聴覚過敏とは大抵の人が十分我慢できる音を、苦痛を伴う異常な音として経験することです。
耳の病理と関係する生理学的な要素だけでなく心理学的な要素も治療に際しては考慮が必要です。
聴覚過敏を引き起こすメカニズムとして生化学モデル、聴覚遠心性神経の機能障害、中枢の聴覚利得、ジャストレボフの神経生理学モデルなどが考えられています。
また聴覚過敏は「聴覚補充現象」で起こることも有ります。
内耳障害では難聴であるにもかかわらず、ある一定の音量を超えた音が健常者に比べより強く響きまた耳に刺激を感じることがあります。
そのような内耳障害に伴う聴覚過敏の症状を「聴覚補充現象」といいます。
「聴覚補充現象」は感音性難聴に伴う聴覚過敏症の症状ですが、耳鼻科では「補充現象」あるいは「聴覚のリクルートメント現象」と言われる事も有ります。
耳に原因があるものとして
・耳小骨筋(あぶみ骨筋・鼓膜張筋)の反射異常
・内耳の反射異常
が考えられます。
*あぶみ骨筋・鼓膜張筋は強大音響に対する内耳防御作用として音響性あぶみ骨反射が一般的に認められています。
「耳小骨筋の反射異常」の原因が顔面神経麻痺・ベル麻痺・ラムゼイハント症候群などである場合は原因疾患を治療することで改善に向かうことがあります。
また耳の器質的機能が正常である場合は
・ストレスが原因とされることもあります。
東洋医学的なアプローチをすると「耳」は腎に関係が深いとされ、中医学では、「腎は耳と二陰に開竅(かいきゅう)し、その華は髪にある」といわれており、耳の機能は「腎」のはたらきを反映しているものと考えます。
「腎」の気が不足している状態を「腎虚」といいますが、腎虚から起こる状態の一つに耳の機能の変調がありります。
東洋医学で言う「腎」は、腎臓という意味ではなく、内臓の機能のうちの内分泌系、泌尿・生殖器系、免疫系、中枢神経系の一部の機能のことを指します。
証を立て「腎虚証」であるならば「腎の気」を補う「補腎」を行い、症状に応じて「平肝熄風」や「寧心安神」「疏経通絡」の処置を行うことで症状が改善することがあります。