茂原市ことぶき堂鍼灸院

茂原市で鍼灸治療院を営んでおります。
東洋医学や日常生活のあれこれを日々綴っています。

壽堂日記27年11月24日「脊椎すべり症と膝痛の鍼灸治療。」

2015-11-24 07:30:19 | 日記

11月も下旬に入り雨が降って寒い日は、腰や下肢が痛むと言う方が増えました。その痛みの原因は「寒湿」である事が多いのです。


腰下肢痛といっても、色々な原因があります。腰痛ならば、姿勢性腰痛・筋・筋膜性腰痛、椎間関節性腰痛、変形性脊椎症、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、分離・すべり症など下肢痛ならば、坐骨神経痛、利状筋症候群、大腿神経痛などがあります。

今回は「脊椎すべり症と膝痛の治療」を取り上げて当院ではどのような治療をするか、ご紹介したいと思います。

「脊椎すべり症」が鍼灸治療で治るのかと疑問に思う方もいると思います。


「脊椎すべり症」は椎骨が真下の椎骨に対して前方に滑って移動した状態の事をいいます。「脊椎すべり症」自体を治すことは鍼灸治療では出来ませんが、痛みを緩和することは出来ます。

腰下肢痛を東洋医学的な考え方で捉えれば、臓腑、経絡、経筋に関係すると考えます。


急性のものは、外邪や外傷による気血阻滞による血おが原因によるもの(東洋医学では不通則痛と呼ばれます。)

慢性のものは「腎虚」によるものが多く、東洋医学では「腰は腎の府」と呼ばれ、腎の気の不調が腰に影響を与えると考えられています。(東洋医学では不栄則痛と呼ばれます。)

今回治療した患者さんは「脊椎すべり症」と整形外科で診断され、膝も痛いと言うことで来院されました。


膝が痛む場合は、下肢前面の足陽明胃経、下肢後面の督脈・太陽膀胱経、大腿前面、下肢外側の少陽胆経についても切経して指標を確認する必要があります。


切経すると左膝関節外側に圧痛があり、左下肢全体が浮腫んでいる状態でした、関節には邪が溜まりやすく、東洋医学では「邪好みて寝る」と言われています。


腹診では小腹不仁(下腹部「臍下」に力が無くフワフワしている状態)であったので腎の病変、腎虚症とし、寒湿が気血の運行を不利し、腰部の経絡の気が阻滞(不通)し痛みが発症したと考え、治療方針として圧痛がL5督脈上と左殿圧に著名なので経筋の変調も視野に、血流改善、筋緊張緩解、鎮痛を目的とし、まず本治法として積聚治療を用い巨刺(右側)で「精気の虚」を「補法」で丁寧に補っていきます。


積聚治療の特徴は刺さないことです、刺して痛みを与えると「瀉法」になってしまいます。鍼で治療して「精気の虚」を補うにつれて左足の浮腫が取れてきて、腰の痛みも緩解し、冷たかった足先も気血が巡って来ました。


「補法」の鍼で「正気の虚」を補った後に、更にお灸で「補法」を行います。今回の痛みは「寒湿の邪」が乗じて生じたものなので灸法で熱を入れることにより緩解します。


命門上にビワの葉温灸を置きゆっくり温補しましたが、患者さんに様子を聞くと「膝の痛みが消えました。」との返事でした。普段うつぶせ状態だと膝に痛みが出るのだそうですが、「今は全然痛くない。」との事でした。

最後に委中に巨刺(反対側治療のことで、経脈が病んでいる時、病が右にあれば左に、左にあれば左に経刺する事)をして治療を終了しました。

「委中」は「四総穴」の一つで「腰背は委中に求む」と言われる、腰下肢治療の代表的な経穴です。

本治法で「腎兪」を使用していますので、「委中」+「腎兪」を併用すると相乗効果で、和表裏、通経絡、利腰脊、止疼痛作用がより高まります。特に膝部分の「膝痛」の治療はしませんでしたが、全体治療で「本」の症状が改善すれば、それに伴う他の症状も改善します。


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壽堂日記27年11月23日「鍼灸治療は自律神経系に作用して免疫作用を高める?」

2015-11-23 07:01:10 | 日記

患者さんから『鍼灸は免疫作用を高めますか?』と良く質問されます。

鍼灸施術の治療的作用の中には「鎮痛作用」「防衛作用」「免疫作用」があります。

「鎮痛作用」は内因性モルヒネ様物質あるいは下行性抑制などの機序により、鎮痛作用が発現するとされています。

「防衛作用」とは白血球や大貪食細胞などを増加させて、各種疾患の治癒機能を促進させ、生体の防御機能を高めるとされています。

「免疫作用」とは免疫能を高める作用ですが、鍼刺激による免疫系への影響は神経系、内分泌系および免疫系の応答による末梢の反応に加えて、中枢の関与による相補的な効果と考えられています。

血液中の生体防御機構として働く補体系、肥満細胞、プロスタグランジン、サイトカイン、B細胞、T細胞、リンパ球に対するβーエンドルフイン、NK細胞など様々な要素がありますが、鍼刺激により血中へのT細胞やNK細胞の移行が促進することが動物やヒトで報告されています。

鍼灸刺激による免疫系への作用は自律神経を介した作用である可能性が示唆されています。

自律神経は免疫組織に分布しており、免疫組織の血管を支配する事により組織内の血流を調節する関接作用と、免疫担当細胞に直接作用する働きがあります。

鍼灸治療は鍼・灸により自律神経系、内分泌系、免疫系に刺激を与え生体の恒常性維持機構の賦活を導きだす治療法とされています。


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壽堂日記27年11月21日「北川式美顔鍼・眼の下のクマと白髪。」

2015-11-21 07:02:11 | 日記

「眼の下のクマと白髪が気になる。」と男性の方が「北川式美顔鍼」を受けに見えられました。最近、美容鍼を受ける男性が一般的になりました。

美容鍼といっても施術の方式として「全体治療+美容鍼」と「美容鍼」単独の二種類のスタイルがあります。

「全体治療+美容鍼」の施術をするところは少ないようですが当院では「美容鍼」の前に「積聚治療」による全体治療を行い、その後に「北川式美顔鍼」による施術を行うのがスタンダードとなります。

美容鍼の前に全体治療を行うことにより、体全体の気・血・水の流れを調えると、美容鍼の効果と持続効果が違います。

今回は「眼の下のクマと白髪」が気になるということでした。お体を拝見すると頸・肩・背中の凝りが強く感じられました。


「東洋医学」では、五臓の状態が顔に表れると言う考え方があり「顔は五臓の鏡」といわれます。

具体的な例を挙げますと、
・肝の働きが悪いと「瘀(お)血」と言われる目の下のくまが出来たり。
・脾の働きが悪いと顔色が黄色く萎びて見えたり。
・肺の働きが悪いと吹き出物・肌荒れが起きたり。
・腎の働きが悪いと顔色が煤けた様に黒くなったり、浮腫んだり、髪が白髪になったりします。

当院ではお客様の顔に鍼を刺すだけの美容鍼ではなく、根本にある様々な症状の「本」となっている五臓の状態を調える「本治法」により治療し、その後に顔に鍼をする「標治法」により五臓の失調でお顔に生じた症状を改善するのを基本としております。

美容鍼のお客様の多くは「私は体の具合が悪い所はありません。」「美容鍼に来たのに何故体全体に鍼をするのですか?」と質問されます。
しかし良く話しを伺うと、肩こり・頸凝り・頭痛・冷え性などの症状をお持ちの方が多いのです。

東洋医学的には白髪は腎の働きが悪いと成り易く、眼の下のくま、肌のくすみなどは肝や脾の働きが悪いことが原因であることが多く、「ただ顔に鍼を刺すだけ」では期待する効果が出にくいのです。

また西洋医学的に考えれば、頸部、肩部の凝りにより頭部に巡る血流が阻害され、栄養不足で髪の色艶が悪くなり、瘀(お)血の貯留により目の下のクマが出来ると考えられます。


全体治療で頸・肩・背中の凝りを緩めた後に「美容鍼」は「北川式美顔鍼」で施術し、短鍼を使い鍼管を使わず二指推鍼法でお顔に30本を刺して置鍼しました。

「全体治療+美容鍼」を終えますと、肌のくすみ、眼の下のクマが改善され、眼も開くようになり、お肌が白くなり透明感が増しました。

白髪に関しては直ぐに効果が出ると言うものではありませんが、回数を重ねると髪の色艶が段々良くなります。


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壽堂日記27年11月15日「頚・肩・腰・背中の凝り・目眩・胃痛の鍼灸治療。」

2015-11-15 08:30:12 | 日記

『頸・肩・背中・腰・胃が痛く、目眩もします。』と患者さんがお見えになりました。

「そんなに一度に沢山の症状に対応できる?」と思われるかも知れませんが、最初に「本治法」で病の大本を治療し、その後に「標治法」で局所に鍼と灸をすれば症状は改善します。

鍼灸治療は慢性の痛みや凝りの緩和に良く効きます。今回お体を拝見すると頚部と肩部の凝りが著明で目眩は頚と肩の凝りにより頭部への気血の流れが阻害された事が原因では無いかと思われました。

目眩に関してはメニエール病の治療に準じた鍼、胃痛に関しては、胃の六つ灸をベースにしました。

「痛み」というものを、東洋医学では「気」であると考えます。気血が阻滞すると痛みが発生する事を「不通則痛」と言い。気・血・精の不足などで臓腑・経絡が滋養されないと痛みが発生する事を「不栄則痛」と言います。

つまり「気」の異常が「痛み」であると考えます。

さらに今回は鍼灸にビワの葉温灸を加えてみました。「ビワの葉温湿布」はビワの葉が肌に直接触れる面積が大きく、またお灸ほど熱くない為、点では無く面で開いた毛穴から「ビワの生葉」の有効成分が熱によってじんわりと体内深く浸透します。

疼痛緩和の場合は痛みや凝りがある場所に行います。

びわの葉の薬効は科学的にも、下記のような効果確認されています。

①白血球の活動を活発にし、免疫力を高める
②赤血球や血小板などの血液成分の働きが旺盛になる
③血液を弱アルカリ性にする
④グローミューを再生・強化する

グローミューというのは、動脈と静脈を結んでいる毛細血管のバイパスの役割をするもので、全身のいたるところに存在し、このグローミューがしっかりとしていることで、血行が良くなり体の隅々まで酸素を送り、組織のガス交換を促進させ、新陳代謝を活発にさせます。

鍼灸治療+ビワの葉温灸で治療後は痛みと凝りが和らぎ目眩も治まりました。今回は気候の変化で気血が阻滞、気・血・精の不足などで痛みと凝りが起きたようです。


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壽堂日記27年11月11日「不妊症の治療・胚移植と鍼灸治療。」

2015-11-11 06:18:39 | 日記

不妊症の治療で今週「胚移植」をされる予定の患者さんがお見えになりました。

「胚移植」の直前と移植後に鍼灸治療を受けると妊娠率や出産に至る確率が高まる事はよく知られており、当院には「胚移植」前後に治療を受けられる患者さん、採卵の前段階から鍼治療を受け「妊娠し易い体創り」の為に患者さんがお見えになります。

この元になった研究はアメリカのメリーランド大学医学部統合医療センターの研究員らの調査で

「体外受精時の胚移植の前後に鍼治療を受けることで、その後の妊娠率や出産に至る確率が高まることが明らかになった。」

と報告されています。

この報告は欧米4ヶ国で実施された1366名の女性を対象に、体外受精時の胚移植の前後に、伝統的な鍼治療を受けた女性のグループ、にせの鍼治療を受けた女性のグループ、そして、何も施されなかった女性のグループのその後の成績を比較したところ、伝統的な鍼治療を受けたグループは他のグループに比べて、妊娠した割合が65%、そして、出産に至った割合が2倍であることが分かったそうです。

体外受精時の胚移植の前後の鍼治療は、その後の妊娠率や出産率を向上させることがデータで裏づけたられた訳ですね。

鍼灸治療が不妊治療に有効であることを示す各国の論文としてはその他に代表的なものとして

・胚移植日に鍼治療を行うと体外受精、顕微受精の妊娠率を上昇させる。
 273例を研究対象とし、鍼治療を行わない群では22%の妊娠、鍼治療群では36%の妊娠率であり、鍼治療群が妊娠率が高かった。(アメリカ生殖医学学会誌2006年 デンマークでの研究結果)

・体外受精と顕微授精例の黄体期に、鍼治療を行うと、鍼治療群に妊娠率が高かった。
 225例を対象とした、鍼治療を行わなかった群では13.8%、行った群では28.4%の妊娠率で鍼治療群に妊娠率が高かった。
(アメリカ生殖医学学会誌2006年 ドイツでの研究結果)

・体外受精例に鍼治療を3回行い、鍼治療群に妊娠率が高かった。
228例を対象に、HMG(排卵誘発剤)注射時、採卵前、採卵直後に鍼を行い。行わない群では23%、鍼治療群では31%の妊娠率で、鍼治療群に妊娠率は高かった。
(アメリカ生殖医学学会誌2006年 オーストラリアから研究結果)

などがありますし、国内でも同様な研究成果が報告されています。

鍼治療がどのようなメカニズムで不妊治療の成功率を高めるのかはよく分からないとしていますが、ストレス緩和の効果も大きいのではないかとされています。

ストレスを受けることで、人の気血水の流れが変調します。

胚移植の前後の気血の流れの変調は、胚が着床し、妊娠が継続することに、何らかの影響を及ぼしていると考えられます。

体外受精を受ける女性にとって、胚移植の前後に鍼灸治療を受けて、気血の流れを調え、ストレスを緩和することはとても大切です。

当院では体外受精の胚を戻す前と後に鍼灸治療を受けることをお勧めしております。


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