今年から、読んだ本の感想をきちんと記録していこうと思う。
(私は結構ネタバレするので、それがいやな人は読まないでくださいね)
2011年最初のレビューは、佐藤多佳子の『第二音楽室』『聖夜』。
正確に言えば『第二音楽室』は昨年末に読み終えていたのだけど、
『聖夜』とあわせてのシリーズだというので、両方読んでから感想を書こうと思っていた。
『第二音楽室』は、「第二音楽室」「デュエット」「FOUR」「裸樹」という4つの短編から成る。
本のタイトルからもわかるように、共通しているモチーフは「音楽」。
小学生、中学生、高校生という10代の女の子たちが語るストーリー。
正直、最初の3編は読んでいても感情移入できずに困った。
アラフォーの自分と10代の少女の心はあまりにも遠くて。
それから、佐藤多佳子がよく言われるところの、「取材をして書く小説家」の部分がすごく出ていて、もしかしたら彼女自身も音楽には詳しいのかもしれないけれど、
私には理解できないような専門的な音楽の話がたくさん出てくるのもまいった。
ほとんど読んで失敗のない作家だけれど、今回だけは「失敗かな」と思っていたら、
最後の中編といってもいいくらい長めの「裸樹」でぐっときた。
これはよかった。
中学時代、いじめにあって登校拒否し、誰も知ってる人がいない私立の高校に進んだ主人公の女の子。
ここではやり直そうとして、「お笑い」のキャラを作り、周りの友達の顔色を伺い、なんとかやり過ごしている毎日。
そんな彼女には、忘れられない出来事と忘れられない歌があった。
それが、「らじゅ」という女性ミュージシャンの曲、「裸樹」。
家で引きこもっている間に何度も聞き、ギターも練習した。
高校では軽音楽部に入り、バンドを組む。
だけど、そこでも自己主張するのが怖い。
だんだんちぐはぐになっていく、バンドメンバー。
そして・・・、破局。
と同時に、「裸樹」を教えてくれた女性との再会。
改めて知る音楽の楽しさ。
揺れ動く彼女の心がもどかしくてたまらなかった。
佐藤多佳子の文章は、きれいでピュアだなぁといつも思う。
とてつもなくシンプルで、そのシンプルさが美しい。
そして、いつものように、希望に満ちたラスト。
最高にいい読後感。
読んでよかったなぁと思った。
そして、今年になって、『聖夜』を読んだ。
内容とは全く関係ないけど、この表紙がどこか懐かしい気がすると思ったら、うちの大学の記念館に似ているんだと気づいた。
内容はといえば、こちらは1冊丸々の長編。
でも、モチーフは変わらず「音楽」。もっと「音楽」。
牧師の家に生まれ、キリスト教の高校に通い、オルガン部に所属する主人公。
今度は男の子だ。
彼の中には鬱屈したものがある。
それは彼の過去に関係している。
子供の頃、母親が愛人を作って出て行ってしまったのだ。
母が弾いていたオルガン。
一度はやめたけれど、彼はやっぱり弾き続ける。
モヤモヤを抱えたままで、いろんなものを斜めに見ながら過ごす高校生活。
ある日、オルガン部でコンサートを開くことになり、
難しい楽曲に挑戦することになる。
練習する日々。
そして、やって来るコンサート当日。
でも、彼は弾かなかった。
その代わりに、新たな友達と、知らなかった世界を知る。
そして、父親との対峙。祖母の本音。淡い恋愛。
いろいろなことがあり、確かに彼は変わっていく。
それが読んでいてよくわかる。
とてもいい物語だった。
それから、すごいなぁと思ったこと。
それは、文章での音楽表現。
手塚治虫がベートーベンの話を描いた漫画があって、
絵で音楽が聞こえてくる感じがすごくて、天才とはこういうことかと思ったけれど、
文章で音楽の「感動」が伝わるっていうのもすごいなぁと思った。
もちろん、音が聴こえるわけじゃない。
でも、その音が聴こえたときの「感動」がダイレクトに伝わってくるのだ。
泣けるとか、手に汗握るとかじゃないけれど、
佐藤多佳子の物語はいつも「読んでよかった」と思わせてくれるのがいい。
なんでもない幸せに気づいたときのような、そんなほんわかした気持ちになる。
心がピュアになったような、そんな心地良さ。
(私は結構ネタバレするので、それがいやな人は読まないでくださいね)
2011年最初のレビューは、佐藤多佳子の『第二音楽室』『聖夜』。
正確に言えば『第二音楽室』は昨年末に読み終えていたのだけど、
『聖夜』とあわせてのシリーズだというので、両方読んでから感想を書こうと思っていた。
『第二音楽室』は、「第二音楽室」「デュエット」「FOUR」「裸樹」という4つの短編から成る。
本のタイトルからもわかるように、共通しているモチーフは「音楽」。
小学生、中学生、高校生という10代の女の子たちが語るストーリー。
正直、最初の3編は読んでいても感情移入できずに困った。
アラフォーの自分と10代の少女の心はあまりにも遠くて。
それから、佐藤多佳子がよく言われるところの、「取材をして書く小説家」の部分がすごく出ていて、もしかしたら彼女自身も音楽には詳しいのかもしれないけれど、
私には理解できないような専門的な音楽の話がたくさん出てくるのもまいった。
ほとんど読んで失敗のない作家だけれど、今回だけは「失敗かな」と思っていたら、
最後の中編といってもいいくらい長めの「裸樹」でぐっときた。
これはよかった。
中学時代、いじめにあって登校拒否し、誰も知ってる人がいない私立の高校に進んだ主人公の女の子。
ここではやり直そうとして、「お笑い」のキャラを作り、周りの友達の顔色を伺い、なんとかやり過ごしている毎日。
そんな彼女には、忘れられない出来事と忘れられない歌があった。
それが、「らじゅ」という女性ミュージシャンの曲、「裸樹」。
家で引きこもっている間に何度も聞き、ギターも練習した。
高校では軽音楽部に入り、バンドを組む。
だけど、そこでも自己主張するのが怖い。
だんだんちぐはぐになっていく、バンドメンバー。
そして・・・、破局。
と同時に、「裸樹」を教えてくれた女性との再会。
改めて知る音楽の楽しさ。
揺れ動く彼女の心がもどかしくてたまらなかった。
佐藤多佳子の文章は、きれいでピュアだなぁといつも思う。
とてつもなくシンプルで、そのシンプルさが美しい。
そして、いつものように、希望に満ちたラスト。
最高にいい読後感。
読んでよかったなぁと思った。
そして、今年になって、『聖夜』を読んだ。
内容とは全く関係ないけど、この表紙がどこか懐かしい気がすると思ったら、うちの大学の記念館に似ているんだと気づいた。
内容はといえば、こちらは1冊丸々の長編。
でも、モチーフは変わらず「音楽」。もっと「音楽」。
牧師の家に生まれ、キリスト教の高校に通い、オルガン部に所属する主人公。
今度は男の子だ。
彼の中には鬱屈したものがある。
それは彼の過去に関係している。
子供の頃、母親が愛人を作って出て行ってしまったのだ。
母が弾いていたオルガン。
一度はやめたけれど、彼はやっぱり弾き続ける。
モヤモヤを抱えたままで、いろんなものを斜めに見ながら過ごす高校生活。
ある日、オルガン部でコンサートを開くことになり、
難しい楽曲に挑戦することになる。
練習する日々。
そして、やって来るコンサート当日。
でも、彼は弾かなかった。
その代わりに、新たな友達と、知らなかった世界を知る。
そして、父親との対峙。祖母の本音。淡い恋愛。
いろいろなことがあり、確かに彼は変わっていく。
それが読んでいてよくわかる。
とてもいい物語だった。
それから、すごいなぁと思ったこと。
それは、文章での音楽表現。
手塚治虫がベートーベンの話を描いた漫画があって、
絵で音楽が聞こえてくる感じがすごくて、天才とはこういうことかと思ったけれど、
文章で音楽の「感動」が伝わるっていうのもすごいなぁと思った。
もちろん、音が聴こえるわけじゃない。
でも、その音が聴こえたときの「感動」がダイレクトに伝わってくるのだ。
泣けるとか、手に汗握るとかじゃないけれど、
佐藤多佳子の物語はいつも「読んでよかった」と思わせてくれるのがいい。
なんでもない幸せに気づいたときのような、そんなほんわかした気持ちになる。
心がピュアになったような、そんな心地良さ。