明日元気になれ。―part2

毎日いろいろあるけれど、とりあえずご飯と酒がおいしけりゃ、
明日もなんとかなるんじゃないか?

シカゴ・ブルースの旅 その2

2007-07-19 10:28:31 | 
★ブルース旅日記のその3以降のアップが遅かったので、
 その2・1をアップしなおしました。(内容は一緒。順番だけね)

今日は雨だろうと洗濯をあきらめていたが、朝起きると晴れ間が!
急いで洗濯機を回す。
カラリとして涼しい、とても気持ちの良い日だ。

こんな日は、ライトニン・ホプキンスだなと、清々しさに不似合いな、不良のおっちゃんブルースを聴く。
もちろん、「Mojo Hand」。
一音でテキサスの香りが広がってくる(知らんけど)

今日は、シカゴの旅のブルース編を書こう。

◎濃厚な初日・菊田俊介さんとの出会い

ガイドさんが、
「普通は見られないんですが、菊田さんの紹介だということで、特別に皆さんをチェスレコードのスタジオにご案内します」
そう言った瞬間、車内には「おおー!!」という歓声があがった。

戸惑うガイドさん。
「え?何?僕は知らないんだけど、チェスってすごいの?」
うなずくみんな。

さすがだ。
ブルース・フェスティバルの旅に来ただけのことはある。
なんだか「同志」という気がして安心した。
それにしても、チェスのスタジオへ行けるのか~!!

バスが到着すると、もう興奮を抑えきれない!


現在、ここはミュージアムになっていて、いろんなブルースマンの写真や貴重な品々、ブルース関係のグッズなどを売っている。
いろいろ写真を撮りたかったのだが、禁止と言われて残念だった。

中には今回の旅のホスト役でもある菊田俊介さんが待ち受けていた。
彼は、アメリカで活躍する日本の代表的ブルースマン。

B.B.Kingには、
「もし僕の自伝映画が作られることがあったら、君に若いBBを演じて欲しい。」
Buddy Guy には、
「俺はいつもお前のような若いギタリストから新しいものを盗もうと思っているんだ」
Koko Taylor には
「シュンはブルース・マシーンに在籍したギタリストの中でもトップの一人よ。それ以上に息子のようなものなの。」
James Cotton には、
「シュンはいいプレイヤーだな。彼のプレーが恋しくなる時があるよ」

と言わしめた、日本が誇るギタリスト。

※このツアーのことが菊田さんのブログにも書かれていました。
http://plaza.rakuten.co.jp/shunkikuta/
この中の、「バーボンとブルースがあったらいい」と言っていた女性というのは、もちろん私のことです(笑)
光栄です!!

菊田さんに会うのは初めて。
世界で活躍されている方なので、なかなかライブなどに行く機会もなかったが、噂とブルース雑誌などではよく知っていた。

今回のブルースツアーで何が良かったかと言えば、とにかく菊田さんと過ごした時間が挙げられる。
野球選手で言えば、松坂やイチローに会ったようなもので。
本当に世界に通用する人間というのは、そのプレーはもちろんだけれど、それ以上に人間性がグローバルというか、豊かで大きな人なのだということを実感した。

ハキハキした物言い、高ぶらない気さくさ、熱いブルース魂、他人への思いやり、社交性と機転の利きの良さ・・・そして、ギタープレイ。すべてにおいて一流だった。

この館内では、ケビンという管理者の黒人の方が待っていて、いろいろ案内してくれた。菊田さんがすべて通訳をしてくれる。
いろんなブルースマンの写真を見るたび、歓声をあげる。
ゆかりの品々を目にするたび、ああ、本当にシカゴに来たのだと実感する。
これだけでも十分だったのに、菊田さんがこんなことを言った。

Roy Hytower というブルースマンがここの2階で皆さんに生演奏を披露してくれる、と。

申し訳ないが、ロイ・ハイタワーというブルースマンを私は知らず、初めて聴くことになったのだが、彼が現れて顔を見た瞬間、なんて素敵な顔をしているんだろうかと思った。
美男子という意味ではない。
柔らかい表情と奥に秘めたものが感じられて、なんだかたまらなかった。
かなりのお年だとは思うのだが、シャキッとした姿勢にも惹かれた。
お孫さんだろうか、かわいい女の子を連れていた。

2階に上がり、演奏が始まる。
ギターとハーモニカ。
そのプレイもすごかったのだけど、私はとにかく「声」にまいってしまった。
こんなすごい声を生で聴けることに心から感謝した。
体中に電気が走ったみたいになって、次の瞬間にはもうゴキゲンで、顔がにやけてくるのを止められなかった。

そして、ここでもう一つ素敵なことがあった。
一緒にツアーをまわっているナカハタさんという鹿児島の男の人が一緒にプレイしたのだ。
彼は、シカゴまでギターを抱えてやってきた、せつないほどひたむきなブルースギタリストで、普通なら多少腕があっても、いきなりプロの黒人ブルースマンと一緒にプレイしようと言われたら尻込みしてしまいそうになると思うのだが、「イエス」と答え、前に出た。

また、それが素晴らしくて。
何の打ち合わせもなく、今日初めて会ったシカゴの黒人と日本人がいきなりセッション。
「これが、ブルースの良さなんだよね」
と菊田さん。
うん、うん、とうなずく私。

得意の感情移入でナカハタさんの高揚した気持ちを感じて、ちょっと泣きそうだった。
ああ、ブルースは最高!!





その後、もっとすごいことが待ち受けていた。
一旦、ホテルで荷物を置き、夜は菊田さんガイドで「SOUL QUEEN」へ。


ここは黒人の家庭料理、いわゆる「ソウルフード」と呼ばれる料理が出されるレストラン。
菊田さんのガイドなしにはなかなか行けない店だ。
1つ1つ料理の説明もしてくれた。


これは、私が取ってきた料理。
バイキング形式になっていて、およそ1000円ほどとか。
かなりお安いし、美味しい。

決して贅沢ではない食材だが、それを工夫して美味しく食べようとしてきた黒人の想いが込められた、まさにソウルフード。

例えば、「チキン・ドレッシング」は、ターキーに詰め物をして焼く、その詰め物の部分。
「コーン・ブレッド」は、コーンとミールを主体にしたパン。
「スモーク・ハム・ホック」は豚のひざの肉を使ったハムを煮込んだもの。
「グリーンズ」は、固い葉っぱをいろんな味付けをして数時間煮込んだもの。

食材だけを見ると本当に質素なものなのだが、味は美味しかったし、何より魂に響いた。
フライドチキンやバナナのプティングも気に入った。

そこでは、ツアーの催し物で抽選会も行われた。
くじ引きでいろいろと商品が当たる。
なんと1位は菊田さんのサイン入りギターで、私はそれを絶対当てようと思っていたのだが、結果は9位。彼は5位だった。
1位のギターを獲得したのは、札幌のベーシストだった。


あとは、全員が菊田さんのニューアルバムをサイン付きでプレゼントしてもらった。

とても楽しい時間を過ごした後も、まだまだ夜は終わらない。
今度は、菊田さん案内でブルースバーへ。
本場シカゴのブルースバー!!
生演奏が聴け、菊田さんもプレイするとか。


よけいな説明はいいか。
とにかくブルースに酔いしれた。

菊田さんのギターもカッコよかったし、ベースの人のゆったりした感じも最高だった。
ヴォーカルのパワーには圧倒された。
ベタベタのブルースではなくて、サム・&デイブやオーティス・レディングなど、ちょっとR&Bの要素も強い選曲で、それもまた私の感性に合った。
生で「My Girl」を聴いて、改めて名曲だなぁと感じた。

濃い。
本当に濃い1日。

彼とホテルに帰ってからも、「あー、もし今日1日でシカゴの旅が終わりって言われてもいいくらい満足したなぁ」と言い合った。
本当に、長い長い、貴重な1日。
人生で忘れることのできない日となった。

サウスエリアへ向かうバスの中で見た風景が頭の中に浮かぶ。
高層ビルが立ち並び、白人が闊歩する都会の風景とは一転して、さびれた町。
家の窓ガラスはめちゃくちゃ。
ほとんどの家が窓ガラスに板を打ち付けている。

町にはぶらぶらしている黒人の若者がたむろしていて。
働かないのか、働く場所がないのか、それはわからない。

ギリシャ人の住むグリーク街、中国人の住むチャイナタウン、メキシコ人のエリアもあり、そして黒人のエリアもあって。

アメリカは自由の国だなんて、誰が言ったんだろう。
いろんな人種が混在し、なおかつ分かれて暮らすことしかできない国じゃないか。
少しバスで走っただけで見えてくる貧富の差。

後日、ブルースを通して、私はまた「人種」という壁と、日本にいたら実感し得なかったことを知る。
我が心の師匠・B.Bキングが言っていたことを思い出す。

「私は、ブルースを歌うたびに、自分が黒人であることを再認識する」

そのことが、こんなジャパニーズ・イエロー・モンキーにも、少しだけわかった気がした旅だった。
ブルースには、こんなちっぽけな私には計り知れない、歴史とソウルがある。


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