もう6月か~。5月前半、怒涛のイベントラッシュが終わってあっという間に
梅雨のシーズンですね。
マーミットさんから6月受注ソフビの新製品リリースをいただきました。
今月もセンスオブワンダーあふれる古典SFキャラクターあり、特撮番組のインパクト
満点なトラウマキャラクターあり、有名特撮怪獣のアニメイテッドキャラを3D化した
アイテム、そして宇宙からの奇怪な来訪者として人々の脳裏に浮かぶ
異星人のビジュアルアイコンになっているキャラクターと、あたかも立体版SF怪獣図鑑を
眺めているようなにぎやかなラインナップとなっています。ちょっと各製品を
見てみましょう。
ヒストリーモンスター ジェイムスン教授 税込み4500円、全高約15センチ。
SF小説の名手、ニール・R・ジョーンズが1930年代に有名なSF雑誌「アメイジング
ストーリーズ」で執筆した「ジェイムスン教授シリーズ」に登場する機械化人。
小ぶりだが12パーツ構成という凝った仕様。春のスーフェスでも少数が販売されましたが
SFファンからの反応もあり、受注製品としてさっそくの登板となったようです。
このキャラクター、最後の地球人であるジェイムスン教授が宇宙の放浪の旅を続ける中で
他星の知的生命体によって体をサイボーグ化されて新たな命を得て数々の宇宙での冒険を
繰り広げるというユニークな設定で知られています。
日本のSF界から見ると斯様な姿の主人公は、日本で本書が紹介された時はおそらく読者にとって
かなり異質だったと思います.しかしSFの母国ともいえるアメリカのSF文壇界では
身体が機械化され人間とは似つかない姿になって活躍するような設定は少なくないです。
この「ジェイムスン教授」はその始祖的存在とも言えるキャラクターです。
日本のコミックで有名作としては石ノ森章太郎氏の「サイボーグ009」に出てくる脳だけを
機体に埋め込まれた00ナンバーの蜘蛛型サイボーグや、サンガッツ本舗さんがソフビ化して
いる水木短編漫画の名キャラクター「ベーレンホイターの女」の設定もジェイムスン教授を
イマジネーションの源泉にしているのではないかと思われます。
鉄箱の中に脳を閉じ込めて体を擬態化するというイメージはこの後の多様なSF映画や特撮作品
等で見られるキャラクターモチーフのオリジンと言えるでしょう。
たとえば麻薬バイヤーのボスの脳をロボットに移植した「ロボコップ2」のロボコップ
2号ことケインモンスターなんかもそうだな。最近のアニメだと擬体が日常的に登場する
「甲殻機動隊」にも確かジェイムスンに似たようなキャラクターが出てきましたね。
とにかく枚挙にいとまがない、映像やコミック、文字世界を問わない、いろんな作家に
インパクトを与えたキャラと言えるでしょう。
そもそもこの教授のビジュアルは原作でも明示されており、四角い鉄箱状のボディと円錐
状の頭部、そして触手のようなマニュピレーターと、あらゆる読者は読み込めば容易に
文字から教授のこの特異なルックスを脳裏で組み立てることができると思います。
しかしやはり絵として見れるようイメージを形作ったのはハヤカワ文庫の表紙絵や口絵、
本文イラストを描いた藤子不二雄先生(まだ2人ペンネームで描いてたの頃の)でしょうね。
藤子先生(特にF)は本人もSFファンだったからな~。ハッ、そうだ タコが使ってるこの
ハンドルネーム、タコペッティ(モジャ公の登場人物より命名)も脳以外は全て擬体化して
宇宙の残酷ドキュメントを撮って廻ってるんでしたな。劇中で壊れた頭部を取り替えてた。
ジェイムスン教授がいなかったらモジャ公のタコペッティ氏も違うものになっていたのかも
しれぬ。やはりルーツ オヴ サイボーグ・ジェイムスン教授の存在感は恐るべし。
同時にこのアイテムは原型を担当した赤松社長にとって思い出深いキャラクターとなっている
ようです。SFビジュアル雑誌「宇宙船」の連載においてもかつて作例を製作しており、
立体化されたジェイムスンがグラビアに掲載された時に文字派の怪獣ファンは作例の
ジェイムスン教授をあたかも特撮映画に出てくるような存在として
イメージングできたのではないでしょうか。
今回のソフビ化では作中でも特徴的な全身のマニュピレーターを全て可動にして
製作したことなど見ても教授を決定版としてソフビ化したいということで
先月のトリフィドに続いて、赤松社長のモチベーションのほどがうかがえようというところ
ですね。同好の士への頒布も込めた自分の趣味性も入っているアイテムという点では
ガレージキットならぬガレージソフビといった位置づけになるでしょう。
いわばジェイムスン教授は平成の世にソフビの擬体を与えられて
再びコールドスリープを解かれ、地球に帰還し探索活動を開始した、というところ
でしょうか。
怪獣天国 バルタン星人・アニメ版(2期)税込み5250円、全高約23センチ
アニメ「ザ・ウルトラマン」登場の宇宙忍者。劇中に準じたオーソドックスなカラーリング。
「ザ・ウルトラマン」最初の実写版オリジナルからの起用敵キャラクター。しかし単独でなく
ミコノスという宇宙怪獣を連れていたり、メディアを使ってヒカリ隊員の正体=ウルトラマン
という事実を暴こうとしたりと実写ウルトラのバルタン星人一族とはまた異なるイメージを
持つ侵略者となっています。
「ザ」の後の「80」でブタ鼻になり、動物園作戦とかすっかりお茶目さんになってしまう
バルタンを思うと本作でのバルタンはまだまだシリアスです。
当時、ザ・ウルトラマンの怪獣ソフビはシーグラ、レッドスモーギ、ワニゴドンなどが
ポピーからリリースされていましたがこの中盤のバルタンなどまでは製品化
まで叶いませんでした。人気がもっと出てキグルミ製作面での制約の無いアニメならではの
異形ぞろいな中盤以降の怪獣たちも発売されていたらどうなっていたのでしょうか。消しゴム
怪獣はこのアニメバルタンはもちろん、2クール後半の山場、ウルトラの星編に出てくる
ジャニュール、ゲラド、ベラドンなどまでかなり頑張って製品化してくれていたのですが。
このバルタンもアニメならではのイメージで細身でデフォルメの入った姿を上手く製品化して
おり、バルタンアイテムの中でも異彩を放つ存在に位置づけられると思います。
やはりバルタンはアニメでも実写版でもウルトラマンの永遠のライバルということですね。
怪獣天国 ボビー(2期)税込み5250円、全高約23センチ
スペクトルマン登場の犬怪獣。ダークブラウンの成形色。「スペクトルマン」の中でも
人気のエピソード「ノーマン前後編」に登場する悲しき天才犬がミュータント化して暴れる
犬怪獣ボビー。最近トラウマ系、黒歴史系のエピソードから昭和の特撮作品に興味を持つ
新世代の特撮ファンも生まれているのですが、新マンの「怪獣使いと少年」あたりと双璧を
為すインパクトのエピソードですね、このノーマン編は。
高山良策さん製作によるキグルミはこの犬怪獣も劇中で看護婦を捕まえて頭部を食いちぎり
放り投げるある程度大人に成長した目で見てさえ、のけぞるような過激な描写があるくらい
凶暴さがむやみにアピールされているのですが、その表情の中にも高山さんならではの
愛嬌があり、このエピソードの最期、スペクトルスライスを喰らい犬の鳴き声を上げて倒れる
ボビーの最期を足元で看取った三吉の哀しみをドラマとしてより高めました。
当時マスダヤで発売していたスペクトルマン関係のソフビは本編より凶暴な表情をした
ダストマンが非常に印象的ですが、当時マスダヤのスペクトルマンソフビを手掛けていた
太田氏による原型がベースに使用されていることで昭和の当時感も受け継ぎ、
犬怪獣が当時出ていたらどうか?というソフビフリークの妄想に応えるべく製品されていると
言えます。
怪獣天国 ビオランテ成体 税込み6300円、全高約23センチ
映画「ゴジラvsビオランテ」登場。スタンダードサイズながら11パーツ構成という
デラックスなソフビ。
ビオランテというと公開前の「超ゴジラ」というキャッチフレーズが横に添えられた、
ゴジラの倍は余裕で有る大きな口でゴジラに襲いかかる、ビオランテの威容を初めて
ポスターで目にしたときの衝撃が思い出されます。従来のキグルミ怪獣に加えて当時
洋画のモンスターがクリーチャーへと呼び名を変えていた頃の「触手」「歯列が大量に
並んだ口」「ラテックス独特の被膜に覆われた粘液感」などをリアルタイムの
グローバルスタンダードなモンスターのイメージを
機敏にデザイン上での形質に取り込んでいたという点でもビオランテは今見ても十分
ハイセンスの怪獣であると思います。あれだけたくさんのNGデザインが生み出された
だけあって、無駄がないですね。たしか映画製作に実質3年かかったんだっけ。
そう、ビオランテは日本の怪獣映画の枠だけでは見えにくいのすが、
洋物のモンスターと並んでも決してひけをとらない存在感を放っています。
平成ゴジラと言うといろいろ好きな敵キャラクターは居ますが、その正体が人間(の女性)
でもあるという面も含めてビオランテの持つイメージの鮮烈さは忘れられないです。
実際植物として芦ノ湖の水辺に根を張って佇んでいたり、幽玄なイメージがミリキとして
今までの怪獣映画にないビジュアルを提供していましたしね。
科学の誤用がもたらす悲劇としては原爆投下後の戦後=ゴジラの放射能、高度成長期の
消費社会=ヘドラの公害、人間が神に近づく脅威=ビオランテの遺伝子工学やバイオ技術
というメタファーとして、ハイテク技術が徐々に社会でも一般的となりつつあった
平成ならではの「人間がどう生きるか?」という問題提起を体現している
怪獣となっていました。
今後ゴジラ映画が作られる時も、強く原発問題などを扱えとまでは望みませんが、
同時代の社会事象をうまく絡めてこの「vsビオランテ」の時のように
見終わってしんみりと、じっくり考えたくなるような新怪獣を生み出してほしいですね。
怪獣映画はどこまでもテーマがずしりと重たくココロにのしかかってきてもらいたいと思います。
同時代と言えば、本作はテーマ、コンセプトだけでなく大森一樹監督の当時若手俳優や
アイドルを使った青春映画などで磨かれた同時代の空気をよくスパイスした作風も
ゴジラファンだけでなく一般の観客が見ても楽しめる映画になっていたと思います。
映画館でも出し方の巧い斎藤由貴やデーモン小暮の登場はお客さんが喜んでいましたね。
ヒロインが、最後にゴジラの背中を浜辺から見送った後、主人公の男性に
ベッドのあるところで自分たちのこれからをゆっくり考えよう、なんて言ったりする作品は
昭和のゴジラ映画では絶対臨めなかったセンスでした。沢口靖子がラストの
ビオランテ散華のさい空から微笑んでいるイメージシーンも賛否あるのですが、
大衆的な娯楽映画としてはあのくらい大仰な「昭和映画的な」イメージシーンが
あってよかったと思うし。
ゴジラの生みの親、田中Pが試写会の後に大森監督に「よくやってくれた」と握手して言った
意味もわかる感じですね。
色々な意味で昭和から平成にかけて劇場映画が変容しつつある中、「都市の感受性」とか
トレンディドラマ的な要素を取り込み新しい遺伝子をツイストしている時期の試行錯誤感が
映画を今見ても華やかで面白くしています。タコは冒頭の新宿副都心の駅構内で展開する
自衛隊、米軍とサラジアのバイオメジャーによる三つ巴のG細胞争奪戦で
テクノミュージックアレンジのゴジラのマーチがかかる辺りとか
ゴジラ映画もここでリニューアルされたんだな~と今でもしみじみ思えて好きですね。
でも、思うに平成怪獣映画の復興は、バブル当時ならではのあだ花だったんでしょうかね。
逆に日本がハングリーな環境にある今でこそ新しい視点の怪獣映画が生みださせそうな
気がするんですが。
今回発売のビオランテのカラーは劇中で川北特技監督が現場即興で演出を追加したという、
映画をより面白くした「歩くビオランテ」のシーン、全身から煙と火花を
出して根を足のようにくねらせ地鳴りを立てながら前進するあのサプライズショットを
想起させます。
静かに湖畔に佇む花獣と最終形態で静と動を対比させ、後者のビオランテは特に
アクティブで熱い存在感を放っていましたね。実際、一度は完全にゴジラを追い詰めますし。
ミステリアスソフビ フラットウッズ・モンスター 税込み5250円、全高25センチ
1952年にアメリカのウエストバージニア州で目撃された有名な怪物。グリーンラメ成型。
すっかりおなじみの3Mの宇宙人。タコも普段ソフビ棚でなくSF映画のビデオDVD棚に
これと同じアイテムのスカート部が緑で顔が赤に塗られたヤツ(たぶん最後のトイフェス限定品
だったと記憶)を飾っていますが部屋の不思議感や妙さをステージアップ
させるインテリアとしてとてもいい感じです。SF映画でUFOマニアの研究家の家とかに
ひっそりと彼が置かれていそうでしょう。
そういえば、最近「調査当局のMIB風の男たちに捕まった小人宇宙人」と称され世界的に
たいへん有名な目撃写真が当時のタブロイド紙のスタッフが作ったものであることが
暴露されてしまいましたね。たしかドイツ発信だったか。
なんでも、かわいそうな発育不良児みたいな捕まった宇宙人は写真が生成された時期に
活躍していて全然売れなかった歌うローラースケートユニット(だったカナ?とにかく
アイドルグループ)のメンバーの一人なんだとか。メディアにも知られていないくらい知名度の
ないタレントだったのだろうか?こうなると今度はそのグループの活躍時の写真が
見たくなるってものですよね。しかしこうなると画像の元になった人間のほうが
未確認動物みたいな話になってたりしませんか。
とにかく、正直なところタコ的にはあの捕まった宇宙人の写真が嘘でも真実でも
どうでもよかった。
あの写真は地球に不時着した宇宙人の迎える運命というストーリーへの
想像力を強力に喚起するものだったのに。
いったい捕まった宇宙人はどうなったのか、どこかハンガー18みたいな軍の
重要拠点に連れこまれて解剖されたり標本にでもされて保存されているのか、とか
いろいろと妄想できて楽しかったじゃないですか。アダムスキーUFOしかり
ネッシーしかり雪男しかり、自分から愉しんで釣られたくなる過去のビジュアル素材が
昨今の情報化と当時の愉快犯たちの突然なカミングアウトによって、どんどん減って行くのは
残念な限りですね。。。
しかし人間、そういう告白をいつかはしたくなるというのがあるのかなあ、タブロイド紙に
ネタリークして小銭稼ぎしたいと言うのもあるのだろうけど、ここまで全世界に
知られていると、自分が有る程度年が経ったりした上で、総決算的というか解決編みたいな
感じで、つい真実を種明かしもしたくなる時が来るというものなんだろうか。
しかしこの3M ALIEN=フラットウッズモンスターのビジュアルアイコンは
こうしていろんなネット時代前と後でいろんな写真やビデオなどの物証が贋モノと
判明してさえもいまだに強烈なインパクトで見る者をひきよせるものがありますね。思いだすと
鴨川つばめ先生(最近どうしているかというと肉体労働をして生計を立てている説あり)
の「マカロニほうれん荘」では目撃談と同じで宙をういてそうじ君やキンドーさんを
追っかけていたけど、鴨川先生のフラットウッズの移動に関する描き方もリアルだったな。
このフラットウッズもたとえ創作であったといつか誰かに明かされたとしても、
アジアオリエンタルな仏像的なイメージを宇宙人のデザインに
取り込んだりと、宇宙人イコールブッダとでもいわんかのような当時としては
たぐいまれな連想力に富んでいる。創作者の仕事ぶりはいわば名も知れぬ
パチ怪獣造形職人の作業に近い。
戦慄すべき異形に神々しさも加味した得もいえないミリキを漂わせた
フラットウッズモンスター。その背後に居た名も知れぬ創作者にあたる人物の
ビジュアルセンスと娯楽供給力は、宇宙人の神秘性を一瞥したビジュアルのみで
大衆に強く印象付け、著名な映像モンスタークリエイターである成田亨氏や
H・R・ギーガーにまさるとも劣らない、ハイスキルなものであることはおそらく
これからも未来永劫不変であると思われます。
【ゴジラvsビオランテ Godzilla 1989/すぎやまこういち】
http://www.youtube.com/watch?v=W5Vm8bErkXg
【ビオランテ&レクイエム/すぎやまこういち】
http://www.youtube.com/watch?v=88_mhsGcWXQ&feature=related