KADOMIUMTANK ソフビブログ

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「人生は素晴らしい 戦う価値がある」
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イルイル ゲルツ×流星のペピー

2012年01月11日 | インディーズソフビ

スーパーフェスティバル58で販売されたイルイルさんの「頭脳兵器ゲルツ」と
「流星のペピー」。開場以来たちまち行列ができた本2作。

パストフューチャーTOYとでもジャンルづけられそうな、妄想でいつか見たような未来の日本で
こんなおもちゃが売られているのではないかと思える製品とそれを飾り立てるパッケージ。
これぞその名の通り、パッケージングで見る者の脳を刺激する「頭脳兵器」だ。
しかし何度見ても凝ったパッケージデザインですよね。

それもそのはず、イルイルさんの本業はパッケージデザインやカタログなど
商業紙媒体の製作、DTP関係というのカナ?なのだから。
一種の意匠フェチズムというのか、自分の妄想の中に存在する昭和レトロフューチャートイを
ソフビと外装ともども実体化させたのが昨年2011年のデビュー時に発表した「ネオゴリラ」
「トキオ」、そして今回発表した2作なのだろう。

人を食ったような名前でイルイルの立ち位置を体現する「アーバン怪獣」なるミニソフビも
昭和の頃に吊るしで駄菓子屋に売られていたよくわからない駄玩具を思わせる。
こういう駄玩具メーカーで昭和当時も現場に1人くらいはいたのだろう、
美術学校出の若い原型師がむやみにはりきっちゃって手に取る子どもさんそっちのけで
芸術してしまい、妙~にモダーンなモノが出来ちゃったのがこのアーバン怪獣、ってところカナ?

とにかく、自分の世界観をソフビとパッケージ製作という手法で表現したのがこの一連のイルイル
プロダクツなのだろう。

すでに2度、インディーズソフビメーカーとして東京に出現したイルイルとは何者なのか?
ブースに居たイルイルさんと、自身のプロダクツやイルイルというメーカーに関して、
お話を聞く機会が得られた。



今回の「流星のペピー」はパッケージもファンシー玩具風の仕様にこだわって、ビニールのベルトを
取り付けて子どもが持ち歩くバッグのような仕様になっている。こんな感じでおもちゃ屋の店頭に
吊るってあったおもちゃ、あったね~。子どもが手にしているので、売っている時の
ワクワク感を漂わせた状態でいつまでもいない・がゆえに放つ輝き。
なんともはかない存在です。
中身のソフビもですが、包装パッケージもソフビ本体といえるでしょう。



イルイルアイテムのパッケージへのこだわりは、平たく言ってみれば
おもちゃがもつ装丁の放つ当時の輝きと、いつか所有者である子どもたちが成長した時に
過去に置いていくという、おもちゃが特有に放つ時代の輝き、過去のものになる残酷さ、
はかなさやメランコリック感を現代のDTP技術を駆使していかに纏わせるか。
その点にフルで創作モチベーションが発揮されそこに手に取ったお客が共振し、
心揺るがせているーーということなのでしょう。

そしてプロダクツであるソフビ自身。
アイテムを会場で直に見てわかったのはペピーは手が外れてチェーン状に射出できる設定と
なっている。カワイイ顔に合わない好戦的なギミックも何かギャップを狙っているふしが。
ライオンのエンブレムを彫刻したベルトとか、むやみに昭和の原型師さんが張り切ってしまい
ました的な変態バロックムードも随所に刻まれて当時物ソフビにありそうな「やりすぎ感」を表現。
遊び心の産物、というよりはいたずら心という感じか・

そのバックには「原作」と呼べる読み物もあるらしい、流星のペピーとは一体何者なのか?

イルイルブログに掲載されていた現物「流星のペピー」、「ほしっこペピー」の表紙。
「まよいのもりの おはなし」。
たぶん流星のペピーが原作本で、ほしっこ~の方は幼児向けにわかりやく表現された
絵物語のように見える。痛み具合から見てかなり古い本のようだ。

中身は白紙。「なんだこりゃ イルイルに半年かつがれた!」

ほんとはこの記事をイルイルさんが一年ごしで仕掛けた冗談に載って自分もこの事実は
隠したまま書こうかと思ったのだが、非常におもしろけしからんので、真実を暴露する。

イルイルさんのブログに今回のペピーやゲルツの製作情報が初めて掲載された
時にいっしょにアップロードされていた画像をソフビファンの人ならおぼえていると思う。
そう、上にも現地撮りを載せた読み古したヨレヨレの「流星のペピー」の単行本。
ああ、こんな作品が実際、昭和の頃にあって、イルイルさんが思い入れがあってこのアイテムを
作ることにしたんだろうな、と普通思いますよね。
上の通り、今回ブースに持参された「ペピー」の単行本は白紙!

イルイルさん「そんな作品があるように見えるよう、表紙だけですが作ったんですよ」

イルイルさんがこの表紙に書かれている作者の人の所在を調べて、コンタクトをとって、
相手を必死に拝み倒してペピーをソフビ化(気難しい、ペピーを過去に描いたことを
自分の矜持にして難色を示しているおじいさんや、あるいは事情もわからず
取りつくしまもない状態の遺族のおくさんを勝手に想像。)版権許諾をもらっている
経過など勝手に想像していたんですが。
だからなかなか販売決定にまでこぎつけられなかったんだろう、と思ったんだけど、
一方で、タコはタコで長年、色々妙な昭和の漫画本とか見てきたのに、それでも全く
出くわさないでいた、またはタイトルも聞いたことがないものがあるんだろうか?と
疑問視している自分も居たり。
ネットで検索しても、「流星のペピー」なる単行本はイルイルブログしか
ひっかからないし、すべては結局、今回のスーフェスの開催まで堂々巡りなままだった。

正直自分も、あまり知名度のない作品がソフビになった時は「これが元ネタ」とブログに
画像なりなんなり見つけてきていっしょに見せながら紹介するのが楽しみだったん
ですけどね。マニアってそういうところあるじゃないですか。
それにしてもイルイルというソフビメーカーさんがそこまで夢中になってわざわざ
ソフビにまでしたくなるこの、このペピーという作品は一体どんなストーリーなのだろう?
それをちゃんと知っていて、うーん懐かしい、とペピーのソフビを買いに行く人間も
いるんだろうか、と。


イルイルさん「それっぽい紙を用意して、痛んでクシャクシャな感じの装丁にわざと
作ったんですよ」。

ああ、かつがれた。さすがDTP関係熟知してるだけあるな~。
「ペピーの本をほんとうに探してたんですか」イルイルさんも笑ってました。

今回スーフェス会場で声をかけてくれた人が「ペピー」の話になったん
ですが、「僕も気になっていたんですが、あのブログの本ですがイルイルさんの作ったもので、
作品自体、本当はないんじゃないですか?」と、微笑みながらもやはりフェイクの気配をすでに
読み取っていたり。

そもそも、おかしいと思ったのは、ペピーのソフビ製品が完成したときに、
そのペピーが本の表紙に描かれているキャラと似ていない。
頭も隕石風パンチパーマだし、ボディも絵にあるような人間風じゃなくて
デフォルメされているし、ギミックもサイボーグみたい。
ほとんど別物。これならパチソフビとしてすっとぼけて作って売ったって問題ないじゃないか。
イルイルさんが版権を苦労してとった(とタコは当日まで思い込んでいた)意味は
ないんじゃないか?

隠居の身にある版権所有者が「ペピー、ああ昔書いたなあ、君がソフビにしたいって?
でも仕事で書いたんだしソフビの監修といってもよく覚えてないんで勝手に、好きにやって
ください」とでもイルイルさんを突き離すような消極的な口調ながら許諾してくれたのだろうか、と
またまた脳裏に疑問が錯綜した。
しかし一個の版権インディーズソフビが出来上がる
プロセスをそんな感じでつらつら妄想していた自分がまた楽しかったりもしたんだが。




イルイルさん「今回のペピーについては、昭和の版権おもちゃによくあったことを意識して
います。オリジナルに似ていなかったり、おもちゃの作り手が勝手に自分でイマジネートして
作ってしまいました、または原作のビジュアルとだいぶかけはなれたものになってしまいました、
的な感じを出したかったんですよ」それでこのデフォルメに隕石パンチ頭、手はチェーンパンチ
という異形になったわけか。

ナルホド、そのために作ったフェイク単行本なわけですね。さきに本がアップされていたことで
ソフビを手に取るお客も本の表紙とのギャップを楽しむというか。シアトリカルに手がこんでる話。
そもそも昭和の時代は現代よりも版権管理が曖昧で、おおらかだったから
ライセンスモノなのにオリジナルと見まがうようなコレジャナイ感をかもし出したおもちゃって
結構ありましたよネ。年始にタコブログに載せたカメーバのソフビもまさにそのクチ。
そしてそれが後の時代になって見るとまたイイ味になっているのだけど。

イルイルさんはそんなところまでパストフューチャーなおもちゃ感を演出したかったのか。
ソフビになったイルイル妄想脳内児童文学の「ペピー」はそんなパッケージフェチズムと
昭和おもちゃの持つ神話的要素から転げ落ちたヤレ文化を深耕しオリジナルとして
再現した、「本体だけでなくその製品の出来上がったバックボーンまでも全部自分で
作りだした」妄想自家消費的プロダクツなのだろう。ハイクオリティながら、なんとも屈折した
愉悦の産物ではある。

とにかく、「元ネタが実在しないけどパチソフビ」っていうアイテムは初めて見ました。

 

ゲルツも背面の顔と中の電子頭脳パーツが別分割なので、中で合わせて後頭部も
別の顔として見ることができるギミックをが付与されている。

パッケージについて。
イルイルさん「ネオゴリラやトキオの時はそれほど自分の製品を作る上でキャラクターの
設定などを細かく考える余裕もなく、とにかく形やパッケージを作ることに熱中したのです
が、今回は流れもわかったので、箱に書くキャラクター設定を考えるゆとりも少しあったかと
思います」。

日ごろ商業印刷で細かいパッケージ類やカタログ製作を手掛けていると、ふと、こんな
「この世にない妄想の商品」を実体化させて、脳内の設定を込めたフェイクプロダクツを
作ってみたくなるというのもあるんだろう。イルイルさんの本業とこのソフビTOYづくりというのは
脳内で相互にフィードバックしあっている存在なのかもしれない。

 



ラーメン博物館とか、レトロアミューズメント施設にこんなポスターがありそうなアーバン怪獣の
バックシート。こんな商品に隠れて見えないところにまでむやみなこだわりを見せるイルイルさん。



REAL×HEADの森かつら氏もイルイルさんのブースを訪問。ゲルツを感心しながら
手にとっておられました。

イルイルさん「実際にメーカーとして活動してみて、去年もこのスーフェスでの販売以降、
海外のショップさんやメディコムさんでの販売品なども間に作らせていただいたのですが、
いつも全力でやっていても、本当に時間がかかってしまいます」という。特にパッケージ
にもこれだけ全力を傾注するとなると凝り性なため、確かにそうなることだろう。

「今後はその1年ごとに出すアイテムを区切って行く感じで次に進み、今いろいろと考えている
アイデアを毎年ソフビ製品として発表していけるといいんですが」
年1ステージという感じですね。

きになるこれからの新イルイルアイテムの販売予定ですが、
3月下旬に大阪日本橋のジャングルさんの主催でソフビの物販イベントを実施する予定があり、
関東・関西のソフビメーカーさんに集結してもらう予定だそうです。
今回のスーフェス会場でもメーカーさんに声をかけており、イルイルさんも会場で参加を表明して
いました。今度はイルイルさんの地元での販売で、少しリラックスしたお客さんたちとのひとときを
過ごせるかもしれません。
このほかメディコムトイさんのほうからも昨年秋のネオゴリラと
トキオの販売のように限定品として今回の新製品が販売される機会が得られることになる
でしょうね。今回の盛り上がりを考えると当然ながら。

これだけ手が込んだ作りのアイテムとなるとなかなか増産が難しいでしょうが、
反響もあるだけに販売の機会を多くして、今回のプロダクツもソフビの好事家になるべく
行きわたり、それこそイルイルというソフビメーカーがレトロクラシックな存在となるまでに
長く愛好されるといいですね。


スーパーフェスティバル58その④

2012年01月11日 | イベントルポ

 

投稿規定写真枚数を超えちゃったので遅くなってすまなんだ。
スーフェス当日の雰囲気が少しでも伝わるといいかな~。てなわけで今度は
ソフビ以外のいろんな催事や映像関係の出展などご紹介。まずは朝売り風景。
寒そうでしょう。

マーミットさんは福袋販売に加えて ジャングルキングの出現に、朝売りのお客さんたちは
一同騒然。
一時はスタート前の売り場に囲みができて赤松社長へ
サクごしに「その猿はいったい、なんですか?」などと質問したりなどの風景も。
新春早朝の身を切る寒風さえも吹き飛ばすトイフリークたちから立ち上る怪気炎、
カオスなスーパーフェスティバル58の幕開けだ!

アートストームさんのタッコング。軟体生物の質感がいいですね。

あのお店はスーパーフライを無事発売。ソフビメーカーさんでも買っている方が居ましたYO。

 葛飾のご当地ヒーローもファイティングポーズを決めていました。

自分のお店のオーナーを絵柄にしたTシャツとか、Tシャツを初めてリリースした時の
うれしかった自分たちをTシャツにしたりとか、シュールなアパレルメーカー、STASCMさん。
名前は洋画でリメイクもされている某変形スーパーロボットアニメのキャラから来ています。

映画で突如一条寺烈が復活!てなわけでメガハウスさんからギャバンのアクションフィギュアも
再販。

海賊戦隊のおかげで東映関係の懐かしのスーパーメカもぞくぞくTOYで復活の機会が得られた。
昨年は戦隊者にとっては楽しい一年だったと思いマス。

おなじみ、レゴでスーパーメカを作る神業サークル、ギムレットさん(Hard Pop Cafeさんの
ブース)の新作は超時空世紀オーガスの汎用モラーバー・イシュキック、宇宙鉄人キョーダインの
グランカーとスカイジェットのGoGoジェット状態。

 

カエルや人体の解剖フイギュア。

自分の一番、おきにを探せ!
知人たちのイベントでの成果をご紹介。表情がとってもキュートなジャイアンツの当時物
マスコットドール。

これもショップやイベントでよくお会いする方の収穫。
値札よりも負けてもらったというボウリングをする女の子の人形。いいな~。
YODAさんも見かけて、気になってたそうです。



これはタコの収穫。ロボコップ・ジ・アニメイテッドに登場するオリジナルロボコップのTOY。
犯罪者と市民の見分けがつかない警察ロボED209と
ヤク中のボスの脳を移植したロボコップ2(ケインモンスター)を混ぜたような
ビジュアルがたまらん。LOOSEでもこういうのは持っていられるとうれしっ。

ケインみたいに頭部のカバーが開いて、テンパってるヒトが見えます。
「おもしろいから、ジ・アニメイテッドも機会があればぜったい見ろ!」と店主の外人さんに
言われました。実写TVシリーズもおもしろかったですものね。

ダイナミックコグマさんが大東亜圏から引き連れてきたあやしいおもちゃ。

 

今回の目玉のひとつはこの軍人さん「相棒」。地面といっしょに兵隊さんと軍用犬が
点滅、ミステリー走行して得体の知れない勇壮なBGMを掻きならしながら周囲を掃討して廻る。

マウント工房としてペイントし各社に用意した品も午後になって無事旅立っていったのを
見届けた努さん。
前のルポでお見せした、努さんのライブペイントが完成しましたのでご披露。

ウルトラマンA対超獣ベロクロン!
「昭和の頃の子ども向け読み物に描かれている図版のような雰囲気を目指した」とのこと。
Aの表情が男女が合体したヒーローとしてやや中性的に描かれているのも芸が細かいですね。

 さらに、今回は持ち前の電動スキルで内臓ギミックを徹底改造した日東ガッパを新たに
繰り出した努さん。
オリジナルのキットは歩くだけだった(初版は羽根が動いたらしいけどその後の生産
ではオミットされた、と努さんの説明)のを、羽根と腕が連動して動くように改造。迫力のある
前進パフォーマンスができるようになった。目もムギ球が仕込まれ、爛々と光るぞ!
お客さんたちが懐かしそうに見て、努さんに声をかけて改造ポイントなどを尋ねていました。
昭和ごろに生まれた怪獣ファンならリモコンでもゼンマイでも、一度は日東のプラモなら
組み立てたことがありますものネ。正月とか、よく親戚の家で作って遊んだなんて思い出も
あるのでは。

怪獣戦車も再登場。今回は努さん自身の筆で描かれたイラストも拝見させていただいた。
これはカッチョイイですね。

韮澤靖さん関係の出展、造形家とのコラボレーションマスク展示やサイン会もたくさんの
人だかりができました。このサインは小学生くらいの男の子に撮らせてもらったもの。
次世代のクリーチャーファンがまた生まれた瞬間かもしれません。