さて、表に出てみると、前にかー君のお母さまが待っていた所にやはりお母さまがおられます。
私は何となくそこにお母さまがおられるだろうと予想していました。
やはりおられたと思い寄って行きます。
「あなた、この前言ったでしょう。私の言った事が分からなかったの?」
あなたはそんな子じゃないでしょう。というような感じで、やや厳しい口調で仰いました。
私はそう言われてるのももっともな事と思いながら、
「すみません。今日が最後のつもりで来ました。」
と、話し始めます。
かー君は、多分もう私の事が嫌いになっただろうし、来ないにしても、急に打ち切るよりこの方がよいと思って今日は嫌われる為に来ました。と話します。
以前私が急に友達を止めた人から、急に打ち切られる人の事も考えてよと言われた事。
それで、何かしら愛想尽かしした方がよいと思った事を伝えました。
お母様は表情を和らげて、そうね、あの子の為に来たの、と考えておられましたが、
「いえ、家の子の場合はすぐに打ち切ってもらった方がよいの。この前言ったようにもう来ないでね。
あなたの事が心配だから。」
再度、そう仰るのです。
私はお母様にそう言われると、子供である自分の目より、かー君の親であるお母様の目の方が確かだろうと感じます。
分かりました、もう来ませんとはっきり約束して指切り、私はすぐにお母さまから離れ、家路についたのでした。
帰路の途中には信号機のある往来がありました。かー君の家からそう離れていません。
すぐに帰りたかった私でしたが、赤信号に引っかかってしまいました。
待つのももどかしいのですが、じーっと信号を見上げていると、赤い色、青い色、もうすぐ点くだろうランプの消えた緑。
その安全な進めの色が点るのをじれったく待つ、そして期待する気持ち。安全でいて欲しい。
私の心情にも危険、止まれ、安全、注意して進め、様々な言葉のシグナルが点ります。
赤、危険、今の内に止めよう。今の私のかー君との交際のよう。
注意して黄色、十分注意しよう。
青、安全、本当は緑色、それでも左右を見て注意して進もう。
そう、折角お母様が私の事を心配してくださったのだから、私の為にもこれでよいのだ。
ずーっと安心安全なかー君でいて欲しい。
思えば、赤いイメージであったおー君と、心和んだかー君は青い色、緑の薫風の季節から始まったかー君との交友に別れを告げる今。
一つの区切りの時と、緑の明るい信号を見上げると、私は注意深く左右を確認してから、横断歩道に足を踏み込み、一路家路を急ぐのでした。