『寝違えで頚が引き攣り頭痛がする。』と患者さんがお見えになりました。
夜遅くまで開院している「指圧」の治療院で電気を流して貰ったそうですが一向に良くならないという事です。
問診すると交通事故で「頸椎症」の治療を受けていたそうです。
「頸椎症」とは頸椎の変形(椎間板、椎間関節、Luschka関節、椎体縁のどの狭小や骨棘の形成など)に伴い、その周囲の神経、血管(脊髄、洞神経、後枝内側枝、神経根、椎骨動脈、頸部交換神経などに)障害を合併する疾患です。
当院では頸椎症の中の関連痛型と神経根症状を鍼灸の適応症として治療しております。
同じ頸椎症でも脊髄症型、バレー症状型については専門医での診察をお勧めしております。
では具体的に今回の治療を説明してみます。
①まず最初にタオルの上から頸部、肩背部、脊柱起立筋を軽く擦って体の状態を診ると、左側の板状筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋、肩甲挙筋、脊柱起立筋の緊張が分かります。
更に確認すると頚椎の4C上に小さな傷跡がみられます。事故の時の傷ですかね?
②触診するとC4付近の後頸部痛と肩背部、肩甲間部の肩中兪・肩外兪・曲垣・へい風・じゅ兪・天宗・肩貞・の凝りと痛みが著明でした。
③具体的な治療(筋に対するアプローチ)
筋緊張および圧痛硬結部へ鍼管を使い刺入後、置鍼としました。
患者様に聞くと、刺入したことも分からなかったとの答えでした。
経穴名で言えば、
天柱 :頭半棘筋・頭板状筋・僧帽筋
へい風:僧帽筋・棘上筋
曲垣 :僧帽筋・棘上筋①
肩外兪:僧帽筋・肩甲挙筋
肩中兪:僧帽筋・肩甲挙筋
天宗 :棘下筋
じゅ兪:棘下筋
肩貞 :小円筋・大円筋
完骨 :胸鎖乳突筋・頭板状筋
などを使い、さらに背部の菱形形筋上の附分、魄戸、膏肓も使用しました。
曲垣・肩外兪・肩中兪・附分、魄戸、膏肓は頸横動脈が走っており、風池は深部に椎骨動脈が走行しております。
上記の場所に置鍼することにより、筋肉の緊張、硬結が緩むのみならず、血管が拡張する作用により頸部頭部の症状が改善します
風池は深部に椎骨動脈が走行しておりますので刺鍼に注意が必要ですが、深刺でない事と、鍼が細いことから危険性はありません。
鍼とお灸の後にMT温灸器を使用して経絡に沿って気血の流れを調えて治療終了としました。
患者さんは『凝りが解れて頭が痛いのが直りました。視界が明るいです。』との事です。
今回の症状は寒さによる「頚椎症」の古傷が痛んだ為かと思われます。