Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華4 56

2022-09-22 14:40:06 | 日記

 「おい。」

私の背後から声がした。やや怒った様な声だった。

「お前何処へ行くつもりだ。」

父が私に声を掛けて来た。私が振り返ると、父は私に不愉快そうな視線を送って来た。

「そんな所へ何しに行くんだ。」

何って、私は思った。家の中に、こんな奥まで知らない人が来て、お父さんは自分の家の事が気にならないのかしら?。そこで私は父に答えた。

「変な人が家の中にいるみたいだから、何をしているのか見に行くんじゃないか。」

すると父は何故かホッとした様に微笑した。この父の表情の変化は私には不思議な出来事だった。そこで私は父の心情について考え出した。

 『お父さんは私の事を怒っていた。』

それは確かだ。怖い顔で睨んでいた。では、お父さんは私の何を怒っていたんだろう?。私にすると特に変な事をしたという気持ちは無かった。寧ろ父は私の事を自慢して良いと思う。私は勇気を持って勇ましく我が家の不審に当たろうとしていたのだから。

『勇ましい子供がお父さんは嫌なんだろうか?。』

否、そんな訳が無い。私は思った。親として、勇気ある子は親の自慢の子じゃ無いか。桃太郎や金太郎をみろ、皆立派な英雄だ、お話として語り継がれている。父は、お前も大きくなったらこの様な立派な大人に成れと、事有る毎によく彼の口にしていた。何事にも勇気を持って臨む、勇ましく。それの何処が悪いのだろう?。否、それは悪く無いのだ。私は思った。では、何が?、私は再考した。

 不審者が気になり家を探りに行く。それまでは良しとした。私はつい直近の記憶を甦らせた。私は父の横を抜け、父より先に家に行こうとした。父より先に家の中を覗こうとしていた。勇ましく父より先にだ。父より先だったのだ。父より…。言葉の繰り返しに、私の脳裏にピン!と閃光が走った。先に行こうとしたのが良く無かったのだ。ここに至って私は思い当たった。私は遊び仲間との競争で、速度において優劣が付き、自分が負けた時の劣等感に思い至った。

『お父さんも負けるのが嫌なんだ。』

私は私の父が、私に追い抜かれ、自分が遅くなったという事に腹を立てたのだ、と合点した。『そうかそれでか、父は臍を曲げたのだ。大人でもそうなのか。』と、私は内心苦笑した。


うの華4 55

2022-09-20 13:05:53 | 日記

 私は思った。幾ら客といっても、家の奥の奥に当たるこんな裏口に迄遣って来るなんて、妙な客だな。と。それで家内にいる声の人物達に不審感を持った。又、家内にいる筈の自分の家族、祖父母の身を案じた。そうして母の事も、私には少しは気に掛かった。

 年寄りの祖父母はか弱く、今いる侵入者に対して力負けしたとしても、若い母はもう少し抵抗出来たのではないか。家の奥に迄侵入者を許すなんて…、と、私は家族では若い身の母の事を不甲斐無く感じた。それが自分の女親と思うと尚更に口惜しく思えた。

 すると、ポソポソと小声で話すらしい声が家から聞こえて来た。彼等は何の話をしているのだろう?。興味を持った私は彼等の話に自分の耳を傾けた。彼等の話がよく聞こえるには、と、私は家に近付く事を考え、裏口に向けて自分の歩を踏み出そうとした。

 すると、私の前方にいた父が、そんな私の気配を感じたらしい、何をするのだと言わんばかりに私を振り返った。彼はじいっと私の顔色を覗き込ん出来た。私もそんな父の顔色をじいっと見上げた。父は彼の目元に近い頬を暗く赤い色に染めていた。そうして至って真面目腐った顔付きをしていた。私はこんな顔付きの父にかつて心当たりが無かった。父は何を考えているのだろうか?、と不思議に思った。思わず歩を止めた私は、父からの言葉を待った。

 さて、暫く私が同じ場所で控えていても、父からは私に何の言葉も掛けられる事が無かった。その後、漸く父が顔の向きを変え私から視線を外した。進むかどうか、私は考えた。その末、やはり家内にいる不審な人物について探ろう、と私は内心決定した。そこで父の様子を見ると、彼は裏庭に佇んだ儘だ。微動だにする気配も無い。

 私はそんな父の静寂を、自分達の家への侵入者に対しての無防備、無抵抗というその静止状態を、今は若干不思議に感じていた。勇気の2文字を私は頭に浮かべた。漢字を知っていたならばだが。

 では、と。そんな父に代わり私が、と、私はフン!とばかりに、家の奥への侵入者の正体を見極めようと奮起した。ドンと裏口へと力強く足を踏み出した。私はウンウンとその儘数歩進んだ。

 「あの子や無いですか?。」「ああ、多分…」あれにそんな雄が有るかい。と、屋内から聞こえて来た細々とした声は、私の耳に、一瞬私の祖父母の声に聞こえない事もなかった。が、立ち止まった私が耳を澄ますと、聞こえて来た「どちらさんやら」、「威勢のいいなぁ」、と言うハッキリとした声は、私にとってはやはり未知の客人としての声音に相違無かった。

 


うの華4 54

2022-09-20 12:37:29 | 日記

 あれの事で思い煩うのはお止め。夫はパシっとした声で妻に命じた。この声に妻は言葉も無く夫を見詰めた。彼女は何か言いたくてモゴモゴと口を動かした。が、彼女の口から何かしらの言葉は出てこず、頭にさえ、どんな考えもさっぱり浮かんでは来なかった。

『今日は如何してこんなにも頭が働かないものか?。』

彼女自身、自ら不思議に思った。

 「本当に嫌な奴だ。人の嫌気の壺を心得ているとしか思えない。」

彼は言った。

「あの言葉を聞くとね、私はカッと頭に血が昇って来てね、目の前さえ赤く見える位なんだよ。」

神経を逆撫でされる様な気持ちとは、この事なんだね。正にそう言う気持ちになっているんだよ、私は。

この時夫は普段と語調を変えていた。彼が商売等で各地に出歩く時の、如何にも他所行きの声音と口調であった。

 彼の妻は思った。夫は彼等の孫の智に、彼等の事情の仔細を悟られたくないのだと。そこで、彼女も夫のお供で仕事に出かけた時の、如何にも取り澄ました感じの奥方の余所余所しい声音に変えると、自分の夫に応じた。

「それは如何言う時で、どんな言葉ですか。」

こう問い掛けると、私にも教えて下さい、と尋ねた。「まぁ、お前さんもやる気になったのかい。」夫は言った。ええと妻は釈然とした声で答えた。

 『聞きなれない声だ。』

私は思った。家の勝手口の奥から、大人の男女の話す声が聞こえて来る。『内に誰かお客さんが来ている様子だ。知らない人だな。』。私はその聞き慣れず変哲も無い男女の話し声に、商売で家に来た男女の客だろうと思った。家の親戚では無い様だ、そう考えると、人の内の家の奥までやって来て、一体何を話しているのだろうか?、とか。何かしら誰かの事を批判しているらしい、誰の事を評しているのだろうか?と訝った。


敬老の日

2022-09-20 07:48:17 | 日記

 今年の敬老の日は、母にフラワーバスケットを送りました。16日にはもう届いた様です。年寄りの目には色が濃いめに映る、暗い色に映る様だ。と以前聞いた、お花屋さんのアドバイスを受けて、明るく薄い色目の花材の物を選びました。喜んでくれるといいのですが。

 さて、母ももう高齢です。食べられる物も限られて来ました。食品は安易に送れないと思うと、あとは衣類か小物等ですが、今年は花だけにしました。夏にはアイスクリームが喜ばれた様子でしたが、又アイスクリームを送って良いかどうか、母の食事ペースが分からないので、アイスクリーム店のウインドウも眺めていたのですが、今回はアイスクリームは取り止めにしました。

 他にも、母への敬老の日プレゼントが届いていると、大変ありがたいです。