宮本輝 著。
「螢川/泥の河」に続いての宮本作品。
ある事件が起きたことにより別れた夫婦が
その10年後に紅葉に染まる蔵王で偶然出会い、
それがきっかけでお互いの10年間を綴っていく・・・
『前略、蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で
まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした。』
で始まるこの作品は、
全編に渡り手紙のやりとりだけで語られていく形式。
ぐいぐいと引き込まれ あっという間に読み終えました。
言葉が本当に美しい。
真情を激しく吐露する場面でも 限りなく言葉が美しくて感動しました。
人の生死、過去と現在、未来への不安、そして再生・・・
境遇は全く違うんだけど 今の自分と気持ちの持っていきようが重なる部分があり
「あなたも生きなさい、進みなさい」って言われてるようで最後は涙が止まらず・・・
生ある以上、悲しかろうと辛かろうとその人の人生は決して止まることなく続いていくのですよね。
モーツァルトを聞きながらもう一度読み返したくなる本でした。