茂原市ことぶき堂鍼灸院

茂原市で鍼灸治療院を営んでおります。
東洋医学や日常生活のあれこれを日々綴っています。

壽堂日記27年1月29日「不妊症の治療と卵巣過剰刺激症候群(OHSS)。」

2015-01-29 05:06:02 | 日記

当院では「不妊症」の治療に取り組んで居りますが、最近気になるのが「排卵誘発剤」を使用した後体の不調を訴える患者さんが多いことです。

具体的な症状としては下腹部痛、帯下(たいげ)(おりもの)の増加、腹満感、尿量減少などがあります。

先日もお腹が痛くて眠れなかったと患者さんが見えられました。鍼灸治療して痛みは和らいだのですが卵巣がかなり腫れている事が伺えました。



「排卵誘発剤」は卵子(らんし)が卵巣(らんそう)から排出(排卵)されるのを促進する薬です。

一般的には、月経不順や無月経、排卵障害が原因の不妊症の治療に使われますが、排卵が普通にある場合でも、人工授精や体外受精のときに、妊娠率を上げる目的でもよく用いられます。

 卵巣には、卵子を包んでいる卵胞がつまっており初潮から閉経までの間に、毎月1個ずつそれが成熟して、左右交互に排卵されます。
 
排卵の調節には、脳の中の間脳視床下部と脳下垂体と卵巣とが、相互に関連しあっています。

間脳の視床下部から黄体形成ホルモン放出ホルモンが分泌され、その刺激により脳下垂体から卵胞刺激ホルモンが分泌され、このホルモンが卵巣を刺激し、卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)が脳に作用して排卵がおこります。

したがって、脳の間脳、下垂体系や卵巣に問題があると、排卵がスムーズにいかなくなり、無排卵の状態になって、妊娠も不可能になります。

 クエン酸クロミフェン製剤(内服剤)は、間脳にはたらき、黄体形成ホルモン放出ホルモンの分泌を促し、その結果、下垂体から分泌された卵胞刺激ホルモンが卵巣にはたらき、排卵をおこさせます。

この薬は、無排卵周期症や第1度無月経などの比較的軽い排卵障害では、非常に高い効果がありますが、頸管粘液(けいかんねんえき)の減少や、子宮内膜(しきゅうないまく)の発育が悪くなったりすることがあります

hMG(下垂体性ゴナドトロピン)製剤(注射)は 卵巣を直接刺激することによって排卵をひきおこす、排卵誘発剤です。

hMG製剤を使用すると同時に多数の卵胞が刺激を受けるので、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と言う症状が起きることがあります。

同時に多数の卵胞が刺激を受けて発育してくるため、卵巣が腫(は)れてしまい、おなかに水がたまります。さらに重症になると胸にも水がたまり、血管の中の水分が不足するので、血液が濃くなって粘り気が増します。

自覚できる卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は、腹満感や、下腹部痛、体重増加、腹囲増加、尿量や尿の回数の減少、口が渇く感じなどです。

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)がおきてしまったら、卵巣が腫れ、下腹部痛、帯下(たいげ)(おりもの)の増加、腹満感、尿量減少などの症状がみられます。

そのような症状がある患者さんには治療を受けた病院で至急相談するようにお話しています。

患者さんのお体を拝見すると脾陽虚であったり腎陽虚であったりと様々ですが受ける印象としては体の陰陽バランスが崩れている状態です。鍼灸治療は陰陽バランスを調え、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の症状を軽減するのに有効であると考えます。


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壽堂日記27年1月24日「不妊治療・胚移植と鍼灸。」

2015-01-25 05:41:19 | 日記

不妊治療で「胚移植」をされる患者さんが来院されました。当院では刺さない鍼を使用する「積聚治療」で不妊治療を施術しております。

今回は採卵で卵巣が腫れてお腹が痛いと言う事でしたが、鍼灸治療をすると痛みが緩和しました。

「胚移植」の直前と移植後に鍼灸治療を受けると妊娠率や出産に至る確率が高まる事はよく知られており「胚移植」前後に治療を受けられる患者さんは多いのです。

この元になった研究はアメリカのメリーランド大学医学部統合医療センターの研究員らの調査で「体外受精時の胚移植の前後に鍼治療を受けることで、その後の妊娠率や出産に至る確率が高まることが明らかになった。」と報告されています。

この報告は欧米4ヶ国で実施された1366名の女性を対象に、体外受精時の胚移植の前後に、伝統的な鍼治療を受けた女性のグループ、にせの鍼治療を受けた女性のグループ、そして、何も施されなかった女性のグループのその後の成績を比較したところ、伝統的な鍼治療を受けたグループは他のグループに比べて、妊娠した割合が65%、そして、出産に至った割合が2倍であることが分かったそうです。

体外受精時の胚移植の前後の鍼治療は、その後の妊娠率や出産率を向上させることがデータで裏づけたられた訳ですね。

鍼灸治療が不妊治療に有効であることを示す各国の論文としてはその他に代表的なものとして

・胚移植日にはり治療を行うと体外受精、顕微受精の妊娠率を上昇させる。
 273例を研究対象とし、はりを行わない群では22%の妊娠、はり治療群では36%の妊娠率であり、はり治療群が妊娠率が高かった。(アメリカ生殖医学学会誌2006年 デンマークでの研究結果)

・体外受精と顕微授精例の黄体期には、はり治療を行うと、はり治療群に妊娠率が高かった。
 225例を対象とした、はりを行わなかった群では13.8%、行った群では28.4%の妊娠率ではり治療群に妊娠率が高かった。
(アメリカ生殖医学学会誌2006年 ドイツでの研究結果)

・体外受精例にハリ治療を3回行い、ハリ治療群に妊娠率が高かった。
228例を対象に、HMG(排卵誘発剤)注射時、採卵前、採卵直後にハリを行い。行わない群では23%、ハリ治療群では31%の妊娠率で、ハリ治療群に妊娠率は高かった。
(アメリカ生殖医学学会誌2006年 オーストラリアから研究結果)

などがありますし、国内でも同様な研究成果が報告されています。

鍼治療がどのようなメカニズムで不妊治療の成功率を高めるのかはよく分からないとしていますが、ストレス緩和の効果も大きいのではないかとされています。

ストレスを受けることで、人の気血水の流れが変調します。

胚移植の前後の気血の流れの変調は、胚が着床し、妊娠が継続することに、何らかの影響を及ぼしていると考えられます。

体外受精を受ける女性にとって、胚移植の前後に鍼灸治療を受けて、気血の流れを調え、ストレスを緩和することはとても大切です。

当院では体外受精の胚を戻す前と後に鍼灸治療を受けることをお勧めしております。


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壽堂日記27年1月20日「大寒とビワの葉。」

2015-01-20 07:07:08 | 日記

今日は「大寒」ですね。「ビワの葉」はこの時期に採集された物が一番効能が高いとされています。

当院では「ビワの生葉」を使用した「ビワの葉温灸」を行いますが、「ビワの生葉」は当日採集の新鮮な物。「ビワの葉エキス」は寒中に採取した葉から作成した自家製の物を使用しています。

千葉は房州ビワの産地で治療院の敷地にもビワの木が生えています、庭先なので無農薬で厳選した葉を集めエキスを作成しています。
ホワイトリカーに漬け込んでありますが、美味しそうな匂いがします、一見するとウイスキーの様で間違えて飲まない様にラベルを貼ってありますが飲用も可能です。


ビワの葉エキスの作り方はとても簡単です
1ビワの葉は、年を越した大きい古い葉40~50枚を丁寧に拭きます。
 仕込むのは大寒の頃が一番いいそうです.

2葉の裏の毛をブラシでこすります。裏の毛があるとエキスの中に毛が残り飲用には向きません。

3適当な大きさに刻みホワイトリカーを葉が隠れるまで注ぎます。

4広口瓶にいれ密閉して冷暗所に2か月置き、その間葉の上下を偶に入れ替えます。

5ビワの葉を取り出します。

ビワの葉エキスの効能としては
◎温灸で痛みの緩和に使うのはもちろん

他にも

◎胃のもたれ・口内炎・歯痛・歯茎の腫れ・歯槽膿漏等
 
◎のどの痛み・せき等
 
◎内臓の痛みや炎症等
 
◎水虫・切傷・やけど等
 
◎捻挫・打ち身・皮膚炎など
 
などがありますが、原液は強いので使用法はよくご確認してお使いください。








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壽堂日記27年1月17日「東洋医学的な不妊治療とは?」

2015-01-17 06:03:22 | 日記

「ことぶき堂鍼灸院」では東洋医学的な人体観に基づき鍼灸による「不妊症」治療を行っております。

鍼とお灸を使用して治療しても、現代西洋医学的な発想に基づいて鍼灸治療を行えば、これは西洋医学的な鍼灸です。

 では東洋医学的な鍼灸とは?

東洋的な発想に基づいた鍼灸治療とは「気の概念」を基盤に置いた治療法であり、「気と陰陽」と言う観点から人体を捉える医学が東洋医学です。

当院では「積聚治療」と言う治療法を使用して「不妊症」の治療を行うのですが、「積聚治療」では人体を気の総体、組織の違いを気の重層構造としてとらえ、また病を気の偏りや滞りとして、治療とはその状態を補正する事と考えます。

 また私は「不妊症」の原因の多くは「冷え」と「瘀(お)血」と「ストレス」が関係していると考えています。

治療内容は患者さん一人一人のオーダーメイドですが、基本となる東洋医学的な考え方をご紹介したいと思います。


現代の様なストレス社会において、人は常にストレスに曝されています。ストレスは気・血・水の流れの変調をもたらします。

鍼灸治療は気・血・水の流れ・陰陽バランスを調える治療ですから、鍼灸治療は全ての人に効果があるといっても過言ではありません。

では具体的に「不妊症」の治療において鍼灸治療はどのような効果を持つのでしょうか。

東洋医学において、大きく分けて肝・脾・肺・腎の4つが、妊娠に影響すると言われています。

昔から、「腎は精を貯蔵する『作強の官』(生命エネルギーの強さを作り出すもの)と呼ばれ、人体の生命活動を維持する基本的な栄養物資である精を貯蔵し、五臓六腑の要求に応じて随時その精を供給し、それらの健全な働きを維持しているといわれています。

そして、全身に精力を与え、粘り強さや根気を生み出すとされています。

腎は、生殖用の精も貯蔵しています。

生殖用の精が不足すると、妊娠ができない様々な症状となって出てきます。
男の精と女の精が合体し、胎児の腎気となり妊娠が成立します。受精した時点で胎児の腎気の強弱が決まっていて、これが持って生まれる「先天の気」です。

腎の力は成長と同時にその力も高まっていきます。

中国の古典医書『黄帝内経』という書物の中では、腎気の年齢的消長を次のように述べています。

 女子では、「七歳で腎気の働きが活発化し、歯が生え替わり、髪も長くなる。14歳で天癸が充満し、任脈と衝脈の流通が増進し、月経が始まる。
21歳で体格は頂点に達し、28歳で筋骨は充実して引き締まり、毛髪は最も長く豊かになる。しかし、35歳になると陽明経脈の機能が衰え、白髪が進行し、49歳で任脈が空虚になり、月経が停止する」

 最近CMで見かける女子は7年ごとに節目を迎えるとの出典はこの『黄帝内経』の記載です。

生殖能力において腎は非常に大切であり、どんなに年齢が若くても、生活環境や食生活などで腎の力が不足して来ると、生殖能力が衰え、次第に卵巣機能や子宮機能が低下し、無排卵や無月経、子宮内膜が薄くなり、着床しにくいなどの症状が出てきます。

また肝は血を蓄え、体の血量を調節する働きをしています。東洋医学では「肝は血を蔵する」と言われています。

肝は過度の怒り(怒る・イライラするということ)が起きると、精神上の激しい刺激を受けてその正常な働きができなくなり、酷いときは吐血まで引き起こすことがあるといわれています。肝はストレスが影響を与えやすい臓腑であると考えられます。

つまり肝経の血の流れ、特に、骨盤内の流れが悪くなることにより、冷え症・お血が出現します。

女性の場合、骨盤内に子宮という血液を集めたり、出したりを繰り返す臓器があるために、月経がスムーズに繰り返さなければ、血という形で滞った悪い血が溜まってきます。

このお血の状態が進むと、軽い症状としては頭痛・肩凝り・月経前のイライラ・めまい・足の冷えとして現れます。


鍼灸を用いて、経脈上のツボを刺激することによって女性が本来持っている力を引出し、卵巣と子宮の機能が高まると、妊娠し易い体質へと改善されていきます。

また黄体機能不全、卵巣過剰刺激症候群などのホルモンのバランスの崩れには、東洋医学が非常に効果的です。
当院では東洋医学だけに全てを頼るのではなく、症状によっては西洋医学との併用が有効と考えます。

当治療院では鍼灸治療により不足している五臓の気を補い、「ストレス」「お血」「体の冷え」を治療し妊娠し易い体を造ることを目標としております。





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壽堂日記27年1月15日「不妊症の治療・鍼はいつ受けた方が良い?」

2015-01-15 08:27:09 | 日記

当院では不妊症の原因の多くが「冷え」と「瘀血」と「ストレス」であると考えています。

鍼灸による不妊症の治療をご希望の方から

「鍼はいつ受けたら良いですか?高温期に入ってからでいいですか?」

と質問を受けました。

高温期に何故なるのかを考えると、

排卵があり、排卵後の卵胞が黄体へと変化し、卵胞ホルモンと同時に黄体ホルモンが分泌をはじめます。高温期(高温相)は、この黄体ホルモンの作用によって起こります。

性周期は脳下垂体ホルモン(卵胞刺激ホルモン、黄体化ホルモン)、卵巣ホルモン(卵胞ホルモン、黄体ホルモン)などの影響によって卵胞期、排卵、黄体期、月経期のサイクルを繰り返します。


その間に子宮内膜の組織変化が起こり、黄体期を迎えた内膜(分泌期内膜)に受精卵が着床します。

高温期中に鍼灸治療を受ける事は子宮内の血流を高めストレスを軽減させる効果がありますが、排卵の前の段階から定期的に鍼灸治療を受けて母体となる女性の体を全体を調える事が大切であると考えます。

 


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