30年近い親交がある佐藤一彦さん(映像作家・立教大学教授)から、新作ドキュメンタリー映画の案内をいただいた。
テーマは保田與重郎。
つい昨日、『保田與重郎と昭和の御代』(96年、文藝春秋)の著者である福田和也さんにお会いしたわけで、何か引力のようなものを感じてしまった。
来週の22日(土)に、上映会があるそうだ。
“思索のための映像”という試みを、ぜひ拝見したいと思っている。
以下は、その告知です。
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◇◆ 保田與重郎生誕100年記念映像・公開上映&シンポジウム◆◇
平成22年5月22日(土)
ヤクルトホール(東京・新橋)
第1部:映画上映 13時30分~14時45分
第2部:シンポジウム 15時~16時半
http://www.sing.co.jp/info/book/wyasuda02.html
入場無料(要申し込み)
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ドキュメンタリー映画
『自然(かむながら)に生きる~保田與重郎の「日本」』
特別出演:菅原 文太
語り :檀 ふみ
朗読 :草柳 隆三
構成・演出 佐藤 一彦
撮影 本田 茂
音楽 ツル ノリヒロ
監修 前田 英樹(立教大学教授)
製作 株式会社 新学社
(ハイビジョン作品・長さ73分)
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日時:平成22年5月22日(土)
会場:ヤクルトホール(東京・新橋)
時間:開場 12時30分
第1部・映画上映 午後1時30分~午後2時45分
第2部・シンポジウム 午後3時~午後4時30分
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<構成・演出の佐藤一彦さんの言葉>
保田與重郎(やすだ・よじゅうろう)とは、言うまでもなく、戦前の文学運動「日本浪曼派」を率いた文芸評論家です。
その独自の言説から、戦後は国家主義者だとして強く批判を受けたことでご記憶の方も多いでしょう。
しかし、改めて保田與重郎の著作を読むと、そこにはむしろ、「米作りと祭りの暮らし」を中心とした、卓越した日本文明論が形づくられていたことに気づきます。
題名にある「かむながら」は、万葉集以来使われてきた古い和語ですが、ふつうは随神や惟神という字を当てて「おのずからなる道」とつかわれたりもします。
「自然」と書いて「かむながら」と読むのは本居宣長が始めたことですが、保田與重郎はこの「自然(かむながら)」を好み、著述の中に多用しました。
そこには、米づくりや農業、それに発する日本独自の暮らしの思想、そして米づくりに基づく平和思想などが含まれています。
この映画は、保田與重郎が説いた「自然(かむながら)へ至る道」に着目し、保田與重郎が生まれ育った奈良県・桜井市及び明日香村の周辺をのべ1年半にわたって撮影を行いました。
三輪山の麓に位置する大神神社(おおみわ・じんじゃ)の一年にわたる水田耕作に関する神事を撮影し、明日香村にある稲渕棚田を拠点に、米づくりの四季を撮影しました。
それに加え、京都・嵯峨野にある保田與重郎が晩年住んだ家「身余堂(しんよどう)」も紹介します。
そして、保田與重郎の膨大な著述の中から、現代に対して問題提起となる言葉を約25編ほど抜き出し、朗読を通じて、その解釈に挑みました。
最近、農業に取り組み始めた俳優の菅原文太氏に特別出演をしていただき、語りは、保田與重郎と同じ日本浪曼派のメンバーの一人だった檀一雄氏のご息女である檀ふみさんにお願いをしました。
美しい風景と朗読による思索のための映像です。
ご高覧を頂ければ幸いです。