患者さんから「不眠症と自律神経失調症と肩こりの治療をお願いします。」と治療の依頼がありました。
3月中から神経が興奮して眠れず不眠と体調不安が続いているとのご相談でした。
季節の変わる時期であり温度差が激しく、菜種梅雨のような天気が続いていましたので一部「天気痛」ではないかと思われます。
WHO(世界保健機関)で鍼灸療法の有効性を認めた病気には
【神経系疾患】では 神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリーが挙げられており、「自律神経失調症」も含まれています。
当院では東洋医学的な人体観に基づき「自律神経失調症」に経絡的な治療を行っております。
ここで簡単に自律神経について説明すると。
自律神経には「交感神経系」と「副交感神経系」の二つの神経が存在します。
全身のほとんどの器官はこの二つの神経系がバランス良く働くことで適正に保たれています。
呼吸・血液循環・消化吸収・排泄・生殖・内分泌など、自分の意志ではコントロールできない部分のシステムを調整し、生命維持に必要な体内循環を整えるのが自律神経の役割であり、こうした自律神経がうまく機能しなくなった状態が「自律神経失調症」です。
自律神経をコントロールする中枢は視床下部という脳の一部です。
ここは同時にホルモンの分泌中枢の役目もあるため、急激なストレスを受けて自律神経のバランスが崩れると、成長ホルモンや性ホルモンなどのホルモン分泌にも影響がでてきます。
また反対に、更年期に生じる、急激なホルモンバランスの変化は「のぼせ(ホットフラッシュ)・火照り・冷え・不眠・精神不安」などの自律神経失調症状をもたらすことにもなります。
鍼灸やマッサージなどの外的刺激は、過緊張状態に陥った自律神経の働きを和らげることが出来ます。
さらに、皮膚刺激を通して脳の視床下部にも良い影響を与えて、ホルモン分泌のバランスを整えることにもつながります。
最近の研究では、「気持ちいい」という快刺激が脳内のβエンドルフィン等の神経ペプチドの分泌を活性化させ、自律神経の機能を正常化させる働きがあることが分かっています。
鍼やお灸の気持ちの良い治療を受けた後、眠くなったり、ふぅっと楽になるのは、治療の気持ちよさがβエンドルフィンを活性化させ、自律神経の働きを効果的に和らげるからだと思われます。
「自律神経失調症」は、目眩・肩こり・冷え性・不眠症・下痢・便秘・食欲不振やどの場所が悪いかはっきり分からない「不定愁訴」などの症状を一緒に伴っている場合が多くみられます。
今回の患者さんの治療は「心積心虚証」として本治法を「積聚治療」で行い標治法として天枢穴・安眠穴・百会・四神聡穴を配穴して治療しました。治療後は症状が改善されました。
当院は、東洋医学的な人体観に基づき患者さんが抱える具体的な症状に合わせて、お一人お一人に合わせた治療いたしております。
患者さんから「便秘」の治療について問い合わせがありました。
ことぶき堂鍼灸院では疼痛緩和の治療を行っておりますが、鎮痛薬の服用による
薬剤性便秘の方も多く疼痛緩和の治療後に便秘の治療をいたします。
便秘は現代医学では
①機能性便秘
②器質性便秘
③症候性便秘
④薬剤性便秘
に分類されています。
また女性の場合は、月経の前や妊娠初期は「黄体ホルモン」が多く分泌され、大腸の腸壁から便の水分が吸収されて便が硬くなり便秘になることがあります。
「黄体ホルモン」は妊娠したときに、流産しないように子宮筋の収縮を抑制する働きもあり、それが腸にも影響してぜん動運動を低下させ便秘になることがあります。
便秘は東洋医学では「秘結」と呼ばれ「気・血・水」のなかの「水」の不足、ストレスや緊張による「気」の異常、「血」の異常である「お血」などによって起こると考えられています。
さらに詳しく分類すると
①風秘
②寒秘
③気秘
④熱秘
などに分かれ、また産後の女性は血を大量に失って元気が弱っている状態なので便秘になりやすいとされています。
便秘の原因は様々あり、その証に沿った治療が必要とされます。
便秘に効果があるツボとしては「神門穴」「合谷穴」「支溝穴」「大横穴」「天枢穴」「足三里穴」「脾兪穴」の組み合わせが考えられますが、脈診・腹診をして丁寧に「積聚治療」を行い虚している気を補い「補助治療」として上記の経穴を使うと効果が上がります。