Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダリアの花、195

2017-05-31 09:55:50 | 日記

 「折角私が慰めてあげたのに。あの子、誰かのせいで怪我したって言うから、可哀そうにと思ったのに。

何も言わないで行っちゃうなんて、何だか本とに変な子ね、あんな態度だから誰かに叩かれるなんて言う不幸な目に遭うんだわ。」

 そう言って、蛍さん自身、内心むかむかしていると、彼女の背後からお医者様の声が掛かりました。

 「じゃあ椅子に座って、今度は君の番だからね。」

振り返るとお医者様もムッとした感じで彼女を眺めていました。

「どっちもどっちだったんだね。」

椅子に座った彼女にお医者様がそんな事を呟いています。蛍さんは何の事だろうと考えてみました。

 私は誰かに叩かれるというような、自分の不注意で怪我した訳じゃない、他人のせいで怪我をするような不幸な子に、

優しくにこやかにしてあげたわ。しかも見ず知らずの子でも親切に慰めてあげたのに。

何方かと言うと、ありがとうのお礼の言葉もなしに、不機嫌な態度で、しかも私にわざわざぶつかって駆け去って行ったあの子の行儀の悪さ、乱暴さ、

それを思うと、向こうの方に落ち度があっても、自分の方に落ち度はないと、蛍さんは憮然とするのでした。

 「君も悪いんだよ。折角彼は謝ろうとしていたのに。」

思いも掛けないお医者様の言葉に、訳の分からない蛍さんは思わず先生に尋ねるのでした。

「謝る?彼って?あの男の子の事?」

そう聞いた蛍さんに、先生はにやにやして、

「いや、まだ彼と言うには早かったのかな?」

等とにやけて三日月を横にしたような目つきをしました。彼女は何だか嫌な気がしました。

 そのお医者様の言葉に、急に部屋にいた看護婦さんの態度がムッとした感じにかわり、ガシャガシャ、バシンバタンと、

騒音を立ててその不機嫌さを表し始めました。

お医者様の方でもその看護婦さんの不機嫌な態度に気付き、すっと席を立つと彼女に話を聞きに行きました。

君如何したんだね?、いえ別に何でもありません、けれど…。と、暫く小声で2人でやり取りしていましたが、別の看護婦さんがやって来たので、

君、本当の話なのかい?と、お医者様は何やら確認する様に尋ねてみます。

 ああその件なら、そうですよ、でも、まだ子供同士の事ですからね…。と、後から入ってきた看護婦さんも訳知り顔で、

その後3人でひそひそと相談めいた話し合いが行われ始めました。

程無くして、お医者様は呆然とした暗い面持ちで蛍さんの目の前に帰って来ました。


羽生さん

2017-05-31 09:55:13 | 日記

 やはり私の年代だと棋士の羽生(はぶ)さんです。

スケートの羽生(はにゅう)君も有名になりましたが、スケートで金メダルを取った時には、

まだはぶ君という呼び方の人が多かった気がします。将棋の方の羽生さんの知名度の為だと思いました。

今では羽生君をはぶ君という人はいないでしょう。羽生君の方が有名になった気がします。

それでも、棋士と言えば羽生さんが1番に思い浮かびます。

 


ダリアの花、194

2017-05-31 09:42:40 | 日記

 しかし、その子はなかなかこちらに振り向いてくれません。先生の前の椅子に腰かけて、椅子を回さずにじっとしています。

 治療は終わってしまったのに、その子が身動きもせず全く帰ろうという気配が無いので、とうとうお医者様が、

「如何したの?君の診療は終わったよ。」

と、言うと、その子は何やらお医者様に話していましたが、その話を聞く内に、お医者様のにこやかだった顔が険しく変わりました。

「君だったのか。」

それなら天罰というものだね。そうお医者様が憤ったような声で言うのが聞こえたと思ったら、

「ちゃんと謝るんだよ。」

何て?。それくらい自分で考えなさい。でも、何て。

「まずはごめんなさいだろう。後は自分で考えて話しなさい。それくらい君ならできるだろう。」

その声と共に、お医者様がくるりと彼の座っている椅子を回しました。

 蛍さんの目の前に、その不幸な怪我をした男の子の顔が現れました。彼女と同じように包帯をぐるぐるに巻かれて、

伏し目でしょんぼりと椅子に座っています。口がごごご、と呟いています。

蛍さんはその子のしょぼ暮れた様子が、如何にも間が悪い、要領を得ない鈍感な子という感じだったので、その子が何か言う前に機転を利かせて、

「僕、災難だったんだってね、可哀そうに。」

と明るく励ますように言いました。

 蛍さんの声掛けに、男の子は口から出そうとしていた言葉を引っ込めて、ちらっと視線を上げると、きっと蛍さんを睨みました。

『あら、何か気に障ったのかしら?負けん気の強い子なのね。』、乱暴そうな子だと思った蛍さんは、咄嗟にこの子の気持ちを宥めようと思いました。

「お姉ちゃんもね、頭に怪我しのよ、でもね、ちゃんとお医者様の治療を受けて良くなったから、僕もすぐに良くなるよ。」

大丈夫だからね、よしよしと、にこやかに優しくその子に話しかけました。これで機嫌がよくなるだろうと彼女は思いました。

 その途端、蛍さんの予想に反して、目の前の子はにこやかに機嫌を直すどころか、しかめっ面で物も言わずにぴょんと椅子から飛び降りると走り出しました。

蛍さんの脇にぶつかり彼女をすり抜けると、ダダダダダと足音も荒く診察室を飛び出し、そのまま風のように駆け去ってしまいました。凄い速さでした。

 「なぁに、あの子?」

残された蛍さんは吃驚して振り返ると、男の子が去っていった後をきょとんとして眺めていました。

目の前には彼女の父と、男の子の付き添いの男の人が並んで黙って立っていましたが、父の方は笑顔でした。

「お父さん、変な子だね、如何したんだろう。」


ダリアの花、193

2017-05-30 20:28:06 | 日記

 「頑張ってみます。なあに兄さんが入ったところぐらい、僕行けますよ。」

義弟の返答に、彼は大きく出たねと笑い。

「そうか、僕の大学はそんなものか。」

と苦笑すると、

「若し僕の大学に入れなかったり、僕より格下の大学に行くような事があったら、その時はもう家には来ないでくれ。」

「又、僕の父は君の本当の父じゃないんだから、馴れ馴れしくお父さんと呼ばないでくれ。僕にすると不愉快だからね。」

そうきつく義弟に言うと、父は横を向いて黙ってしまいました。

 「分かりました。義兄さん。」

義弟も思う所があるのかぽつりとそれだけ言うと、横を向いた義兄からすーっと目を逸らすと身を翻し、

サッサと廊下を歩いて義兄から離れて行きました。そして階段の所迄来ると、階下に姉の気配を確かめて、

そこに彼女が不在だと判断すると、彼は階段を一気に駆け下りて行ってしまいました。

 『僕の姪か。』1人廊下に残された蛍さんの父は、義弟の言葉に、

自分の娘が妻の実家の家とも繋がりがある者である事をはっきりと感じ、改めて家同士の結婚という物を考えていました。

 その日の午後の事でした。診察にどうぞの看護婦さんの声で、蛍さんは父と階下の診察室に出掛けました。

診察室には先客がいて、丁度お医者様の治療を受けている最中でした。蛍さんはその子の後ろに並んで、治療が終わるのをを待っていました。

如何もその治療中の子の付き添いと、蛍さんの父は顔見知りのようです。

あら、とか、おや、とか言ってお互いにニヤニヤしていました。

それで、付き添い同士話が出来る状態の時に、彼女の父が如何されたんですか等と話しかけていました。

 「いや、一寸ありましてね。」

家でも家の子が誰かに頭を叩かれまして、場所が場所だけに大事を取ってお医者様に診せに来たんです。

そう言った父の知人らしい人と、父のそれはお気の毒にという話を聞きながら、

蛍さんは目の前で今包帯を巻いて貰っている子供が、僕という言葉で男の子だという事に気が付きました。

 『可哀そうに、私よりまだ小さい子なのに災難ね。』自分と同じように頭に怪我をするなんて、

しかも私とは違って、自分の不注意では無く誰かに叩かれて怪我をしたのだ。なんて要領の悪い子なんだろうと考えていました。

そこで、治療が終わってその子がこちらに振り向くのを興味深く待っていました。

『そんな要領の悪い子の顔ってどんな顔なのだろう?』そう思って包帯を巻かれた頭を見つめていました。


初詣

2017-05-29 15:02:37 | 日記

  私はあまり着物を着る機会がないので、初詣か夏の夜店ぐらいしか着物を着る機会がありません。

初詣ならアンサンブルですね、若い頃に着た事があります。

選んだアンサンブルの着物のデザインは、誕生花がモチーフになっていました。

この着物を自分の誕生化でなく色で選んだところ、5月か6月の誕生花がモチーフになってしまいました。

確かバラの模様を図案化したものです。色が可愛いピンク色でしたから、明るい感じで気に入っていました。

 この着物は長く愛用されて?、自身で来たのは3回くらい。後は妹やその他誰でもの愛用品となっているようです。

時折、あれって誕生花なの?と聞かれました。聞かれると、ああ使っているんだなと思います。

皆に愛用されて、着物も着物冥利に尽きるというものです。今迄の様子では、誰も誕生日が5月や6月ではありません。

 当時を振り返ると、自分の誕生花では無い品物を買うのは勇気が要りました。

若い頃の一本気な気持ちからも、自分の誕生花では無い着物を着る事に妙な抵抗感がありました。

それでも、その花のデザインと色合いが気に入って、気に入った物を買う事に決めました。

 現在は、誕生月由縁の物は誕生○と思いながら、それでも気に入った物を選ぶという経験と、

その愛着が愛用品ににつながるという嗜好傾向を知っているので、抵抗なく品物を選べます。