うたたね日記

アニヲタ管理人の日常を囁いております。

H&B 第4話

2015年10月27日 20時04分39秒 | ノベルズ
1つ、2つ、3つ…
何度数えても3枚ある。机に並べて、指さししながら数えてみても、やっぱり3枚。
一体何を目的としたカードとシールなのだろう。
もはやカガリ本人を対象としたことには間違いない。
自室の机に伏すようにしてカガリは突然訪れた難題に悩む。
自分が「何かする」と増えていっているのだと思うが、さっぱり思い浮かばない。
もはや「気味が悪い」と言っても過言ではないのだろうが、それなら捨ててしまう、もしくは誰か大人に相談すればいいのだろう。
だが…なんだかそういう気持ちになれないのだ。
(何か…引っかかるんだよな…)
思い立ってカガリは机の左わきに置いておいたスマートフォンを取って、ショートカットダイアルを押す。
暫くコールがあって、聞き馴染んだ声が聞こえてきた。
<あ、カガリ?どうしたの急に。突然電話かけてくるなんて珍しいね。>
「おー、キラ。あのな…ちょっと相談があるんだが…」
<何?すごい珍しいよね。カガリが僕に相談なんてさ。>
電話の相手は『キラ・ヤマト』。カガリの実の双子の兄妹。
二人の姓が違うのは、別の養父母にそれぞれ引き取られたから。
カガリとキラが誕生して間もなく、両親は事故で他界した。親しい親族もなかったため、二人は物心つかない時に養護施設に引き取られた。たまたま遺品の中に残されていた、母らしき女性に抱かれる双子の赤ちゃんの写真。そこに『キラとカガリ』と書かれていたことだけが、二人を実の兄妹と認める唯一の証拠だった。
幼い二人は常に一緒。唯一の血縁が傍にいる、ということだけが二人の慰めだった。
幼い頃からお転婆だったカガリ。そして兄なのにいつもその後を泣きながらくっついていったキラ。
暫くして、キラを気に入ったヤマトの養父母が彼を引き取った。だがカガリは残された。養父母も二人揃って引き取ることはできない状況があったのだろう。散々別れるのが嫌で泣いていたキラは、カガリにその背を押されて、ようやく養父母の元へ行った、という経緯がある。
ヤマト家の両親の計らいと、その後カガリを引き取ってくれたウズミの計らいで、二人は離れ離れになっても、所在がつかめるように、連絡先を交換していたため、今でもこうしてキラには遠慮なく声を聴くことができる。
<で、何があったの?>
「うん…実はさ…」
カガリは事の経緯を話した。謎のカードと『パンプキン』シールのことを。

<・・・続きを読む>


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H&B 第3話

2015年10月26日 20時09分29秒 | ノベルズ
一体相手はどういうつもりでカガリの下駄箱にそれを置いていくのだろう。目的がはっきりわからない。しかも願い事の可能条件が何も書いていないのだ。そこだけ空白。
何か善行をしたわけでもない。今日あったといえば、遅刻しかけたことと、委員会の担当だったというだけ。それ以外変わったことなどない。
誰かとカガリの下駄箱を間違えている節は十分考えたが、それでも疑問は残る。下駄箱にはクラスと名前がちゃんと書かれている。いい加減同じ間違えに気づくはずだろう。
「それに…」
何故だろう。どうにも捨てられないのだ。気味が悪ければ、さっさと捨てればいいだけなのに、どうしても気にかかって捨てられない。

そしてもう一つ、気にかかること。
アスラン・ザラのことだ。
偶然として気持ちの中では片づけたが、何故か気になってしまう。図書館のことだけではない。朝教室に入るとき、彼がこちらを見ている気がする。
親衛隊をかき分けていくのは何時ものことだが、部屋に入ると彼はどことなく安心したような表情をするのだ。無論、毎日彼を見ている訳ではないから断定はできないが、今日図書室で会った時と、同じ表情をしていたように思えてならない。

二つの不思議を抱えたまま、カガリはベッドの中で悶々と渦巻く気持ちを打ち消すようにして毛布を頭からかぶった。

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H&B  第2話

2015年10月26日 20時01分06秒 | ノベルズ
「カガリ、何、そのカード?」
放課後、カードをつくづくと眺めていたカガリにミリアリアが声をかけてきた。
「あ、ミリィ。今朝下駄箱で見つけたんだけれど…ミリィはこのカードに何か見覚えあるか?」
「う~ん…『商店街の買い物のスタンプラリー』という文面じゃなさそうね。」
つくづく眺めてミリアリアも思考を巡らせてくれている。
「そっか…誰か間違えて、私の下駄箱に入れたのかもしれないと思っていたから、大事にしまっておこうとは思うんだけど。もし、ミリィも探している人を見つけたら、教えてくれないか?」
「うん、それは大丈夫。…それよりもカガリ。もう委員会の時間じゃないの?」
ミリィに促されて時計を見たら、もう15時30分。
「やばっ!遅くなったら怒られる!ミリィ、サンキューな。今日は先に帰っていてくれ。」
「うん、わかった。頑張ってね。」
ミリアリアが手を振りながら、飛び出していくカガリの背を見送った。

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H&B 第1話

2015年10月25日 17時00分48秒 | ノベルズ
あれは、一体何時の頃だろう…

   夕日に向かって声を上げて走っていくのは、幼い私
   その後を泣きそうな顔をしながら、追いかけてくる子が一人
   
   涙が零れそうに顔をクシャクシャにしていたその子に私は言った

   「これをやるよ」

   いつもつけていたお気に入りのポーチから取り出して…
   
   「いいか、これからお前が・・・したら、ここに・・・」

   なんだろう 手元がよく見えない

   「それでもし、これが・・・したら、お前を―――」



<ピピピピ…>
とても気に入らないアラームが、夢の途中で現実にカガリを引き戻した。
(なんだったんだろう…今の夢は…)
虚ろに目を開けば、金眼に映るのは真っ赤な夕焼け空ではなく、真っ白なレースのかかった天蓋。
思い起こそうと頭を覚醒させている途中で、これまた毎度の大きな声。
「まぁまぁ、お嬢様。早くお起きになりませんと、学校に遅刻なさいますわよ。」
何時の間に部屋のドアを開けたのか。住み込みのお手伝いのマーナがカガリから毛布を引き剥がしにかかった。
「大丈夫、ちゃんと起きてるよ。ただちょっと夢に見たのを思い出そうとして…」
「まぁまぁ!お嬢様がご自分で起きているなんて…今日は雨が降るのではないでしょうか?ならば尚のこと、お車のご用意をしなくては―――」
毛布の中でしっかり目を開けていたカガリに驚きながら、マーナがカガリとは対照的な細い両目を見開いた。
確かにいつも、毛布を剥がさないでカガリが起き出すことは珍しいことだが…
(雨が降る、なんて、オーバーな!)
ベッドから飛び起きカガリが、いささか斜めになった機嫌を立て直しクローゼットの中からマーナが取り出した、仕立てあげたばかりのように<パリッ>とした制服に着替える。
「いつも言っているだろう?車はいいよ。電車と歩きで行きたいんだ。その方がミリィといっしょに行けるし…」
「でもお嬢様、最近物騒な連中がうろついているようなことを、旦那様がおっしゃっておりまして。大事な大事なお嬢様に登校や下校途中にもしものことがあってはと、マーナはそれはそれは心配で―――」
「だーいじょうぶだって!…よっと!」
海老茶のリボンを<キュ>っと締め、クルリと鏡の前で軽やかに一回転すれば、スカートがフワリと広がって弧を描く。うん、今日もばっちりだ。
「誰もいない道を歩くわけじゃなし、それにあんまり車に乗ってばかりいたら運動不足だし、ガソリン代だって浮くし、排気ガスも出ない。エコロジーだろ?」
「お嬢様…」
マーナの呆れ顔は今に始まったことではない。やや押しつけがましくもあるが、こうして自分を心配し、世話を焼いてくれるのは、自分を引き取ってくれた…養父とマーナくらいだ。何不自由ない生活を送らせてくれるだけでもありがたいうえに、こうして声をかけてくれるのだから、感謝以外に何があるであろう。
「さ、ご飯食べよ。今日の朝ごはんはなんだ?」
「お嬢様のお好きな、ちょっとスパイシーなオムレツでございますよ。」
「お!やったー!やっぱ今日は快晴だな。」
小鳥のように軽やかにステップをしながら、カガリは元気よくダイニングへと降りて行った。

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今日からスタートします!

2015年10月25日 16時44分35秒 | ノベルズ
昨日ブログの下~~~~~の方で、サクッとつぶやきました『アスラン誕生日記念SS』の方を、これから毎日(予定)でUPしていきます。
ブログにてUP予定でしたが、長すぎてしまって「容量オーバー」が出てしまったので(哀)、携帯サイトの方にUP指定行くように変更しました。
でも各章の冒頭はブログに貼って、続きもリンクできるようにしましたので、ブログから読んでいくことは可能です。
いちいちリンク飛ぶの面倒、という方は、携帯サイトの方でご覧いただけましたら幸いです。
『アスラン誕生日』と言いながら、殆どカガリたんです(笑)
久しぶりの学園ものなので、ちょっと張り切っていたり(^^)

ではでは、アスラン誕生日当日が最終回を目指して、お祝いモードで「かもした、行きまーす!」(^^ゞ

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