うたたね日記

アニヲタ管理人の日常を囁いております。

「おかえり。」前編

2018年10月28日 00時45分01秒 | ノベルズ
空はオレンジジュースみたいな色の夕焼け
   髪を撫ぜていく風は、だんだん冷たくなっていく

   でもこれは本物の空でも、風でもないことは、小さな子だって知っている

   本当の空ってどんな色なんだろう?

   風ってどんなにおいがするんだろう?

   「じゃぁ、アスラン、バイバイ!」
   「うん、キラ、また明日。」
   手を振れば、幼年学校の友達のキラはブンブン手を振り返して、勢いよく玄関の中に消えていった。中からキラのお母さんが、彼を温かく迎える声が聞こえる。
   彼を見送った後、いつも通りにカードキーを取り出して、一件となりの家の前に立つ。
   
   帰ってきても誰もいない家
   今の季節は玄関を開けたら、もう家の中は真っ暗だ。
   だから直ぐに鍵を開けたらすぐ横にあるスイッチを押して、玄関の灯りを付けて、 
   それから…

   <ピー>
   「あれ?」
   何故だろう?鍵が開いている。
   (まさか…泥棒か!?)
   確かに家を出るときは鍵をかけたはず。
   まずいな…セキュリティが甘くなっただろうか。
   また強化した設定の物を作らないと。
   そう思って敵が襲ってきてもいい様に、身構えてそっと玄関を開けた、その時だった

   「おかえりなさい!アスラン。」
   「は…母上…?」
   奥のキッチンからエプロン姿で走ってきたのは、殆ど毎日遅くまで仕事をしているはずの母。
   「どうしたのですか?…まさか、身体の具合が悪いとか―――」
   「ぜ~んぜん!とっても元気よ♪ それよりもアスラン、何故私がこんなに早く家にいるのかは…早く手を洗ってダイニングにいらっしゃいv」
   満面にっこりとした母に促され、そのまま手を洗い、自室にカバンを置いてダイニングに向かうと、その時玄関のドアが開いた。
   「…今戻った。」
   「ち…父上!?どうして―――」
   帰りが遅いどころか、普段滅多に帰ってこない父まで顔を見せた。すると
   「あ、お帰りなさい、パトリック。丁度良かったわ♪ 今準備ができたところよ。」
   エプロンで手を拭きつつ、母が俺たちをダイニングに招く。その目に飛び込んだのは
   「うわぁ…」 
   色鮮やかな野菜が盛られたサラダ。さっきの夕焼けみたいなオレンジジュース。クレソンで飾られたバターライスに、それと、もう一つ…
   「母上…『これ』、何ですか?」
   指さした先にあったのは、赤いスープの満たされた皿の上に…何やらダラリと広がったクタクタの葉と、何かが粉砕されたような塊。
   でも母の声はとてつもなく上機嫌。
   「これ?フフ~ン♪ 今日は貴方の誕生日でしょ?だからあなたの大好きだっていう『ロールキャベツ』よ!カリダさんに聞いて作ってみたんだけど。」
   自信満々に腰に手を当てて「どう?」と聞く母。
   すると無言を決め込んでいた父が、ボツリと呟いた。
   「…お前が以前アスランのために作ったっていう、離乳食以来だな。一体、どうやればこんなのができるんだ。」
   「あら失礼ね!パトリック。聴きながら作ったんだから、間違いないはず、よ!特に味は!ま、とにかく座って坐って」 
   そういって母は俺の肩をそっと押して椅子に座らせる。
   すると父は物々しい顔つきで俺に小さな箱を手渡してくれた。
   「父上、これは?」
   「…開けて見なさい。」
   そう言われて開けた箱の中は
   「わぁ…『桃のケーキ』だ。」
   自然と口元が緩む。顔をあげれば、目の前で母上がテーブルに頬杖をつきながら、ニコニコと話した。
   「あら、流石はパトリックね。息子の好物を知っていたなんて。」
   すると赤くなった顔をごまかすように横に振りながら、父は答えた。
   「お前がいつも「アスランの好きなものは桃」と言っていただろう。…それにしても、キャベツの研究をしている人間が、どうやったらこんな『ロールキャベツ』ができるんだ。」
   「まぁ、そんな言うなら食べなくてもいいのよ。ね?アスラン、貴方はどう?キラくん家のロールキャベツに負けてないでしょ?」
   「…キラの家のロールキャベツは、クリーム仕立てです。」
   「あら、そうだったの?」
   「そして、ちゃんと丸まっていて、ベーコンを紐のように巻いて、止めてあります。」
   「……ま、まぁ、気を取り直して食べてみましょ。味は自身があるのよ!さぁ、パトリックも。今日はいいワイン用意したのよ!アスランの誕生日ですもの。」
   そういって父のグラスにワインを注ぐと、母の音頭でグラスを掲げた。
   「「アスラン、誕生日おめでとう!!」」


・・・続きはこちらから。


***

ということで、今年のアスランBD記念SS、前編をお届けいたします。
5月にやりました、カガリBD記念SSの続編となっております。
こちらの作品単品で読んでも、特に支障はありませんが、カガリBDSSも読んでおくと、ちょっと…ほんのちょっと、多分ゾウリムシくらいは面白くなるかと。
で、アスランBD当日の29日、日付変わり次第「後編」をUPしたいと思います。(でないと、29日は仕事&アス誕祝い、やってくるから帰ったら30日になっているとまずいので(笑))
ともかく、毎年の事ながら、今年も思いだけは込めた!文才はからっきしなのもお約束v
少しでも皆さんとお祝い出来たら幸せです