昭和少年漂流記

破壊、建設、発展と、大きく揺れ動いた昭和という時代。大きな波の中を漂流した少年たちの、いくつかの物語。

とっちゃんの宵山 ⑫

2016年10月04日 | 日記
「グリグリ~~。どうや?」 翌朝、いつもの席に陣取ったとっちゃんは、配達から帰ってきた僕を、後輩を迎える顔で待っていた。 「どうや、って?」 「びしょびしょやないか」 「平気、平気」 「濡らしてへんやろうなあ」 「新聞は濡らしてない!」 大沢さんと桑原君が様子を伺っている。 「グリグリも一人前になったもんや」 とっちゃんはブウとタバコの煙を噴き出し、尖った口先でフィルター部分まで . . . 本文を読む