茂原市ことぶき堂鍼灸院

茂原市で鍼灸治療院を営んでおります。
東洋医学や日常生活のあれこれを日々綴っています。

壽堂日記25年8月20日「上半身の気を下げる治療。」

2013-08-20 04:55:15 | 日記
去年の夏に熱性の病気をしてから「下半身の冷えと上半身ののぼせ」に一年間悩まされていた患者様の治療3回目、前回の2回の治療で「気」が上半身に昇ることが無くなり調子がとても良いと言う事でした。

この方の「下半身の冷え」と「上半身ののぼせ」は熱性の病気で腎陰が虚損され、腎陰虚と肝陰虚により肝陽(=肝の陽性の気)が上亢していたのが原因であると判断し腎陰を補う治療をしました。

その結果として体内の陰陽バランスが調って「上半身の気が下がり」「下半身が温まって」きた訳です。

「上半身の気を下げる治療。」と言いますと、何やら特殊な能力で「気」を操る様に聞こえますが、実際は「気」が昇る原因を考えて「本治法」で虚している臓を補えば「下半身の冷えと上半身ののぼせ」は改善するものです。

あくまでも「気の概念に基づいた治療。」であり「気を使った治療。」ではありません。

当院では「積聚治療」という治療法で治療しておりますが、この治療法の特徴は鍼を刺入しないことです。

鍼先を皮膚に押し当てるだけで「気」を動かし「病」を治療します。

鍼灸技術的には「接触鍼」と言われるものですが、何故「刺さない鍼」で病気が治療できるのか簡単にご説明して見たいと思います。

「刺さない鍼=接触鍼」でなぜ「病」が治るのか、それについては「気」と云う物の理解が欠かせません。

「気」は東洋医学の根幹をなす重要な考え方で、広い意味で人体は「気」そのものです、人間の身体は「気の重層構造」になっていて、「気」の機能が過剰になると、そこにアンバランスを生じ「万病」が生じると考えます。

「気の重層構造」の人体に鍼灸治療を行うことは「気」そのものに鍼灸をすることです、「気」の調和により万病を治すというのが鍼灸治療の大原則です。

「接触鍼」は体表の気に直接触れて治療する技法です、体表には衛気と言う気が流れていますが、その衛気を通じて、経絡の気、臓腑の気、正気、元気、陰陽の気を動かすことで「気」の過不足を調整したり正しい働きに戻すことにより「病」を治療することができるのです。


鍼灸治療と言いますと「刺す鍼=刺入鍼」というイメージが強いのですが、「接触鍼」だけを使用する流派や「接触鍼」「刺入鍼」を使い分ける流派も数多くあり、私の治療院では「本治法」は「接触鍼」で行い、「標治法」は「刺入鍼」も使います。

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壽堂日記25年8月18日「不妊治療・お血を下す鍼。」

2013-08-18 18:02:56 | 日記
先日の「鍼灸で子宮内を綺麗にする。」のブログを読んで、不妊治療を受けたいと言う患者様が来院されました。

状態を伺うと、冷え性・生理不順・生理痛が強いので、鍼灸で体を調えて妊娠に備えたいと言うご希望でした。

刺さない鍼の「積聚治療」で治療を進め、腹部接触鍼・脈調整後に「腹診」したところ、左下腹部に抵抗と圧痛と冷感域があります。
東洋医学では「小腹急結」という典型的な「瘀血」の証ですね。

不妊の治療では「肝・腎・脾」の3臓が大切です。

「瘀血」の関係が深い臓も「肝・腎・脾」となりますが、肝は血を蔵し(肝蔵血)、肝血が不足すると月経量が少なくなりひどい場合は閉経したりします。

また肝不蔵血の場合は月経量が多くなりひどいと不性器出血が起きます。

肝の血流調節の機能は蔵血と疏泄機能のバランスが保たれて初めて正常に行われるもので、肝の疏泄機能が衰えると生理不順・生理痛が起きやすく、「瘀血」が出来やすいのです。

肝は血を蓄え、体の血量を調節する働きをしています。

東洋医学では「肝は血を蔵する」と言われています。

肝は過度の怒り(怒る・イライラするということ)が起きると、精神上の激しい刺激を受けてその正常な働きができなくなり、酷いときは吐血まで引き起こすことがあるといわれています。

つまり肝経の血の流れ、特に、骨盤内の流れが悪くなることにより、冷え症・瘀(お)血が出現します。

女性の場合、骨盤内に子宮という血液を集めたり、出したりを繰り返す臓器があるために、月経がスムーズに繰り返さなければ、瘀(お)血という形で滞った悪い血が溜まってきます。

この瘀(お)血の状態が進むと、軽い症状としては頭痛・肩凝り・月経前のイライラ・めまい・足の冷えとして現れます。

今回は「腎虚証」で治療を進めましたが、治療の流れとしては通常の「積聚治療」と変わらず仰臥位での治療を終えて、伏臥位になって頂いて、指標を確認しながら背部に接触鍼を行いその後に膀胱経に鍼を押し当て気が至るのを待ちます。

治療を進めて行くと、患者様が『足先に暖かいものが流れて行きます。子宮内から溜まっていた物が流れ出していく感じがします。』と言葉がありました。

「瘀(お)血」を下す経穴としては「血海」が有名ですし「三陰交」も生理に関する経穴としては有名ですが、今回は「腎虚証」の本治法で治療して「瘀(お)血を下す。」ことができました。

肝と腎の関係については「肝腎同源」と言う言葉があり前回ブログに書きましたが、「腎陰虚証」を治療することで「肝陰虚証」も治療出来ます。

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壽堂日記25年8月15日「腎陰虚証と食事。」

2013-08-15 08:47:14 | 日記
腎陰虚証で治療した患者様から食事について質問されたので、ここで簡単に説明いたします。

腎陰虚を補う食べ物としては

❀黒豆、黒ゴマ、クコの実、キクラゲ、ソラマメ、セロリ、豚腎、スッポン、うなぎ、百合根などがあります。
 体の虚熱を鎮め、体液を補う性質を持つ食材です。


腎虚証は「腎陰虚」と「腎陽虚」に分けられ、それぞれ「陰虚」「陽虚」で適する食材が異なりますので注意が必要です。

食物には「陰」と「陽」の性質があり、「陰虚証」の方は「陰性の食物」「陽虚証」の方は「陽性の食物」をとることが大切です。

「陰虚証」が原因で体内が「陽盛」と成っている方が「陽性の食物」を摂りすぎると「陽」がさらに過剰になります。

では「陽性の食物」を全く摂取してはいけないかと言うと、そうではなく、あくまでバランスが重要なのです。

「腎陰虚証」の方の場合は「腎陰」を補う食材を選ぶ訳ですが、前提として保存料が添加されていない質の良いものを選ぶこと更に調理や加工で食物の陰陽が変わり、「陰性の食物」でも熱を加える、圧力をかける、塩分を加える、などすると陽性になりますので注意が必要です。







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壽堂日記25年8月10日「刺さない鍼(積聚治療)による治療。」

2013-08-10 07:11:52 | 日記
腰痛・肩凝りの患者様が来院されました。

ご病気の関係で体に鍼を刺せないとの事で「積聚治療」という治療法で治療しましたが、この治療法の特徴は鍼を刺入しないことです。

鍼先を皮膚に押し当てるだけで「気」を動かし「病」を治療します。

鍼灸技術的には「接触鍼」と言われるものですが、何故「刺さない鍼」で病気が治療できるのか簡単にご説明して見たいと思います。

「刺さない鍼=接触鍼」でなぜ「病」が治るのか、それについては「気」と云う物の理解が欠かせません。

「気」は東洋医学の根幹をなす重要な考え方で、広い意味で人体は「気」そのものです、人間の身体は「気の重層構造」になっていて、「気」の機能が過剰になると、そこにアンバランスを生じ「万病」が生じると考えます。

「気の重層構造」の人体に鍼灸治療を行うことは「気」そのものに鍼灸をすることです、「気」の調和により万病を治すというのが鍼灸治療の大原則です。

「接触鍼」は体表の気に直接触れて治療する技法です、体表には衛気と言う気が流れていますが、その衛気を通じて、経絡の気、臓腑の気、正気、元気、陰陽の気を動かすことで「気」の過不足を調整したり正しい働きに戻すことにより「病」を治療することができるのです。

具体的な治療例を挙げて「接触鍼」による治療を説明します。
今回の患者さんは肩凝り、左腰が痛いと言うことで来院されましたが、問診すると肩凝り、腰痛、上肢痛、肩背部痛、心下部の張痛、足の冷え等の症状を訴えられました。

脈診したところ、脈は遅脈で全体的に沈。中府、尺沢、孔最、内関、魚際に圧痛。
腹部を擦診したところ、右季肋部に圧痛、臍周りに硬結、左曲骨上の圧痛が一番強い状態でした。

治療は最初に腹部に「接触鍼」をして、腹部の最も浅い気を補います。鍼は刺さりません、患者さんも「全然痛く無いです。」と言うことでした。
次に脈診をして脈調整を行います、今回は肺経の原穴である太淵に鍼をしましたが、鍼は先を当てる程度で刺入せず、気がいたるのを待って抜鍼します。

その後一番大切な証を立てるため、腹診します。「積聚治療」では腹診で証を立てます。

腹部「接触鍼」と脈調整を行った結果、右季肋部と臍周りの圧痛と硬結は解消しました。

左曲骨上の圧痛・硬結が残ったので「腎積腎虚証」として治療を進めることにしました。

背部で全体に接触鍼をして「積聚治療」の「腎虚」の手順で治療していきます。

右肩の肩井、天宗の凝り、左志室、左殿圧の圧痛が著明のため、その部分を指標として、鍼を右の背部の兪穴に当てて治療していくと、段々指標の部分の凝りが緩んできます。

患者さんが「肩が楽になりました、腰が張っていたのが緩んできました。」と教えてくれました。背部の治療もツボに鍼先を当てるだけで刺入はしませんでした。

背部の鍼を終えた後に、督脈上の命門に箱灸をして温めると患者さんが「冷たかった左足の親指まで温かくなりました。左のお尻も痛くありません。」と教えてくれました。

背部の治療を終了した段階で肩凝り、腰痛、上肢痛、肩背部痛の症状は改善しましたので、再度仰臥位で腹部を確認すると、先ほどの左曲骨上の圧痛、硬結はほぼ無くなっていましたが、最後に残った硬結に意識を置き腎経の復溜に鍼を当て、患者さんに圧痛、硬結の変化を見て貰いながら鍼を操作すると「痛みが無くなりました。」教えてくれたので今回は治療終了としました。

鍼灸治療と言いますと「刺す鍼=刺入鍼」というイメージが強いのですが、「接触鍼」だけを使用する流派や「接触鍼」「刺入鍼」を使い分ける流派も数多くあり、私の治療院では「本治法」は「接触鍼」で行い、「標治法」は「刺入鍼」も使いますが、今回は「接触鍼」だけで症状の緩解を得ることが出来ました。

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壽堂日記25年8月8日「腎虚証・冷えのぼせの鍼灸治療。」

2013-08-09 07:11:18 | 日記
下半身の「冷え」、上半身の「のぼせ」に悩まされている患者様が来院。「気」を降ろす治療を受けたいとの事です。

大病をされてから「冷えのぼせ」の症状に悩まされ、多くの病院で診察を受けられたそうですが、西洋医学の診断名が付かなかったとの事でした。

東洋医学では「上実下虚」あるは「上盛下虚」と呼ぶ症状ですが体の中で陰陽のバランスが崩れることで起きます。

東洋医学では「証」によって治療するので西洋医学の診断名が付かない場合でも治療することが出来まし、陰陽のバランスを調えるのは得意の分野です。

腹診をすると腎のエリアに圧痛があり、更に肝のエリアにも反応がありましたので「腎虚証」として「積聚治療」で治療をする事としました。臓腑相関弁証では「肝腎陰虚証」となります。

この方の「冷えのぼせ」は大病により腎陰が不足して「腎陰不足」が「肝陰不足=肝陰虚」を引き起こし、肝陰が肝陽を制御出来なくなり、このため「肝陽が亢進」したために起きたと考えられます。

「肝陰虚」とは肝の陰液が不足した病理的な状態を云いますが、原因の一つに「腎陰不足」の波及があります。

肝陽が亢進するとめまい・耳鳴り・顔面紅潮・目赤・情緒不安定などの上盛の症状が現れやすく、また同時に肝腎の陰不足により下虚の症状が現れやすいのです。

治療方針は本治法で「腎虚証」を治療することで「肝陰虚」の原因が「腎陰虚」であれば「腎虚証」として腎陰を補えば症状は治まります。

今回の患者様も「陰虚」を補い「気」を降ろす治療を行いましたが、治療後は『とてもよくなりました。』と喜んでお帰りになりました。






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