先日読了した村上春樹さんの『1Q84』BOOK3。
村上さんはどうするつもりか知りませんが、読者としては、“完結感”は希薄であり、アレやコレや、納得させて欲しいこともてんこ盛りだ。
これはもう第4巻がいずれ登場する、いや登場してもらわないと困ります(笑)。
ま、それはともかく・・・・。
新潮社出版部の編集者であり、『1Q84』を担当しているのが鈴木力さんだ。
以前、同姓同名の鈴木力さんが集英社にいらして、こちらのリキさんは知り合いなのだが、新潮社の鈴木力さんはお名前だけを存じ上げている。
元々は文芸誌『新潮』にいらした方だ。
その鈴木力さんが、『マスコミ就職読本 新聞・出版篇 2010年度版』でインタビューに応えていらっしゃる。
村上春樹さんは「原稿が出来上がったところで初めて編集者と話を始める」のがポリシーで、『1Q84』も締め切りを設けずに、その完成を待っていたのだそうだ。
このインタビューの中で、鈴木さんは、編集志望、出版社希望の学生に対して、1冊の本を紹介している。
それが、伊達得夫の『詩人たち ユリイカ抄』(平凡社ライブラリー)だ。
著者の伊達得夫は、出版社「書肆ユリイカ」の創設者であり、戦後詩人の重要な詩集や訳書をたくさん世に送った“伝説の編集者”である。1961年没、享年41。
この本には、伊達得夫の自伝的な文章が収められている。
鈴木力さん曰く、「編集者を志す方々には是非お勧めしたいと思います」。
昨年の「BOOK」1・2以来、新潮社のボーナスを一人で生み出す男として(笑)、今や“生きた伝説の編集者”と呼ばれる(オーバー)鈴木力さんが勧めている本だ。
そりゃ、読まずにはいられない。
ここには、今から見ればキラ星のごとき人々が登場する。若き日の詩人や作家たちだ。
清岡卓行、谷川俊太郎、黒田三郎、吉岡実、関根弘、中村稔、八木柊一郎、吉行淳之介、中村真一郎、阿川弘之、島尾敏雄、庄野潤三、安部公房・・・・。
そして、この本に収められたいくつもの文章で語られる稲垣足穂。
ただし、伊達得夫と彼らの交流や関係は、“仕事”という言葉だけでは説明できない。
単なる仕事を超えた、編集者と書き手の、共生的というか、同志的というか、同時代的というか、そんな“絆”、もしくは“縁(えにし)”みたいなものが、そこにある。
そして、読み終わる頃には、鈴木力さんがこの本を編集者を志望する学生たちに勧める理由も、何となく分かってくるのだ。