ちわきの俳句の部屋

メカ音痴おばさんの一念発起のブログです。
人生の後半を俳句にどっぷりと浸かって、…今がある。

〝梅雨〟の話あれこれ…

2020年06月15日 | 俳句

 今日は午前中は日が差して暑そうですが、午後には曇りになるとか…。やっぱり梅雨ですね。 

 そういえば土曜日から昨日にかけては、降ったり止んだりの梅雨らしい天気でした。…と書くと、なんだか梅雨を肯定しているようないい感じでしょう。ものは言いようですね。〝男らしい〟〝子どもらしい〟などは、いい意味で「らしい」といっているんですもの。

 でも本来「らしい」というのは、「根拠や理由のある推定を表す」や「確かな伝聞などに基づく推定を表す」助動詞で、〝明日は雨が降るらしい〟や〝あの家に泥棒が入ったらしい〟というように使う方が多いのです。それが接尾語に転じて〝いかにもそのようである〟というふうに使われるようになりました。

 だから私が「梅雨らしい」といったのは、日本各地に梅雨前線が停滞して雨のよく降る時期にふさわしいことだわという意味であって、もし、この時期に殆ど雨が降らなかったとしたら梅雨らしくないじゃないかと。

 そもそも〝梅雨〟という季語は、地域による多少のずれはありますが、おおむね新暦6月10日前後から約1ヶ月間雨の降り続く期間をいうものです。

 しかし、「梅雨」にも災害をもたらすほどの集中豪雨となることがあり、その場合は「荒梅雨(あらづゆ)」といいますし、年によっては全く雨が降らず梅雨らしくない時もありますから、それは「空梅雨(からつゆ)」とか「旱梅雨(ひでりづゆ)」などというんです。他にも木々が葉の色を濃くする時期なので「青梅雨」とも。「梅の雨」とは、梅の実が熟す頃に降る雨ということ。

 更に、梅雨の最中に気持ちのよい晴間が見られることがありますが、それを「梅雨晴間」とか「五月晴(さつきばれ)」といいます。ところが、昨今はこの「五月晴」を、梅雨の前の陽暦5月の晴れのことだというのが一般化してきています。しかし、それは誤用ですので、俳句を詠む人は間違って使わないようにしましょう。

 そもそも「五月(さつき)」というのは、陰暦5月の異称ですから、陽暦でいえばほぼ6月にあたり、梅雨の時期になるのです。だから、この時期に降る雨のことを「五月雨(さみだれ)」というのも頷けるでしょう。あの芭蕉の有名な句のように。もし陽暦の5月にたまたま降った雨だったらこうは詠めなかったしょうから。

  五月雨を集めて早し最上川       芭蕉

 他の梅雨に関する句などを見てみましょうか。

  降る音や耳も酸うなる梅の雨      芭蕉

  荒梅雨や山家の煙這ひまはる      前田普羅

  空梅雨の塔のほとりの鳥の数      宇佐美魚目

  青梅雨の金色世界来て拝む       水原秋櫻子

  かしは手の二つ目は澄み五月晴     加藤知世子

  病者睡て足裏くろし梅雨晴間      石田波郷

 梅雨を使った季語にはまだいろいろあるでしょうが、やはり日本という農耕を主体としてきた民族や風土にとっては、この季語はどんな形にせよ、絶対になくてはならないものでしょう。

 今のところまだ完全には終息していないコロナの災禍に加えて、更に梅雨の大きな被害が出ないことを心から祈りたいものです。どうぞ穏やかな梅雨でありますように!そして、梅雨が明けて、次の句のように気持ちのいい日本晴れが迎えられますように。

  梅雨明けて大和青垣入日どき      堀田知永

 写真は、「ネズミモチの花」ですが、これもちゃんと夏の季語なんですよ。漢字では「鼠黐」や「女貞」と書きます。昔の社宅の生け垣にありましたが、秋には黒紫の実がたくさん付いて、ネズミの糞に似ていたので私は嫌いでした。でも、よくよく見ると真っ白で結構可愛い花です。花言葉を調べると、〝名より実〟なんですって!とってもいい言葉。ことわざにも〝名を捨てて実を取る〟というのがありますものね。

 この花を詠んだ句に、〈ねずみもちの花散りて地を浄めけり   松崎鉄之介〉がありました。

  


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (翡翠)
2020-06-15 14:34:35
ちわき先生

こんにちは(*^_^*)

五月雨、はじめは単純に
5月の雨だと思っておりました。
歳時記で調べたら陰暦5月とのこと。

陰暦が主流だったころの
○○忌というのは、全て陰暦で
最近の方の忌日は、陽暦で
たまにこんがらがります(;´∀`)

忌日の季語は未だに
使ったことがありません。
難しいです。



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陰暦 (ミルク)
2020-06-15 18:56:59
五月雨・・・そうだったんですね。
季語は全て陰暦から。そうすると少しうなずけるような(^-^;
秋田も、昨日梅雨入りでした。夜から今朝にかけて雨。
きょうは、居間の敷物をようやく夏物のイグサの敷物に。いい香りがします♪
ちょっとお高いけれど、交付金を当てにして(^-^;
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Unknown (ちわき)
2020-06-15 19:35:11
翡翠さん、こんばんは!
俳句をしていない人は、単純に五月だと思ってしまうでしょうね。
季語の基は江戸時代に編集されていますので、陰暦が殆どです。しかし、現代俳句が盛んになって、陽暦の行事などと混同されてしまって、ちゃんぽんになってしまいました。
それでお正月などの季語は、ややこそくなったのです。本来は春なのですが、冬というわけにもいかず、結局新年という歳時記の部立てにしたのですよ。
昔の人の忌日は陰暦、陽暦を使うようになってからの忌日は陽暦ですので、必ず歳時記で確認しながら詠んで下さい。忌日を詠むのは難しいですから、頑張ってね。
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Unknown (ちわき)
2020-06-15 19:55:19
ミルクさん、こんばんは!
秋田もやっと梅雨入りしましたか。やっぱり南から北へと…桜と同じですね。
夏物のイグサの敷物に変えて…
藺草(いぐさ)も夏の季語、また、藺草で編んだ茣蓙(ござ)に、キレイな模様があって居間などに敷くものを、俳句では「花茣蓙」とか「絵筵(えむしろ)」とかいって夏の季語なんですよ。ヘエッ…でしょ!
交付金は申請書がまだ来ていなのですか?こちらは振り込みがまだなんですが。
時機を逸するというのは俳句では一番ダメなことで、先取りが好まれますのよ。なら政治家に俳句をしてもらわんとね…アハハハ(笑)
返信する
我田引水 (縄文人)
2020-06-16 07:21:25

≫日本という農耕を主体として来た民族や風土にとっては、この季語はどんな形にせよ、絶対になくてはならないものでしょう。

我れ裏か見ても、表から覗いても農耕民族一色なり。その一端のお話。
梅雨時は田植えのシーズン。
雨が沢山降った時は良いが、空梅雨の時は大変でした。
田圃に水がない、少しでも天水を貯めて田植えを終らせナイト1日遅れが収獲に大きく響く…!!
そんなこととて田植えのシーズンは、自分の田圃に水を引くために水口の番。
深夜12時、我が家の田圃に順調に水が入っているだろうか…!
巡回に出かけル。
バッタリ田圃の水口で、近所の小父さんと鉢合わせ。
我が家は父親が早く亡くなったので子供に負担がかかった。見るとわが家の水口は塞がれて・・・・・。

今思えば水争い、『我田引水』とはこのようなことから来たのかと大人に成って気が付く。
溜池、用水は普段の備えなのであろう、その恩恵を知る。

そんな田圃も今は、ブドウ栽培、イチゴ園と化して昔の面影はなくなりました。

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Unknown (ちわき)
2020-06-16 13:48:45
縄文人さん、こんにちは!
今日はまさに梅雨晴間で快晴…洗濯物もよく乾きそうです。
なんと、なんと、縄文人さんは農耕民族でしたか。弥生時代になるまで縄文時代は狩猟が専門でしたからきっと…と思っていましたが…。失礼!
でも、夏の季語にある「水番」や「水争い」を地で体験されたなんて、羨ましいこと。近所のおじさんは、差し詰め「水盗む」を実行されたんですね。
今ではその田圃もなくなって、葡萄や苺の栽培に変わったとは…。
農業はしんどい割りに実入りが悪いし、後を継ぐ人もいなくなったからでしょうね。
そうやって古き良き(?)時代のものが一つ一つ失われていくんです。だから俳句ででもせめて残していかなくっちゃ…ね。
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Unknown (stagea_1963 さえちゃん)
2020-06-16 21:24:42
こんばんは!
先ほどは、コメントありがとうございました*\(^o^)/*
俳句や俳画は全然わかりませんが、フォローさせて下さいね。
よろしくお願い致します♫
          小松音楽教室 さえ
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Unknown (ちわき)
2020-06-16 22:05:53
さえちゃん先生…と呼ばせて下さいね。
こちらもフォローさせていただきましたので、よろしく。
生徒を教えるという点では同じですよね。これもカヌマ先生の取り持つ縁でしょうか。大事にしたいと思います。
分野の違うものですが、創造するという部分でやはり〝生みの苦しみ〟というものがあるでしょう。それも似ていますもの。それぞれで頑張りましょうね。応援していますよ。
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