー協会にとって、ロンドン五輪の優先順位はかなり低いようで、6月にW杯最終予選3連戦の直後ということを考えると、代表レギュラー級の選手の五輪召集に難色を示す可能性が高いのではないかと思っています。

その場合は、思い切って、2年前の2012年W杯南アフリカ大会のレギュラーである、闘莉王選手、中澤選手の両CBと、ボランチの阿部勇樹選手という選択も、同じチームでの連携の経験が少ない選手を個別に呼ぶよりは、ずっと現実的なのではないかと考えたりします。
(3人も少し年齢を重ねた感はありますが、中澤選手34歳、闘莉王選手31歳、阿部選手30歳というのは、38歳のギグス選手と37歳のベッカム選手を代表に呼ぼうとしているイギリス代表よりは、ずっとアリだと思います)




また攻撃陣ですが、第二戦、第三戦で輝きを見せた宇佐美選手に対する手ごたえは、この大会で一番の収穫だったのではないでしょうか。

宇佐美選手にとっては、ロッベンやリベリといったワールドクラスの選手達の壁に阻まれ、大きな挫折を味わったこの1年だったと思います。

しかしバイエルンのユニフォームを着て最後のリーグ戦2試合に先発し、チャンピオンズリーグ決勝も出場機会こそなかったものの、チームの敗戦をベンチから歯を食いしばって眺める中で得たものは、きっと世界レベルでの戦いの中で、チームに大きな力をもたらす事ができると思います。



今や世界的な選手へと成長した香川選手ですが、間もなくプレミアリーグのビッククラブへの移籍が発表されることを考えると、日本サッカー協会(とくに原さん)は、香川選手をロンドン五輪代表に呼ぶことを、許可しないでしょう。

そして自分がもし原さんの立場であれば、2年後、そして6年後までを見据えて、日本サッカー界の為には、今の香川選手に激戦の疲れをしっかり癒してもらって、1日も早く新しいチームへ合流し、ビッククラブでレギュラーポジションをしっかりと獲得してもらうことの方が重要だと考えます。


香川選手が不在であれば、本来ならチームの攻撃陣の中心となるのは、清武選手でしょう。

しかし彼はこの夏初めて世界へと飛び出す、まだまだこれからの選手です。

また代表でのプレイをみると、個人の力で局面を打開するよりも、彼は香川選手だったり、本田選手といったチームの中心選手と連動することで、大きな成果を生む選手だと、現時点ではまだ、自分はそう思っています。


そういう意味では、香川選手が不在なら、自分ならロンドン五輪代表の攻撃陣の中心に据えるのは、間違いなく宇佐美選手です。


トゥーロンでは、海外組をチェックしたいと、大会前に話していた関塚監督ですが、良くも悪くも、海外組と国内組の実力と経験の差を強く感じた大会だったと思います。

この大会で召集した宇佐美選手、酒井高徳選手、大津選手、指宿選手、高木選手の他にも、今やA代表でも戦力として期待されている、宮市選手もいます。

この海外組を中心とした攻撃陣と、代表組+オーバーエイジを中心とした守備陣がうまく連動すれば、すっかり注目度や期待値が落ちた、ロンドン五輪代表のチームが、南アフリカ大会のA代表のように、日本や世界をあっと言わせることもできるかもしれません。

ただその為には、チームの大黒柱だった中村俊輔選手をレギュラーから外して、慣れ親しんだチーム戦術も捨てて、代表に呼ばれたばかりの本田圭佑選手をゼロトップに添えた岡田監督のような英断を、関塚監督ができるかどうかにかかっています。

関塚監督がこれまでやってきたことをベースにするのであれば、間違いなく五輪本番も、トゥーロンと同じ結果になると思います。


これ以上無いところまで落ちたサッカーU23日本代表監督は、あと2ヶ月弱に迫った本番にどのような選択をするのでしょうか。。。