Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

おー君の思い出その6

2016-09-09 20:12:52 | 日記

 私達はまた元の関係に戻って、仲よくお互いの家を行き来して遊んだものです。

少し違っていたのは、おー君が机に向かって何かしながら話すことが多くなったこと、時には忙しいからと遊びを断られることがあるようになったという事でした。

それでもよく喋り、もっぱらこの時期は私もおー君onlyの交友関係でした。

 「おーには行きたい所がある。

ある日遊びに行くと、おー君は留守だと断られたのですが、彼のお母さんが私を見てこう言いました。

おーの行きたい所と、Junちゃんの行きたい所は時折重なる、というのです。何処でしょう?私には分かりませんでした。

私はおー君と出会う前、一時、家に居ても園に来ても話の合う人がいないので1人孤独感を強めていました。楽しく思える事が無く、明日にしよう、明後日にしようと思う事が何度かあり、その都度それは保護になり取り止めになって来ました。

 先日久しぶりにその感情に襲われたわけです。もしかすると、と思います。おー君の行きたい私と同じ場所って、いいえ、何時もにこにこ楽しそうなおー君が、以前の私と同じ考えを持ったりするだろうか?そう思うと私の答えは否となるのでした。

  それでも、と私は自分の疑問をおー君にぶつけてみるのでした。おー君の行きたい所って何処?と。

おー君は何時ものようににこにこ笑うと、自分の行きたい所はお母さんの所だと言うのでした。

やはりそうか、そうだよね、私はほっとするのでした。

 私みたいなことを考える子供ってそうはいないと私は思っていました。まだ人生は始まったばかりです。

いろんな事を見て考えて、行きつ戻りつする思考の中で、私達の成長は着実に進んでいました。

私はおー君のとの間にあんな事があってから、やはり自分の感情というものに無防備ではいられなくなりました。

ある程度何があってもショックを真面に受けないように、物事に熱中する、傾倒する気持ちに緩みを付けて置くようになりました。

そうなの、というような感情です。以前のように一本気でいる事をやめたのです。

 いつしか、夕焼けにもそう興味を魅かれ無くなった頃、2人で何時ものように並んでお喋り、おー君の家に行く途中での事でした。

   


半々ですね

2016-09-09 20:06:56 | 日記

 占いは信じたり信じなかったりと半々です。

良い事は信じたい、悪い事は信じないけど注意しようとか、

良い事は信じ、悪い事は信じないという人とは逆のような感じです。

 信じていないと言いながら、占い欄があると読んでしまいます。

好奇心が旺盛なのかもしれません。


おー君の思い出その5

2016-09-09 00:28:59 | 日記

 声がするまで、傍に人が来ている事に私は全く気付きませんでした。

しかも、それがおー君だなんて。予想もしていなかった出来事に一瞬ポカンとしたものです。

でも、顔を上げておー君の顔を確認する気にはなりませんでした。

 私はしゃがみこんで目の前の赤い花だけを見つめていました。

綺麗な花だね、綺麗な赤い色だね、おー君は言葉を続けます。が、私は今更と思います。

今更私のご機嫌をとるように、いつもの調子で話を合わせてもらわなくてもよいと思うのです。もう騙されないわと。

そう、さっきの冷たい態度がこのおー君の真の姿なのだ。決して言葉に惑わされてはいけない、おー君の言葉なんか無視するのだ。と思うのです。

 おー君は言葉を続けていましたが、私が全く無視して相手をしないので、話題は様々に変わって行きました。

今に自分よりもっと良い人が現れるから、人生まだまだきっと良いことがあるから、もう君には素敵な人がいるとか。分かったような分からないような話を続けていました。

 私は黙っていました。でも、話だけは無視せずに聞いていました。私には大半が分からない未来に向けての話でした。

彼の言うところの現在私にいる素敵な人など想像もつかない事でした。

この話になると益々訳が分からなくなり、つい混乱しておー君に誰の事か、訳の分からないことを言うのねと、怒りをぶつけ、私にそんな素敵な人などいないわと、きっと睨んでしまいました。

睨んだ先にいたのは紛れも無くお―君自身でした。そして顔にいつもの笑顔を湛えて居ました。

その後おー君は私の説得を諦めたようで、暫し言葉が途切れました。

私はおー君に早く彼の家に帰って、この場から消えてもらいたいと思っていました。

 そっと見上げると、おー君は私達が来た方向、何時も夕焼けを見る方向を向いて立つと私に背を向けていました。

私にはおー君の表情が分かりませんでした。

私は彼がどんな顔をしているのか気になりました。やっぱり笑っているんだろうか。

どうもそうは思えないのでした。彼の背中が泣いているように感じられて、私は悪いことをしたような気がしましたが、さっきの事を思うと相子のようなものと黙っていました。

 気配で分かったのでしょう、彼は背後の私の視線に気付くとしゃんと背筋を伸ばしました。私は負けまいと視線を元のプランターに戻しました。

 やはりまた彼の話が始まりました。そしてこれが最後という風に

「綺麗な夕焼けだね、今日の夕焼けは特に素敵だ、とても素晴らしい夕焼けだよ。

というのです。

 私は、その夕焼けが見たくなりました。

当時の私は夕焼けの美しさ程この世で美しいものは無いと感じていました。

地球上で、夕焼けが見られる夕方という時間、綺麗な夕焼けを見る事ができる瞬間、この場所、この位置を特別な物と思っていました。夕焼けは私が恋焦がれるものであり、私の成れない物でした。

 『最後に綺麗な夕焼けを見てもいいな。』

そんな気持ちが湧きました。夕焼けに比べればおー君の事は度外視です。

私は意を決して立ち上がると、おー君の背中越しにその日の夕焼けを見ました。

 赤い色が、赤い色の光彩が美しく水色の空に映えていました。見る内にオレンジ色におー君も染まりだしました。

いつしか私はおー君と並んで夕焼けを見つめていました。

おー君の背中が邪魔で綺麗な夕焼けを鑑賞できなかったからです。

その位置は何時もの2人の夕焼けの鑑賞位置だったかどうかなんて私にはどうでもよく、唯々素晴らしいという一言に尽きるその日の夕焼けを、私は放心状態で見つめていました。

その日の夕焼けは心も染まりそうに美しく金色にさえ輝いて見えました。

「美しい夕焼けだね、今日の夕焼けは本当に素晴らしいね。」

おー君の言葉の通り、それは本当に素晴らしいものでした。

『あの夕焼けは確かに素晴らしい。』

そう思うと、もう1度おー君を信じてみようかなと、私は思うのでした。