Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダンスは愉し 9

2019-01-31 09:57:13 | 日記

 鈴舞さんはこの後、学校でフォークダンスに出会い、中学生になると踊る事に楽しみを覚えた、というのは最初に書いた通りです。これからはその後の展開です。

 学生時代になると、彼女は文化サークルに入りました。ダンスのサークルではありません。普通に読書活動のサークルでした。彼女は読書が大好きだったのです。ところが、週1度サークル員が集まって行われる読書会が、彼女にとって彼女が思った程には愉しくないのでした。それも道理かもしれません。何しろ、回りはもう皆、成人前後の年代です、個々人の人格、価値観がある程度出来上がり、彼女にとって納得できない感想なども折々出てくるのでした。

 高校時代までとは違い、監督の先生という、学校という大きな後ろ盾を持ち、絶大な主導権を握る人物はい無くなり、サークル活動はサークル員のみで散漫でした。サークルには部員が多くいればよいという感じであり、新しいサークル員の勧誘迄は酷く熱心な先輩達でしたが、いざ勧められてサークルに入ってみると、自分こそが主導権を握りたい、または交際相手を見つけたい、という悲喜こもごもの先輩達の覇権争いを多々目にするようになりました。この為彼女はサークルへの参加意欲が段々と薄れ、到頭、本を読んでの感想を持つ事さえどうでもよいという感じになって仕舞いました。

 もう辞めようかな、そんな事を彼女が考えている時に、年に1度の卒業に向けての予餞会が巡って来ました。彼女のサークルではこの時期、例年ダンスパーティーが企画されていました。新入生は皆大抵はダンスパーティーなど初めてでした。しかも、フォークダンスでは無くソシアルダンス、社交ダンスの類のダンスパーティーでした。パートナーが必須となり、皆踊れるようにと、読書サークルでは事前に練習会が持たれました。

 大学には社交ダンスサークルが有りました。幸い読書とダンスの2つのサークルを掛け持ちしている先輩がいて、サークルの皆に指導してくれました。鈴舞さんもこの先輩に適当に相手を決めてもらい、パートナーと組んでダンスを習い始めました。皆初心者なので、簡単なジルバとかワルツの初歩的な動きだけでしたが、簡単な出だしの踊りだけに鈴舞さんもすぐに踊れるようになったのでした。


ダンスは愉し 8

2019-01-30 09:07:14 | 日記

 「桃子ちゃん、バレエ習ってたの?」

目を見開いて、半信半疑で問いかけて来る自分の従妹に、桃子さんはええそうよと事も事も無げにすまして答えました。

「すずちゃん、知らなかったの?」

言ってなかったっけ?と、彼女は普段の声音で従妹と喋り始めましたが、内心は満面の笑みでいました。

「もう、2年程習っているのよ。」

そう答えた彼女は、年下の従妹に大きく水を開けた気分でいました。何しろ、従妹と時を同じくして習ったピアノで、彼女は年下の鈴舞さんにきっちりと差を付けられた経験が有ったからでした。

『年が下といっても、うかうかと同じ習い事を一緒に初める物じゃないわね。』

その時彼女は肝に銘じたのでした。

   それで桃子さんは、次にバレエを習うという時になると、従妹にはこっそりと内緒にして習い始めたのでした。『2年程差を付けて置けば大丈夫。もう追いつかれることも無いだろう。』本来のお姉さんの様に従妹に大きな顔が出来るというものだ。彼女や、彼女の親である両親もそう考えていたのでした。

 が、事は桃子さんの考えたようには運びませんでした。鈴舞さんがこの彼女の考えを読み取ったのかどうかは分かりませんが、鈴舞さんは彼女に一向にバレエを習いたいと言って来ないのでした。

   確かに、鈴舞さんも初めて従姉がバレエの練習をしているのを見た日には、帰宅してすぐ母に習いたいとせがんだものです。が、母に、あんな高い習い事、と、姉さんから衣装や発表会等の諸経費が高くつくとあれこれ聞いている。と言われると、彼女はこれは無理だなと早々に悟り、それ以降は全くバレエに興味が湧いてこないのでした。

   又、お祭りの艶やかな晴れ着や、西洋人形のように豪華なドレスとは違う、バレエで使うチュチュの衣装にも一向に気持が向かないのでした。従姉の思惑は全く外れてしまいました。

   それでも彼女は年上らしく、優しくにこやかな笑顔を従妹に向けると、「習いたいならお母さんに言ってあげようか?」と水を向けてみたのですが、「ううん、いいの。バレエには興味が無いから。」そうあっさり鈴舞さんに答えられると、

「えっ!すずちゃん、バレエに興味が無いの⁉」

と、思わず呆気に取られて絶句してしまうのでした。

   姉妹のように連れ添って、従妹と仲良くバレエを習う。ひとりっ子だった桃子さんは、ここで夢に迄みていたお姉さん役を逃す事になり、ガックリと気落ちすると酷く落胆してしまいました。そんな桃子さんを見ていた周りの人間には、彼女の心中あまりあるものがあるくらいの落胆ぶりでした。


今日の思い出を振り返ってみる

2019-01-30 08:57:59 | 日記
 
傘の思い出2

 思春期が済んで青年期に入ると、思春期時代の友人達は地域的にも皆分散してしまい、暇な時に集うという其々に落ち着いた懐かしい顔ぶれのグループに変わりました。社会人になると尚更です。皆......
 

 昨日はお休みしてしまいました。高3の喧騒が過ぎると、学生時代は皆それぞれに落ち着いた感じでした。私もホッとした気持ちがしたものです。誰にでもある一過性の木の芽時だったのでしょう。自然な流れなのかもしれません。男女を問わず責められないものなのでしょうね。当時の友人、ご夫婦仲良くと願っています。


ダンスは愉し 7

2019-01-28 11:42:41 | 日記

 鈴舞さんが日舞の次に出会った踊りは、バレエでした。その前に、学校行事で民謡などの踊りを覚えたりしましたが、子供向けに簡略化されたもので本格的な踊りではありませんでした。が、鈴舞さんにとっては日本音楽独特の、哀調を帯びた陰音階、陽音階の曲と初歩的な出会いがありました。

 さて、西洋舞踏というべきバレエに、鈴舞さんが何処で出会ったかというとそれは従姉の家でした。ある日彼女が親戚の家へ遊びに行くと、彼女の従姉は1人で、今しもバレエの練習の真っ最中という場面でした。鈴舞さんの従姉は、彼女の家の廊下でコツコツと、トウシューズを履いて音高くステップの練習中だったのです。

 コツコツコツコツ…、何の音だろう?と、鈴舞さんが音の聞こえて来る従姉の家の廊下を覗くと、彼女の従姉で、2つほど歳上のお姉さんになる桃子さんが、ちゃんとレオタードという練習用のコスチュームを身に着けて、顔付も涼やかに取り澄ますと、真面目にステップを踏んでいる所でした。そしてクルクルと回転してポーズ。等しているのでした。

 鈴舞さんは目を丸くして驚きました。この時、もう鈴舞さんにはバレエという踊りについての知識が有り、テレビでも見た事が有りました。が、実際に彼女が目の当たりにするのはこれが初めての事でした。しかも、自分の最も身近な従姉が如何にも慣れた感じで堂に入った様に踊っているのです。

 『知らない間に…、こんな事になっていたなんて…、』と、彼女は自分の知らない間に洋風の洒落た踊りを習っていた従姉に、全く信じられないものを見たという思いで絶句するのでした。呆気にとられた鈴舞さんは、暫く従姉を見詰めたまま身動き出来ないでいました。その後、彼女は漸く、従姉のバレエの練習場になっている廊下へと足を踏み出しました。


タケノコの話

2019-01-28 11:23:54 | 日記

 アサガオに…の加賀千代所の句では無いですが、タケノコに軒下や縁側を譲った良寛さまのお話。子供のころ読んだ本に出て来ました。何だか私には印象深かったものです。

 ある時、縁側の床下にタケノコが芽を伸ばしてきて、それと気付いた良寛様は、タケノコが縁側の板に邪魔されて伸びられないのは可愛そうだと、縁側の板をはがしてやったそうです。

 その後タケノコはすくすくと伸びて、今度は軒にぶつかり、良寛さまは再び、タケノコが伸びられないのは可愛そうだと、軒を切ってやったそうです。タケノコは立派な竹になって良寛さまの家の軒で生えていたそうです。昔の人は風流というか、生き物に対して思いやりがあるというか、慈しみ深い物ですね。