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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

ハンク・ジョーンズの死とスイングジャーナルの休刊

2010年05月18日 | 舞台・音楽・アート

今日、新聞で知った2つのニュース。

「米国の伝説的ジャズ・ピアニスト、ハンク・ジョーンズ(Hank Jones)が、5月16日ニューヨーク・ブロンクスで死去。享年91」

「ジャズ専門誌『スイングジャーナル』が2010年6月19日発売の7月号で休刊することが分かった。5月20日発売の6月号で正式発表する」

ハンク・ジョーンズの死とスイングジャーナルの休刊。

うーん、なんだかなあ、せつないよなあ。

で、研究室から歩いて5分のジャズ喫茶「いーぐる」へ。

そりゃ、行ったからといって、いきなりハンク・ジョーンズが聴けるわけじゃないけど。

「いーぐる」のJBLの前で、両者に対して合掌。

<言葉の備忘録>4 小林信彦『森繁さんの長い影』

2010年05月18日 | 言葉の備忘録

“年に1度出る本”を楽しみしているというのも、なかなかシアワセだと思う。

作家の小林信彦さんが「週刊文春」に連載しているエッセイがそれだ。

毎年、春から初夏にかけて、前年の連載をまとめたものが出版されるのだが、新刊の『森繁さんの長い影』で、もう12冊目になる。

中身は、ご本人の表現を借りれば、「世相へ怒りを抑えて」「趣味の話」に走る、というのが基本スタイル。

この「世相」に関して、取り上げる話題とその見方の鋭さは他にないものだ。

また、「趣味の話」も、趣味などというイメージを超えて、書物や映画やテレビに対する“元手のかかった”批評である。

元手のかかったというは、小林さんが自身の目と耳で、リアルタイムで、体験してきたベースのことだ。

映画はどう観るのか。本はどう読むのか。いや、時代をどう捉えるのかに至るまで、ものすごく多くのヒントがここにある。

「クリント・イーストウッドの映画を観ていると、この世を支配している愚かしさを忘れる。イーストウッドが作らなくなったとき、アメリカ映画は終る、とぼくは考えている」などと書ける人は、そうはいない。

我が新聞学科の学生諸君に限らず、社会や文化について学びたいという人には、「この小林さんの12冊を通読しなさい」と、おススメしたいくらいだ。


世の人は、結果からみて、ひとの人生を推定、または評価する。
――小林信彦『森繁さんの長い影』

フジテレビ『月の恋人』での女優競演

2010年05月18日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』の連載コラム「テレビとはナンだ!」。

今週の掲載分では、フジの月9「月の恋人」について書かせてもらった。


見出し:

「月の恋人」は敢えて見るなら3人の女優の競演

コラム本文:

フジテレビ「月の恋人」が視聴率22・4%と好発進を見せた。

TBS「新参者」の21%を抜いて今期初回視聴率1位。

だが、この数字、木村拓哉一人で叩き出したわけではない。

半分くらいは女優陣のお手柄で、敢えて見るなら女優といえる。

台湾出身のリン・チーリン、篠原涼子、そして北川景子の3人だ。

もっとも、存在感があるのは映画「レッドクリフ」のリン・チーリン。

初回のラストで見せたセクシーなモデル姿や工場労働者の制服やジャージ姿は凛とした佇まいがあり、透明感のある美しさが魅力だ。

それに舞台が上海ということもあるが、外国人俳優が日本のドラマに出てきた時の見る側が気恥ずかしくなる〝浮いた感じ〟がないのは救い。

全体の中での自身の役柄を正確に把握し、緻密な計算で演技しているのだろう。

予想以上に健闘しているのは篠原涼子。

キムタクが相手、リン・チーリンがライバルという好位置を、余裕というか貫禄さえ見せながら楽しんでいるようだ。

まあ、毎度の〝髪かき上げ〟はちょっとうるさいが。

一方、頑張らないと影が薄くなりそうなのが北川景子。時々表情がお嬢様というより「モップガール」(テレ朝)になってしまう。

ともあれ、このドラマはキムタクのワンマンショーにしていない作り、女たちの競演に尽きる。
(日刊ゲンダイ 2010.05.18付)