Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

それぞれの立場

2016-09-20 17:44:10 | 日記

 私が2人の傍らに来ても、祖父のすぐ傍に立っても、祖父は全く私に気付いていませんでした。

彼との2人のやり取りに気を奪われていたようです。

かなり激高していたようでした。青筋が立つような顔色だったようです。

相手をほんの少年と思っていたおー君に、見事に言い返され、しかも落ち着いた静かな笑顔で一蹴されたのですから、二の句が継げなかったのでしょう。

私の言う事がわかったね、と、祖父は念を押すように繰り返すとやや放心状態のようでした。 

そこで私がすぐ横で咳払いしたので、漸く祖父は私に気付いたようでした。

 祖父はやや語調をやわらげて、じゃあ今度からは外かそっちの家で遊んでおくれ、孫を頼んだよ、とおー君に言うと、

何事もなかったように私を見て、仲よく遊んでおいでというのでした。

 おー君はにこやかに私を見ると、行こうというので、

私は彼にちょっと先に行っててくれと送り出し、祖父に対したのでした。

「お祖父ちゃん、今日は私の方がおー君を誘ったのよ、家で遊ぼうって。」

私は祖父に抗議をしたのでした。

 祖父はハッとしたように、私が何時から2人の話を聞いていたのか、何時、祖父の傍に来たのかと聞くのです。

お祖父ちゃんが目の黒い内はと言った時から聞き始めた、祖父の傍に来たのはおー君が言い返した後だと言うと、

祖父は特に驚くこともなく、静かに微笑んでいました。

年を取ると視野が狭くなるんです。祖父は自分の寄る年波を感じていたのでしょう。 

 祖父に何も言い返されないので、祖父がおー君に酷いことを言ったと反省しているのだ、と思った私は、

「おー君には許嫁がいるのよ、私が好きで遊びに行っているんだから、おー君に酷い事言わないでね。」

と祖父に畳みかけます。

これは私にすると、祖父に釘を刺したつもりで言ったのでした。

 今から思うと祖父はおー君の手腕に舌を巻いたことでしょう。孫がそこまで丸め込まれていたのですから。

私が3年の時におー君の仲良し彼女から言われた時と同じ感情でしょう。そこまで言わせるなんてと。

祖父は静かに微笑んだまま、分かったよと私に言うと、彼が待っているだろうから行っておいでと、送り出してくれたのでした。

 私が外に出て走り始めると、かなり先に行ったと思っていたおー君は、まだ家の傍にいました。

怒って帰ってしまったのではないかと私は思っていたので、これは意外でした。

彼は何時もと同じ笑顔でしたが、何時もより注意深く私の顔色を見ていました。

私はそれに気づくと、ごめんね、祖父が失礼な事を言って、と謝るのでした。

祖父には、おー君に許嫁がいる事、私の勝手で付き合っていると言っておいたからと再び謝りました。

そして、意を決して、おー君が傷ついたなら、残念だけどもう遊ぶのは止めてもらってもいいよと言うのでした。

 そして、私達2人はまたいつものようににこやかに話し始めながら、道を途中迄来たのですが、

やはりいつも通りにはいかなかったように思います。

彼は急に沈んで、やはり今日は帰ってくれと言い出し、私達は途中で分かれました。  

 祖父の言葉のせいかと私が問うと、いや、そうじゃない、急に用を思い出したからと彼は言っていましたが、

何時ものように私に笑顔を向けることもなく、顔をそ向けたまま言葉を言う彼に、明らかに異変を感じました。

 私が、じゃあ今日はさようならと別れてきた後振り返ると、

その後ろ姿は本当に、明らかに沈んでいたのでした。

泣いているのかしら、と私は思ったものです。

 


ある祖父の言葉

2016-09-20 17:15:17 | 日記

 それは、何時の事だったでしょうか、2年生の頃だったかもしれません。

何時ものように彼が遊ぼうとやって来ました。その日は私が誘ったのですが、玄関で僕の家で遊ぼうという彼の声がします。

私はうん、いいよ、おー君の家へ行くんだね、と、準備します。

準備を終えて出ていくと、祖父がおー君と膝を交えて、といった感じで間近で話していました。

玄関に立っているおー君、玄関に座りかなり身を寄せて正面から話をしている祖父。

そして、玄関に続く戸口から顔を出した私に、祖父のかなり真面目な声が聞こえました。

 「私の目の黒い内は、孫を中国人と結婚させたりしないからね。」

私はすぐにその言葉が、祖父が私とおー君の交際に反対している言葉だと分かりました。

戸口から覗きながら、出て行ったものかどうか躊躇しました。

さらに見聞きしていると、祖父はおー君に、私(祖父)の言葉が分かったねと念を押しているようでした。

 その時、おー君は私が見ていることに気づいたようでした。

彼は全く側面の祖父の体制とは違い、半身をこちらに向けていましたから私の動きが目に入ったのでしょう。

彼は祖父に顔を向けると、何やら祖父に反論したようでした。

黒い目もその内白くなるさとか、孫の方を抑えとくんだねとか、こっちは頼まれてるから付き合ってるのさとか、そんな言葉だったようです。

全く怒るとか、慌てるそぶりも無く、にこやかな表情で言い返したおー君を、私はその時つぶさに見ていました。

 私は意を決して2人の傍へ歩み始めました。


小さくなる風景

2016-09-20 16:38:55 | 日記

 当たり前のように出かけて行って、当たり前のように時間を過ごして、当たり前のように帰ってくる。

何時までもそういう訳にもいかないのに、と、いう事で、私の祖父やかー君のご両親の言動になったと思われます。

私ももう4年生、言われてみるとなる程と気付きます。

段々と行かない方向で検討を始めます。行き成り切ってはいけないと思っていました。

 それにはやはりおー君が関係してきます。

4年生になって、ある日何処で誘われたか覚えていませんが、家に誘いに来たのかもしれません。行かないつもりでしたが、それなりにその頃は気持ちもほぐれ、何時も人にはにこやかなかー君の影響もあって、当たり障りなく誘いを断らずに出かけてみることにしました。

多分、母から、昔は仲良しだったのに最近ちっとも遊んでないのね、たまには行っておいでとでも言われたのかもしれません。多分それが決定打ですね。

気乗りしなかったのですが、一応顔はにこやかに、出掛けていくと、何時ものおー君家へ行くコースがとられました。

過ぎ去ったある日のいつものように、2人で電車の通る道を歩き、坂を横切り、小道に入ります。

 私は辺りをきょろきょろと眺めます。

懐かしい気もします。私は昨年よりまた一段と身長が伸びて、風景を小さく感じます。 

 問題の内緒にしてねと、地方の話の場所に差し掛かりました。

少し先を歩いていたおー君が振り返って、ポそりと、

「急に切られる人の気持ちも考えてよ。

と言ったと思います。

 私は、おー君に同情するべきだったでしょうか、少し気持ちがほんの20パーセントほど傾きました。

が、頑張って自分の傷心の事を思い出しました。

彼は私を少しも傷つける事がなかったかしら?私の答えは否でした。

 確かに、過去に彼も私の事で傷つく事があった。

それを私は知っていました。そして、その事を私が知っている事を彼も知っていました。

 

 

 


気が付いてみると

2016-09-20 15:47:10 | 日記

 でも、嬉し思い出もありました。

かー君の家に行き始めてからどの位い経った頃でしょうか、有る明るい午後、私は学習中のかー君の背中をまじまじと眺めていました。

私は何時もは彼の学習が終わるまで座卓の上で本など黙読しているのですが、本に読み飽きたのか持しれません。

ふと余暇を持て余す時間ができて、多分、ここへ来てこう過ごす事になった過程などをぼんやり回想していたのでしょう。

1年くらい経ってみると、当初おー君に対して腹立たしく思っていた感情が、実は自分にとってかなりの傷心であった事に気付きます。

 そうか、あの頃自分では気付かなかったけれど、私の心はかなり傷ついていていたんだなぁと思いやります。

それが、こうやって過去を振り返る余裕ができたという事は、今はもう全くおー君の事は気にならず立ち直ったという事なんだなぁと、何だか感慨深く、自分で自分のごく短期間の人生を波瀾万丈と回顧するのでした。

 私は念のため、おー君の楽しかった思い出を思い浮かべてみます。

次に、あの夕焼けの日の事、何度かの私からのプロポーズの事、彼が許嫁の話を明かした時の事など、苦笑いしてしまいます。

そして、ごく近い思い出、彼と彼女が並んで楽しそうに歩いている姿を思い浮かべ、彼女が私に向かってきて言った姿、言葉を思い浮かべてみます。

『私からおー君取らないで。』

そんな思い出が明るい部屋に走馬灯のように浮かび、そして、それが、私にとっては過去の事だなと思い、なんだー、と、思うのです。

特に何とも思わないと思うと、走馬灯は消えて、目の前にかー君の背中が映ります。

 思えば、せっせと学習中なのに、彼に誘われた時はともかく、勝手にやって来る時もある、今こうやって居る私の存在はやはり彼には邪魔なものだろうな、それなのに、何時も嫌ともいわず、嫌な顔もせずにこうやって寄せてくれる。

そのおかげでいつの間にかおー君の事は過去の事になってしまった。

気付いてみると私は傷心から、過去を何とも思わない今の状態にまで回復できたのだ。

改めて、何だかかー君の背中に尊敬の念が湧いてきます。

『かー君、ありがとう。

そんな事を彼の背中に向けて、私は心の中で言うのでした。