=「ただいま!」=
レクイエムは破壊され、アコード達の母艦であるグルヴェイグは轟沈した。
これによりファウンデーションとの戦闘は終結した。
ミレニアムから上がる帰還の合図の信号弾。
まもなくアカツキに続き、インパルスとディステニーガンダムが帰還した。
「おい、アグネス。一体今まで何やってたんだよ!?」
ヘルメットを放り投げ、キャットウォークの上でルナマリアの腕をとったまま離さないアグネスに、シンが文句を垂れる。
「何って、そりゃ決まっているでしょ!?総裁がファウンデーションのシャトルで脱出したんだから、後を追って当然よ!」
さっきまで敵に寝返っていたのに、さらっと言い訳するアグネス。命がけに加え、己の(男性に対する意識の)尊厳をかけて戦っていたとは思えないほどの回復ぶりに、ルナマリアは辟易する。
(はぁ~総裁じゃなく、本当は男について寝返ってたって、どうやって報告すればいいのよ…)
悩めるルナマリア。そんな彼女を渡すものかとばかりにシンがルナマリアの腕を引っ張る。
「え!?シン!?///」
「お前が無事だったのはいいけど、ルナと戦っていたってことは、敵に寝返ってたってことだろ!?そんな奴がルナの腕をとるなよ!」
必死なシンに、ルナマリアは思わず嬉しさと照れくささが綯交ぜになる。勝手に赤くなっていく頬をごまかそうとするルナマリアの右腕を、更に引き寄せるアグネス。
「何言っているのよ!この山猿!!ちょっとばかりブラックナイツやっつけたくらいで調子に乗らないでよ。アンタ、何も考えずに戦っていたんでしょ?脊髄反射で生きてるようなもんだものね!」
「何を~~っ!!」
「まさかと思うけど、アンタが隊長とかだったら私は絶対反対よ!ルナマリアが隊長だったらついていくわ♥」
「俺は隊長に「ミレニアムを頼むよ」って言われたくらいだぞ!」
「あ~ぁ。いい気になっちゃって。豚もおだてりゃ何とやら、ってやつ?」
「アグネスーーっ!!」
ルナマリアは頭を抱えたいが、両手を引っ張り合われて身動きさえできない。
ヤマト隊長だったら、ここできっと止められるんだろうな、この二人を…
自分が隊長に向いているか否かはともかくとして、今はこの二人を止めないと
(も~~!!こういう時どうすればいいのよ~~!?)
すると
「シン!ルナ!アグネスーーーーーっ!!」
キャットウォークの向こうから、大勢の声がする。
整備班の皆が手を振って、ヴィーノが飛びつかん勢いで寄ってくる。
「みんな、どうしたのよ。」
呆気に取られているアグネスに、ヴィーノは涙を浮かばせながら満面の笑みで言った。
「お帰り!」
見ればみんなが顔中クシャクシャにしている。
「お帰り、シン。」
「ルナマリア、お疲れ!」
「アグネス、お帰りなさい!」
3人がキョトンとしていると、シンがようやく口を開く。
「どうしたんだよ、泣くことかよ。」
「だって…だって、生きて帰ってきてくれた…」
ヴィーノが涙を拭う姿を見てシンとルナマリアはハッとする。
そうだ。前回の大戦で、決戦時、ミネルバは轟沈し、みな救助艇で脱出したのだ。幾人もの仲間を失って。
そしてシンとルナマリアもまた、取り残された月面で、終結の信号弾を仰ぎ見ていた。
負けた…でも生き残れた…
必死に戦い続けてきた結果の無慈悲さに、ただ涙しか出てこなかった。そこに手を差し伸べてくれたのはアスラン。
あの時は言えなかった―――「ただいま」って
シンとルナ、そしてアグネスは顔を見合わせると、一時微笑み彼らに言った。
「「「みんな、ただいま!」」」
笑顔に包まれるミレニアム格納庫。
「あ、でもやっぱり私はシンとは組まないからね。」
先ほどの続きとばかりにアグネスがまた強気に出る。何しろ整備班には彼女のファン(というか手名付けたw)が多いのだ。背に応援を受けて、アグネスがまた噛みつく。
「アグネスなんて、ルナにも負けてるじゃん!やっぱり俺の方が隊長に向いてるって!」
「やめてよ!だったらやっぱりルナマリアが隊長でいいじゃん!」
「もう…あんたたち…」
ため息交じりのルナマリア。
そんな彼らの様子を、遠くからヒルダが見守る。
「マーズ、ヘルベルト。…あのひよっこたちの面倒を見なきゃならんから、まだまだお前たちのところには行けなさそうだ。」
苦笑するヒルダの背をそっと押すような感覚。
(大丈夫ですぜ、姉さん!)
(姉さんの背は、これからも俺たちが見守ってますって!)
あの3人に自分たちの昔を重ね、ヒルダは満足そうに微笑んだ。
=勝利の女神=
「キャバリア―アイフィリッド2、着陸します。」
慣れ親しんだCICミリアリアの声に、カガリはストライクルージュのグリップをオフにした。
地を踏みしめた感覚がMS越しに伝わってくる。
「さーて、まずはアレから片付けるか!」
拳にした右手を左掌で受け止め、カガリは視線を再び戦闘モードに移行する。
先ほどはつい微笑んでしまった。
オーブに帰還中、右についたキャバリア―0とインフィニットジャスティス弐式。
真っ先にモニター回線を開いてきたのはアスランの方だった。
ヘルメットを取ったその翡翠は、先ほどまで死闘を繰り広げていた男のものとは思えないほど穏やかで。
そっと守り石を見せながら、口に出さずに思いだけを告げてくる。
―――「石が守ってくれたよ。」
その微笑みに、今は最大の「お疲れ様」を込めて、カガリも「お守りの指輪」を見せて答えた。
だが、本国に戻ったら先ずは真っ先に問いたださねばならないことがある!
(―――「神聖な戦いの場に何と破廉恥な!!」)
あのシュラとかいう男は確かにアスランをもしのぐほどの最強の戦士だった。
戦いの前に綿密に作戦を立て、読心術を逆手にとって彼の不意を衝く作戦をアスランが指示した。
「カガリ」―――その名を読んだ時が合図。リモートに切り替える瞬間、遠隔操作がバレないようにと、アスランがカガリをイメージする何かを想像する、ということまではカガリも頷いたのだ。
だが、飛び込んできたのは
―――「破廉恥な!」
オーブ代表の破廉恥な姿など、まさかあの、まじめなアスランが考えるなんて!
「一体私の何を考えたのか。降りたらすぐに問いただしてやる!」
ステップを下降させ、オーブの地に降り立つ。
そこは砲弾の後も、瓦礫もない。
レクイエムの脅威から、無事に国を守れたのだ。
その安堵が先立つ。とその先に、見慣れたパイロットスーツの彼がいた。
(見つけた!)
カガリは走り寄る。するとそんなカガリの気持ちを知ってか知らずか、アスランはやや俯いていた。
(反省の色は、一応あり、か?ならばしっかりと反省を弁じてもらおうか)
「アースーラーンッ!!」
彼の目の前に仁王立しようとした瞬間、
(え…?)
体がふわりと宙に浮く。
次に下半身を支えられている感覚に、カガリが下を向けば、アスランが満面の笑みでカガリを抱き上げていた。
「カガリ、よく頑張ったな!」
アスランがこうしてあからさまに人を褒めることは滅多にない。
カガリを抱いたまま、嬉しそうにくるくると回る。
「お、お、おいっ!ちょっと待て!」
回る視界をよく見れば、メイリンは恥ずかしそうに目を覆いながらもしっかり指の隙間から、二人を目に焼き付けており、ミリアリアは「広報に使うわよ!」とばかりカメラを抱えている。サイまで楽しそうに笑っている。
(こんなに皆に見られてるじゃないか💦)
慌てるカガリは、怒るタイミングをすっかり失ってしまった。
何よりこうした行為を見られることを、一番嫌うタイプじゃないのか、この男は!?
「おい、アスラーーー」
だがカガリは言葉を閉じた。
何より自分を見つめるアスランの瞳があまりにも嬉しそうで。
あのシュラとの駆け引きは、あの瞬間、文字通りカガリがアスランの命を握っていたのだ。
負ける算段はしない男だ。それでもたった一瞬自分の命をカガリに預けたのだ。
目の前で自分を抱え上げるアスランは、自分が守ったのだ。
するとカガリの中に、怒りを通り越した安堵が溢れてくる。
「アスランが生きてくれてよかった。それだけじゃない、オーブもみんな無事だ。」
傷一つ負うことなかったオーブ。目の前で自分を抱き上げてくれるのは、国とまた別の意味で一番大事な男性。
カガリの大事なものが一つとして欠けることなく残った、込み上げてくる喜びで、カガリはアスランに笑いかける。
アスランは頷く。
「そうだ、君が守ったんだ。君を中心に人が集まった。そして皆が力を合わせて守り切ったんだ。」
アスランはカガリを抱え直しながら、カガリの視線を外に向けさせる。
すると
「代表ーーー!」
「やりましたね!」
「オーブが勝ちましたよ!」
「アスハ代表、万歳!!」
オーブ軍の兵士が、国民が、いつの間にかカガリを中心に輪を作って歓声を上げている。
目の奥に熱いものが溢れてくる。
2度の砲火に晒され、またこうしてレクイエムへの脅威にさらされながらも守り切った国と人々。
カガリは涙を止めることなく手を振る。
ずっと遠くの皆にまで手が届く様に、思いっきり。
ひとしきり落ち着くと、アスランはカガリをゆっくりと下ろそうとする。
その瞬間、ほんの一瞬、アスランの囁きが耳を擽った。
「ありがとう、俺の…俺たちの”勝利の女神”」
そして甘い囁きを告げた唇が、誰にも気づかれないように、そっとカガリの頬に触れた。
=静かな夜に=
波の音だけが静かにさざめく砂浜。
小さな家の明かりがぽつんと一つある以外、浜を照らすのは満天の星々。
「静かだね・・・」
「えぇ。」
つい先ほどまで、激戦を戦い抜いていたとは思えないほどの穏やかな空間。
見上げると、いくつもの流れ星が降り注いでくる。
それを見ると少しだけ、キラは切なくなる。
流星は宇宙に散った残骸が、地球の重力に引かれ、大気圏で燃えているもの。
その残骸の多くは・・・おそらく、今日の戦いで散った多くの命と兵器。
「大丈夫ですか?キラ。」
彼の足にそっと手を添え、ラクスが心配気に覗き込んでいる。
彼女はあの時を思い出したのだろう。
第二次ヤキンデューエ戦。あの大戦でようやく終結を見たが、まだ混乱も戦乱も収まらない世界で、キラは自分の戦ってきた意味をずっと自問自答し続けてきた。
疲弊しきった精神は気力を削ぎ、ただ海を眺めて過ごすだけの日々だった。
その心の傷もまだ癒えない内に、ラクスはデュランダル議長に命を狙われ、カガリは自分の身を犠牲に国を救おうとした。
キラは自分が動かなければと、癒えない傷を抱えたまま、また戦場に戻ったのだ。
そしてディステニープランを否定し、その先の自由な未来を作る責任を一人で抱え込み続けた彼の苦悩。
計り知れない傷を負っていることを、ラクスは知っている。
だが、そんな彼女に手に自分の手を重ね、キラは微笑んだ。
「大丈夫だよ。今の僕にはラクスがこんな側にいてくれるから。」
「キラ・・・」
ラクスの肩を抱き寄せ、ラクスは甘えるようにキラの肩にもたれる。
その細い肩を抱きながら、キラも思う。
こんな華奢な双肩に、苦悩―――アコードという事実を抱え込んだ彼女を。
守りたい。ただラクスを。
「僕は欲張りすぎたのかな。」
キラは自分の手をかざして見せる。
「僕がやらなきゃって思ったんだ。ラクスを笑顔にして、沢山大好きな歌を歌える世界にするんだって。」
「私も思っていました。キラを早く自由にしてあげたい、と。」
「何で自分でやらなきゃって思っちゃったのかな。僕の手はこんなに小さい。あれもこれも、全部抱えられるわけないのに。」
そう言ってキラは苦笑する。
「私もです。ラクス・クラインは世界を導いてくれる・・・一体誰がそんなことを望んだのかと。違ったのです・・・私が本当の自分の想いに気づいていなかったからだ、と。」
ラクスの望みはたった一つ―――「キラの側に居たい」だけ。
アプリリウスではあんな大きな家に二人きりで住んでいたのに、今の小さな家で、こうしてただ二人でいられる時間がこんなに大切で、温かくて、愛おしかったなんて。
欲しかった願いはこんなにも小さかったのだ。
外にばかり、上ばかりを見続けて、本当に大切なものはすぐ目の前、足元にあったというのに。
でももう気づいた。
だからもう迷わない。
忘れていた大切なものがここにあるから。
「私は、貴方に会えて、幸せになれました。」
いつか言ってくれたあの言葉を、ラクスは再び口にする。
「僕も、君に会えて、こんなに幸せになったよ。」
隣には君、そして後ろで優しく見守ってくれる両親。
これだけあれば、世界は十分。
ラクスが口元をほころばせる。
「どうしたの?ラクス。」
「いえ、ようやくキラが微笑んで下さいましたものですから。」
「取り戻せたのはラクスのお陰だよ。」
キラはラクスに囁いた。
「あの曲、歌ってくれないかな?」
「キラからのご希望であれば喜んで。」
キラは目を閉じ、その柔らかな歌声に聴き入る。
静かな この夜に
貴方を 待っているの
あの時 忘れた
微笑みを 取りに来て
あれから少しだけ時間が過ぎて
思い出が優しくなったね
星の降る場所で 貴方が笑っていることを
何時も願ってた
今遠くても また会えるよね
・・・Fin.
***
今日も突発でSS書いてます。
というのも、アレですよ!
遂に劇場版ガンダムSEED FREEDOMの上映最終週の特典が発表され、劇場のアフターエピソードのイラストに加えて裏面に小話が入っているという豪華な特典✨
遂に劇場版ガンダムSEED FREEDOMの上映最終週の特典が発表され、劇場のアフターエピソードのイラストに加えて裏面に小話が入っているという豪華な特典✨
ですが何とここに来て、3種ランダム配布という、ここまで来てこんな宿題落としていくんですか、公式!?(゚Д゚;)
って泣きたくなるような嬉しいような悲しいような、何とも言えない感情が渦巻いてます( ;∀;)
もう地元の劇場じゃ、一日1回、しかも殆どレイトショーなので、絶対全種類は手に入らないだろうなって・・・💧
いつもですと「アスカガが来れば―――!」と思うのですが、30回以上上映を見てきた身としては、「この3組のエピソード、全部読みたい!!」ですよ。
なんで三点セットにしてくれないかな~(´Д`)ハァ…
なので、手に入らないであろうことを含めて、勝手に自分で補完させてみました(哀)
多分17日に実物手にして「全然違うじゃん!」って思うこと99.99999・・・%なんですが、手に入らない以上は妄想するしかないじゃないですか!←アスランの破廉恥妄想も、今なら応援できる気がする!( ー`дー´)キリッ
ちなみに18日の双子誕生日舞台挨拶は、見事に落選したのですが、お知り合いさんが見事に当選されて、被った分を回していただけることになりました✨(T人T*) 神引きできる人って、本当に何でも確実に引くんですね・・・かもしたには一生縁がないです。
とりあえず、最後の特典はどこまで揃えられるかわかりませんが、せめて一枚だけでも手にしたい現在です💦
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