茂原市ことぶき堂鍼灸院

茂原市で鍼灸治療院を営んでおります。
東洋医学や日常生活のあれこれを日々綴っています。

壽堂日記25年7月30日「不妊症治療・腎虚証(心腎不交)。」

2013-07-31 05:22:21 | 日記
不妊症の患者様が来院されました。

問診・望診・腹診・脈診した結果「腎虚証」で証を立て治療を進めて行く事としました。

「腎虚証」と簡単に書きましたが
「腎虚証」は詳しくは
①腎陽虚証
②腎陰虚証
③腎精不足証
④腎気不固証
⑤腎気不納気証
などがありそれぞれ症状が異なります。

さらに臓腑相関弁証として
①心腎不交証
②心腎陽虚証
③脾腎陽虚証
④肝腎陰虚証
⑤肺腎陰虚証
などに分かれます。

今回主訴として不妊症の他に
肩凝り・目まい・心煩・不眠・心悸や腰のだるさ等がありました。

証としては「腎虚証」なのですが臓腑相関弁証は「心腎不交証」と判断しました。

「心腎不交証」を簡単に説明いたしますと、正常な場合は心陽(火)は腎に下降して腎水を温めており、また腎陰(水)は上に作用して「心火」が亢進しすぎないように「心火」を養っており腎(水)と心(火)がお互いに助けあっています。
この状態を東洋医学では心腎相交と言います。

しかし病や疲労や不規則な生活などにより腎水が不足したために心火が亢進したり、ストレスなどにより思慮過敏や情志が失調し心火が上部で亢進したため、下にある腎と相交できなくなると「心と腎の陰陽と火水の協調関係」が失調して心煩・不眠・心悸・健忘・頭痛・眩暈・耳鳴り・腰のだるさ・五心煩熱・咽乾・口燥などの症状が出ます。

治療方針としては心と腎の交通を再開させる事と腎陰を補い亢進している心火を下げる事になりますが、「腎虚証」として「腎虚」を丁寧に補う治療を行うと、亢進していた心火も降下して、心火亢進による諸症状も改善いたしました。

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壽堂日記25年7月29日「肩こり・頸凝り・ばね指の鍼灸治療。」

2013-07-30 04:46:59 | 日記
肩凝り・頸凝り・腰痛の女性の患者さまが来院。

肩が凝りすぎて頭が痛いと言う事でした。

「澤田流太極療法」で治療を開始し、背中の肩甲骨の間を指頭で探ると督脈の中枢の脇付近に硬い凝りがある。

その硬結を探ると『右の拇指に響きます。』との事でした。

治療しながら話を伺うと『実は何年も拇指のばね指で困っています。』との事でした。

督脈の中枢の脇付近とは膈兪穴の事ですが「ばね指」の治療穴として有名なツボです。(詳しくは深谷伊三郎先生の本をご覧ください。)

膈兪穴は肩凝りの治療穴としても通常使用しますが、慢性疲労の時に「五華の灸」として使用するツボの一つでもあります。

今回は膈兪穴に反応を見ながら灸七壮、ほかに曲池・合谷・外関を組み合わせました。お灸後は膈兪穴を押しても拇指に響くことは無くなり、拇指のばね指も痛くないと言う事でした。

指が痛いのに背中にお灸をすると症状が緩和するのは不思議に思いますがこれは「遠通し」と言う東洋医学の伝統的な技法です。

四肢の症状は体幹部を治療することで治し、体幹部の症状は四肢を治療することで治すのが東洋医学の特徴の一つですね。

主訴である肩こり・頸凝り・腰痛は良くなりましたが、今回一回の治療では数年越しの「ばね指」を完治させることが出来ません。何回か通院していただく事となりました。




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壽堂日記25年7月24日「腰痛の鍼=留気の訣。」

2013-07-25 07:11:11 | 日記
先日治療した患者様が来院「お加減如何ですか?」と尋ねると『先生この前の治療の時廻す鍼をして貰ったら痛みがスーと消えました、今日もあれお願いします。』と言うのです。

当院では刺さない鍼による「積聚治療」と刺す鍼の「澤田流大極療法」を症状に応じて使い分けていますが。この患者様は「澤田流大極療法」で全体治療をしています。

カルテを見てみると廻す鍼=「旋撚刺法」はしていないが置鍼後「雀啄」をしている事が分かりました。

「雀啄」と言うのは鍼の手技の一つで明代の高武編著「鍼灸聚英」に採録されている八法の「子牛搗臼」のことです。
すなわち臼をつく要領で鍼を上下動させることで強い刺激を与えることが出来ます。

この患者様は凝りが強かったのでこれも八法の「留気の訣」=置鍼後に雀啄術を施しましたがそれがとても気持ちが良く症状が改善した様です。

「雀啄」=「子牛搗臼」の手技は効果がありますが強刺激なので当院では初診の患者様には使用しません。

当院は伝統鍼灸の治療院なので「子牛搗臼」や「留気の訣」の他にも「焼山火」や「透天涼」などの医学の古典籍に採録されている手技を良く用います。

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壽堂日記25年7月22日「鍼灸による不妊治療(腎虚症)。」

2013-07-23 06:00:26 | 日記
当院では刺さない鍼を使用した不妊治療を行っております。
不妊症の原因の多くは「冷え」と「お血」と「ストレス」です。

当院では「腹診」で証を立てそれに従い治療をして行くのですが私の臨床経験的には「腎虚症」の患者様が比較的多いのです。

東洋医学の古典である「難経」16難には腹診で「腎の病は臍の下に動気ありこれを按ぜば牢(=硬結)もしくは痛む。」とされています。
腹部に「お血」がある人は腎の領域に硬結や痛みや動気が出やすい傾向にあります。

ここで「腎虚証」とは何かについて簡単に説明してみたいと思います。
「腎」は六臓六腑の内の一つで「臓」=陰に属します。

東洋医学では「腎」は

①精(=腎精)を蔵する。
「腎」は発育成長と生殖機能を有しています。
その為「腎」に異常が起きると活動が低下、身体が冷え、生殖能力が低下したり疾病にかかりやすく治りにくい等の症状が出ます。

②津液を主る。
全身の水分代謝を調節する働きがあります。
その為「腎」に異常が起きると、浮腫み、尿閉、頻尿、下痢などの症状がでます。

③骨を主る。
「腎精」には髄を生ずる作用があり、髄は骨の中にあり骨は髄により滋養されています。
その為「腎」に異常が起きると、骨格の異常や発育不良などの症状がでます。

④髪に反映する。
毛髪は精と血によって養われており
その為「腎」に異常が起きると白髪、脱毛などの症状が出ます。

⑤耳と二陰に開窮する。
耳の聴覚機能は腎精と関係が深く、二陰とは前陰(外生殖器、小便口)後陰は(肛門、大便口)の二つを指します。
その為「腎」に異常が起きると耳鳴り、難聴、頻尿、遺尿、尿少、尿閉などの症状がでます。

⑥腎は納気を主る。
納気は気を受納することですが深い呼吸に関係し、吸気を臍下丹田まで取り入れて、精を元気(原気)に化し活性化しています。
その為「腎」に異常が起きると浅い呼吸や呼吸困難など「腎不納気」と言われる症状が起きることがあります。

以上の様な症状が「腎」が虚している事により生じている場合は「腎虚証」として「腎」を補う治療を進めて行く訳です。

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壽堂日記25年7月20日「当院の不妊治療と不妊に対する東洋医学的な考え方。」

2013-07-20 06:53:28 | 日記
当院では不妊治療を行っております。当院の不妊に対する東洋医学的な考え方をご紹介いたします。 現代のストレス社会において、人それぞれ気・血の流れの変調は必ずあります、ですから鍼灸治療は全ての人に効果があるといっても過言ではありません。 では不妊症の治療において鍼灸治療はどのような効果を持つのでしょうか。  東洋医学において、大きく分けて肝・脾・肺・腎の4つが、妊娠に影響すると言われています。実際に不妊治療を受けている人を観察すると、特に肝・腎の力が不足している人が多く見られます。昔から、「腎は精を貯蔵する『作強の官』(生命エネルギーの強さを作り出すもの)と呼ばれ、人体の生命活動を維持する基本的な栄養物資である精を貯蔵し、五臓六腑の要求に応じて随時その精を供給し、それらの健全な働きを維持しているといわれています。そして、全身に精力を与え、粘り強さや根気を生み出すとされています。  腎は、生殖用の精も貯蔵しています。生殖用の精が不足すると、妊娠ができないいろいろな症状となって出てきます。男の精と女の精が合体し、胎児の腎気となり妊娠が成立します。受精した時点で胎児の腎気の強弱が決まっていて、これが持って生まれる「先天の気」です。腎の力は成長と同時にその力も高まっていきます。中国の古典医書『黄帝内経』という書物の中では、腎気の年齢的消長を次のように述べています。  女子では、「七歳で腎気の働きが活発化し、歯が生え替わり、髪も長くなる。14歳で天癸が充満し、任脈と衝脈の流通が増進し、月経が始まる。21歳で体格は頂点に達し、28歳で筋骨は充実して引き締まり、毛髪は最も長く豊かになる。しかし、35歳になると陽明経脈の機能が衰え、白髪が進行し、49歳で任脈が空虚になり、月経が停止する」  最近CMでよく見る女子は7年ごとに節目を迎えるとの出典はこの『黄帝内経』の記載です。  つまり、生殖能力において腎は非常に大切であり、どんなに年齢が若かくても、生活環境や食生活などで腎の力が不足して来ると、生殖能力が衰え、次第に卵巣機能や子宮機能が低下し、無排卵や無月経、子宮内膜が薄くなり、着床しにくいなどの症状が出てきます。  肝は血を蓄え、体の血量を調節する働きをしています。東洋医学では「肝は血を蔵する」と言われています。肝は過度の怒り(怒る・イライラするということ)が起きると、精神上の激しい刺激を受けてその正常な働きができなくなり、酷いときは吐血まで引き起こすことがあるといわれています。つまり肝経の血の流れ、特に、骨盤内の流れが悪くなることにより、冷え症・お血が出現します。女性の場合、骨盤内に子宮という血液を集めたり、出したりを繰り返す臓器があるために、月経がスムーズに繰り返さなければ、血という形で滞った悪い血が溜まってきます。このお血の状態が進むと、軽い症状としては頭痛・肩凝り・月経前のイライラ・めまい・足の冷えとして現れます。 不妊症では、腎・肝・脾の3臓が大切です。つまり腎経・肝経・脾経のいずれかが弱っている事により、不妊症の諸症状が出てくるのです。鍼灸を用いて、特に腎経・肝経のツボを刺激することによって、自分が本来持っている力を再び取り戻し、卵巣と子宮の機能が高まり、妊娠しやすい体質へと改善されていくわけです。卵巣機能不全などのホルモンのバランスの崩れには、東洋医学が非常に効果的です。けれども東洋医学だけに全てを頼るのではなく、症状によっては西洋医学との併用が有効です。 当治療院では鍼灸治療により不足している五臓の気を補い、「体の冷え」を治療し妊娠しやすい体質に改善をいたします。

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