茂原市ことぶき堂鍼灸院

茂原市で鍼灸治療院を営んでおります。
東洋医学や日常生活のあれこれを日々綴っています。

壽堂日記26年5月30日「鍼灸による疼痛緩和の理論と治療。」

2014-05-30 05:26:54 | 日記
なぜ鍼灸治療を受けると、痛みや凝りが取れ、血行が良くなるのか?と患者様からよく質問されます。

「痛み」というものを、東洋医学では「気」であると考えます。

気血が阻滞すると痛みが発生する事を「不通則痛」と言い。

気・血・精の不足などで臓腑・経絡が滋養されないと痛みが発生する事を「不栄則痛」と言います。

つまり「気」の異常が「痛み」であると考えます。

東洋医学に対して西洋医学では「痛み」は感覚神経の異常、あるいは神経の異常興奮だという考え方があります。

鍼の刺激により異常興奮の神経を鎮静させるというのが西洋医学の鍼理論です。

この西洋医学(現代医学)的な鎮痛効果の実際に目で見える現象として「軸索反射」と言う現象があります。

皮膚を鍼で刺激すると、局所に紅斑が出現します、この現象を「軸索反射」と言います。

これは『求心性神経線維の終末にある受容器を鍼で刺激すると、インパルスは求心性に伝達されるが、軸索の枝分かれ部分から逆行して末梢にインパルスが伝わり、その神経端末部からも脊髄におけると同様な神経伝達物質(サブスタンPなど)が遊離され、血管拡張神経に作用し、血管の拡張が生じて血行が盛んになる」ために起こるものであり、「軸索反射」は鍼が痛みや、凝りに有効的に作用する機序の一つとされています。

刺鍼による「軸索反射」が血流を促進して疼痛物質を排除し痛みや、凝り、筋疲労が改善されるわけです。

上の画像で鍼を刺した周囲が「軸索反射」により紅斑状になっているのが確認出来ると思います。

この鍼法は気血を対象として、陰虚や衰弱の強い人、深部の痛み、麻痺、悪感、痺れなどに良く効きます。


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壽堂日記26年5月28日「脊柱管狭窄症と膝痛の鍼灸治療。」

2014-05-28 05:30:10 | 日記
昨日は湿度が高い日でしたね。湿度が高いと体の不調を訴える方が増えます。

当院は「澤田流」の鍼灸治療を行う治療院です、今日は「澤田流太極療法」による「脊柱管狭窄症と膝痛」の治療について実際に即して書いてみたいと思います。

私は「澤田流太極療法」を澤田健先生の高弟である倉島宗二先生のお弟子さんから学びましたが、そのお師匠と同門以外に「澤田流」の鍼灸治療院を千葉県では知りませんので、当院が房総地域で唯一の「澤田流」の鍼灸治療院であると思います。

患者さんは年齢80歳代女性で「脊柱管狭窄症」の病歴を持ち、「膝痛」「間欠性跛行」があり左足の血行が悪く常に左足が冷たい状態で、今日は湿度が高いため腰の痛みが悪化したそうです。

1まず最初に脈診をします。

2そのあと腹診をします。ここまでは「積聚治療」と変わりありません。

3「澤田流」では全体治療のための21の基本穴が決まっておりますが、高齢であり、ドーゼオーバーを避けるため少数穴を選定し刺鍼しました。
 「澤田流」はお灸の治療法ではないかと思われる方もいるかも知れませんが、鍼も使います。
 今回は一番鍼を使い刺入深度は切皮程度としました。
 使い方は留気鍼に似ていると思います。

4仰向けで治療を開始し、澤田流の基本穴以外に左側の寒府・血海・足三里に置鍼、膝眼・膝蓋骨周囲をネパール棒灸で温補しました。

 ネパール棒灸はその名の通りネパール産のモグサを使用しており精油成分が濃い感じがします。

 患部を温める温補作用が強く灸痕が出来ないので「膝痛」には必ず使用する事にしていますが、煙が凄いので換気設備のある治療室以外では不向きか  も知れません。
 ※寒府とは澤田流の独自穴で膝下一切の病を主治する経穴とされています。

5置鍼とネパール棒灸での治療により左足の血行が改善、「膝痛」が軽減したのを確認後、うつ伏せでの治療に移りました。

7うつ伏せで左下腿の委中・裏陽陵泉・承山・崑ロンに置鍼、刺入深度は鍼管を使用し無痛で切皮程度。

6さらに「脊柱管狭窄症」の治療のため腰部を観察し、腰部における治療は、肝兪・脾兪・腎兪・大腸兪・臀部阿是穴2ヶ所に置鍼、灸は無痕灸を採用し 命門穴に箱灸を置き温補としました。
 
 患者様から「腰が温かくて気持ちが良い。」との感想がありました。

 灸痕に関して、免疫力を上げると言う考え方はあります、私も必要であれば透熱灸で灸痕を付けることもありますが、高齢者には基本的に無痕灸として おります。
 その理由は高齢者は肌が弱いことと、化膿する可能性を考慮してです。
 特に女性の患者様に対しては灸痕を残すことに非常に抵抗を感じます。

7しばらくすると箱灸をしている命門穴から左委中に対して「響く感じがする。」と患者さんからお話がありましたので、しばらくそのまま温補した後に 抜鍼し治療終了としました。

治療終了後、患者様から「足の痛みが軽くなった、こんな気持ちの良い鍼は初めて。」と喜ばれました。
「脊柱管狭窄症」とそれが原因による「膝痛」は鍼灸治療で軽減出来ます。 

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壽堂日記26年5月27日「鍼灸治療の保険適応とWHOの有効性の認定。」

2014-05-27 07:13:27 | 日記
昨日のブログで「五十肩の保険治療」について書きましたが、お問い合わせがありましたので少し詳しくお話してみます。

西洋医学で診断名が付かない症状でも、東洋医学では「証」で治療することができます。

病は「経絡治療」で言えば大きくは「肺虚証」「脾虚証」「肝虚証」「腎虚証」の四個のいずれかの「虚証」に分類されます。

鍼灸治療は全ての「証」を治療できますので西洋医学では明確な診断名が付かない症状も治療が可能です。

現在の日本で鍼灸が保険が適応できるのもは以下の6種類です。

1.神経痛…例えば坐骨神経痛など。
2.リウマチ…急性、慢性で各関節が腫れて痛むもの。
3.腰痛症 …慢性の腰痛、ギックリ腰など。
4.五十肩…肩の関節が痛く腕が挙がらないもの。
5.頚腕症候群…頚から肩、腕にかけてシビレ痛むもの。
6.頚椎捻挫後遺症…頚の外傷、むちうち症など。
その他これらに類似する疾患など。
これを保険適応するのには医師の同意書が必要とされます。

最近、NIH(米国 国立衛生研究所)の見解として鍼灸療法の各種の病気に対する効果とその科学的根拠、西洋医学の代替治療として効果について有効であると発表しました。

WHO(世界保健機関)で鍼灸療法の有効性を認めた病気には、次ぎのものを挙げています。
(☆が健康保険が使えるものです。)
【神経系疾患】
☆神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー

【運動器系疾患】
関節炎・☆リウマチ・☆頚肩腕症候群・☆頚椎捻挫後遺症・☆五十肩・腱鞘炎・☆腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)

【循環器系疾患】
心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ

【呼吸器系疾患】
気管支炎・喘息・風邪および予防

【消化器系疾患】
胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾

【代謝内分秘系疾患】
バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血

【生殖、泌尿器系疾患】
膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎

【婦人科系疾患】
更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊

【耳鼻咽喉科系疾患】
中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・へんとう炎

【眼科系疾患】
眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい

【小児科疾患】
小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善

昨日治療した「五十肩」は、健康保険の適応症の一つに該当しています。鍼灸が有効であるとWHOが認定した疾患のほとんどが残念ながら健康保険に適応していないのが現状です。


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壽堂日記26年5月26日「五十肩の保険治療とビワの葉灸。」

2014-05-26 10:13:42 | 日記
今日から五十肩の患者様のお一人が医師の同意者を貰ってきたので保険治療となりました。

鍼灸治療でも医師の同意書があれば保険が使用できます。

適応症は次の通りです。

1.神経痛(坐骨神経痛、三叉神経痛、肋間神経痛、その他の神経痛)
2.頸腕症候群(首から腕にかけての疾患、首が痛むなど)
3.五十肩(いわゆる四十肩など同じような症状はこれに含まれます)
4.リウマチ(関節リウマチなど)
5.腰痛症(腰の痛み、ぎっくり腰など)
6.頚椎捻挫後遺症等(いわゆる「ムチウチ」の後遺症など)


正確には「療養費」と呼ばれる物ですので整形外科などの保険診療とは若干趣が異なります。

当院では「療養費」の支給対象の治療と言っても治療内容は自由診療と変わりません。

今日もまず脈診・腹診から始まり「本治法」で虚している臓腑の「精気の虚」を補い。

標治法で肩に鍼とお灸とビワの葉温灸をして最後にMT温灸器を使い筋の走行に合わせて温灸マッツサージをしました。

症状に応じて低周波パルスを行い円皮鍼を張ることあります。

ビワの葉灸は実費となりますが当院はビワの葉灸を受けたくて来られる方が多く、とても効果があるので保険治療の患者さんでもビワの葉灸だけ実費で
受ける方がほとんどです。

びわの葉の薬効は科学的にも、次の様な効果確認されています。

①白血球の活動を活発にし、免疫力を高める
②赤血球や血小板などの血液成分の働きが旺盛になる
③血液を弱アルカリ性にする
④グローミューを再生・強化する

グローミューというのは、動脈と静脈を結んでいる毛細血管のバイパスの役割をするもので、全身のいたるところに存在し、このグローミューがしっかりとしていることで、血行が良くなり体の隅々まで酸素を送り、組織のガス交換を促進させ、新陳代謝を活発にさせます。

生活習慣の乱れやストレス、老化などでこのグローミューが萎縮したり消失したりすると、血行が妨げられて、体全体の代謝活動が損なわれ色々な病気が発生する下地を作ることになります。

当治療院では鍼灸治療で体全体の「気」の流れを調え、「ビワの葉灸」を併用することで自律神経系や内分泌系(ホルモン系)を調整し、体内活動を活性化してストレスに対する抵抗力を強め自己免疫力を高める治療を行っております。

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壽堂日記26年5月23日「脊椎すべり症と膝の痛み。」

2014-05-24 07:55:42 | 日記
ここ数日寒暖の差が大きいですね。

昨日は腰下肢が痛いと言う方が多くお出でになりました。

腰下肢痛といっても、色々な原因があります。

腰痛ならば、姿勢性腰痛・筋・筋膜性腰痛、椎間関節性腰痛、変形性脊椎症、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、分離・すべり症など

下肢痛ならば、坐骨神経痛、利状筋症候群、大腿神経痛などがあります。

今回は「脊椎すべり症と膝痛の治療」を取り上げて当院ではどのような治療をするか、ご紹介したいと思います。

「脊椎すべり症」が鍼灸治療で治るのかと疑問に思う方もいると思います。

「脊椎すべり症」は椎骨が真下の椎骨に対して前方に滑って移動した状態の事をいいます。

「脊椎すべり症」自体を治すことは鍼灸治療では出来ませんが、痛みを緩和することは出来ます。

腰下肢痛を東洋医学的な考え方で捉えれば、臓腑、経絡、経筋に関係すると考えます。
急性のものは、外邪や外傷による気血阻滞による血おが原因によるもの(不通則痛)
慢性のものは「腎虚」によるものが多く東洋医学では「腰は腎の府」と呼ばれています(不栄則痛)

今回の患者様は「脊椎すべり症」と整形外科で診断され、膝も痛いと言うことで来院されました。

膝が痛む場合は、下肢前面の足陽明胃経、下肢後面の督脈・太陽膀胱経、大腿前面、下肢外側の少陽胆経についても切経して指標を確認する必要があります。

切経すると左膝関節外側に圧痛があり、左下肢全体が浮腫んでいる状態でした、関節には邪が溜まりやすく、東洋医学では「邪好みて寝る」と言われています。

腹診では小腹不仁(下腹部「臍下」に力が無くフワフワしている状態)であったので腎の病変、腎虚症とし、寒湿が気血の運行を不利し、腰部の経絡の気が阻滞(不通)し痛みが発症したと考え、治療方針として圧痛がL5督脈上と左殿圧に著名なので経筋の変調も視野に、血流改善、筋緊張緩解、鎮痛を目的とし、まず本治法として積聚治療を用い巨刺(右側)で「精気の虚」を「補法」で丁寧に補っていきます。

積聚治療の特徴は刺さないことです、刺して痛みを与えると「瀉法」になってしまいます。鍼で治療して「精気の虚」を補うにつれて左足の浮腫が取れてきて、腰の痛みも緩解し、冷たかった足先も気血が巡って来ました。

「補法」の鍼で「正気の虚」を補った後に、更にお灸で「補法」を行います。今回の痛みは「寒湿の邪」が乗じて生じたものなので灸法で熱を入れることにより緩解します。

命門上に箱灸を置きゆっくり温補しましたが、患者さんに様子を聞くと「膝の痛みが消えました。」との返事でした。普段うつぶせ状態だと膝に痛みが出るのだそうですが、「今は全然痛くない。」との事でした。

最後に委中に巨刺(反対側治療のことで、経脈が病んでいる時、病が右にあれば左に、左にあれば左に経刺する事)をして治療を終了しました。

「委中」は「四総穴」の一つで「腰背は委中に求む」と言われる、腰下肢治療の代表的な経穴です。

本治法で「腎兪」を使用していますので、「委中」+「腎兪」を併用すると相乗効果で、和表裏、通経絡、利腰脊、止疼痛作用がより高まります。特に膝部分の「膝痛」の治療はしませんでしたが、全体治療で「本」の症状が改善すれば、それに伴う他の症状も改善します。

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