変なものを集めはじめるとその趣味の偏向性のみが先鋭化してしまいにはその偏向さえ
目的化するのが収集という因果な行為の根源にあるのかもしれない。
世間いわくそれはキワモノ好み、という。
そんなわけで世間のトレンド等から逸脱してても自分の中で愛着がわいて仕方ない、ヘンな
怪獣おもちゃも紹介してみる。今回はソフビブログじゃなくてポリブログです。
前回の「昭和の奇獣」シリーズで扱ったミウラの「ビーチバッグの怪獣」記事で出演した
コとは違う、新たにいわき市ハワイアンセンターから疎開してきた娘さんに出演いただいて
タコブログにまたまた華を添えてもらいます。
トトントコトントコトントコトントコトントコ♪
もしかしたら炭鉱町に出回っていたポリかもしれないから
炭鉱の街が閉鎖となり、観光名所に転じたハワイアンセンターの娘さんに魂を入れてもらうには
相応しいところでしょう。映画「フラガール」好きなんですよ。物語のところどころに古臭い
炭鉱の町並みが出てくると、もしかして・この町に一軒しかないおもちゃ屋にパチ怪獣のソフビとか
売ってるんじゃないかとか想像したり。
(当たり前の話ですがそんなのタコが勝手に妄想してるだけで全く映画の中で描いてないです)
今回紹介したいのはMKK/マルト(◎の中にトの文字が入ってるロゴ)という名前の
聞き慣れないメーカー製による、よくわからない怪獣(のようなもの)の姿をしたポリ玩具。
右のグリーンの一体は、目に入ったあるヒトはガラモンに似てるといい、
またあるヒトはラゴンに似ているという。
パチモン三傑の一人、唐沢なをきさんの「パチモン大王」でも何回か前にこの2匹は
とりあげられているから御存じのヒトもいるんじゃないカナ?
自分は去年これをたまたま古道具やに入荷した雑多なジャンクのようなおもちゃの中から
見つけて購入。わけのわからなさに気に入りずっと飾っておりました。
普通これが目に入って、まず思うのは「ナンジャコリャ?」だ・(ただし、普通の市民生活を
している一般人の目には入らない)いったいぜんたい、
こいつらの正体はなんなんだろう。とにかく見まがうことなく彼らこそが「昭和の奇獣」だっ!
バック。ポリ玩具独特の射出成型による奇怪なブツブツモールドが全身を覆う。
先に想像される用途を書くけど、底の部分に車輪がついているので、たぶんこれは赤子の
ような子どもさんの横で親御さんがたたみの上なんかで車輪でガラガラ左右に走らせて
子どもをあやすときなんかに使う人形なのではないだろうか?
たぶん枕元の子どもさんは無邪気にキャッキヤッとはしゃいで喜ぶ、という流れ。。。のハズ
なんだろうけどこんな奇怪なおもちゃで果たしてお子さんをあやす効果になったんだか
どうかって気はします。むしろ枕元にこんなものを置いといたら
幼児期にトラウマを植え付けるんじゃないの?トラウマなんて言葉が普及してない昭和の
時代だからまぁ大丈夫か。
横から見てもほとんど置き物なので、その後物ごころついた子どもさんはこのおもちゃで遊ぶかと
いうかとほとんど厳しい話です。乳児から2歳くらいまでの間しか稼働できない気もします。
しかし、コペルニクス的展開とでも申しましょうか。普通のものに見慣れた大きいおともだちで
さらにへんなモノ好きなヒトが何十年も立ってひきつけを起こすじゃない、惹き付けられるという
不思議な商品。ポリ独特の安っぽさ、古臭い雰囲気もたまりません。
思うにマルサンのガラモンやラゴンの手踊りを見て「怪獣をやるんじゃ(マルトの社長)」
便乗した商品(のつもりだった)なんではないでしょうか。
雰囲気が横に広がっている辺り、ちょっと手踊りっぽいでしょう。
唐沢さんの「パチモン大王」でも東南アジアの仏像みたいだ、と書かれておられましたが、
言い得て妙で、怪獣というよりは確かに原始仏教の関係で作られたインドの彫り物みたいですネ。
仏壇に置くとぴったりな感じ。この原型師さんオリジナルの造形テイストなんでしょうね。
それとも仏壇仏具関係の仕事もしている方だったりしないか。頭頂部に丸い飾りのような
ものも付いてますし。マルトのスタッフさん(社長兼スタッフみたいな感じでしょう)が原型師
さんに「今、人気の怪獣みたいなのを作るんじゃ」と言って、これが納品されてきても「怪獣頼んだ
のになんだこりゃ?仏像作ってきやがった!」とか言ったりしなかったんでしょうか。
右のゴジラブルーの奴も媒図かずお先生の「猫目小僧」の漫画版に出てくる妖怪みたいですね。
怪獣方面のヒトで彼らを見たことのあるヒトはこやつの方が好きって方が多いみたいです。グリーンの方のガラモンみたいなやつは怪獣ともいえないし、にやにや笑いを浮かべてるし、
得もいえないものですからね。このポリトイは掲載した2体以外はみたことないので、
マルト社はこの2匹で幼児向け玩具マーケットに怪獣モチーフの商品を投入したとばかりに
勝負をかけたのかもしれません。
実はグリーンのほうは未開封ヘッダーつきと開封の2個持ってます。
「ポリトイ」っていうのが製品名。
横に書いてある子どもと犬(のような生物)の絵がものすごく古臭くて、下手すると昭和
40年代当初くらいではないかと思うんですが、すでに当時でさえもこれは古い感じのする
絵柄だったんじゃないでしょうか。戦後すぐのオキュパイドジャパンのおもちゃにある子どもの顔
みたいですよね。
きっとテレビで大人気の怪獣というネタを扱うにしても
マルトという会社の土壌はもっと古い時代のセルロイドおもちゃとかの時代の空気で
怪獣を作ってしまい、また原型職人さんも古い感覚で作ったことでリアルタイム時代よりさらに
製品テイストにズレが発生して何十年もたってから、モノ好きな人たち(ただし推定10人
くらい)相手にミラクルが発生したのが、このポリトイ2体なのではないでしょうか。
なんにせよ、怪獣から逸脱したよくわからない何かになっているのがポイントですが、
ヘッダーを見ても送り手のマルトが元々、怪獣を作るつもりで作ったかもわからないのが
ポイントです。昭和頃はほんとうにターゲットもわからないような商品が斯様に出来て
流通していたわけで、マーケティングやら原価計算やらでガチガチに固めて
洗練こそがデフォルトとなり、失敗の許されない現代では、よもや考えられないことです。
ソフビで実例を考えても、一見商品以前のジャンクのようでありながら
ちょっと視線をずらすとそこには現在の誰もが到達しえない境地に達した
異能のソフビとしての評価をもってマニアのココロをわしづかみにしてしまった
IKBの公害怪獣スモゴン、ヘドラシリーズも同じような話で、
洗練とか商品としての体裁をお客へのアピールポイントとは
ほとんど真逆な方向に超越してしまった商品が頻出しえたのはこの
昭和40年代ならでは。時代の「怪獣」というキーワードを作り手の妄想力が
制御しえなかった混沌の時代ならではの所作であると。
そして幼児の枕元にたたずむ遊具の怪獣には、われわれがいつか幼児期に見たような
既視感もある。
そう、幼児が怪獣という存在を、きちんと一体一体のカタチを把握する以前に
知覚しプリミティブな図像で脳内にインプットした時の姿を立体として出力すると
意外とこんなカタチをしているのかもしれない。