今日も神奈川県は暑くなりました。こう暑い日が続くと、そろそろ身体も夏モードになってきているように感じます。
ところで。今日6月20日はオッフェンバックの誕生日です。
ジャック・オッフェンバック(1819〜1880年)はドイツに生まれた後にフランスで活躍し、1860年にフランスに帰化した作曲家、チェリストです。因みにジャック・オッフェンバックという名前は父親の出身地であるドイツ・フランクフルト近郊のオッフェンバッハ・アム・マインからとったペンネームで、本名はヤーコプ・レヴィ・エーベルストといいます。
オッフェンバックは今日聴かれるオペレッタの原型を作ったことから『オペレッタの父』と言われ、音楽と喜劇との融合を果たした作曲家として重要な存在です。美しいメロディーを次々と生み出すことから、
イタリアオペラの巨匠ジョアッキーノ・ロッシーニ(1792〜1868)はオッフェンバックを“シャンゼリゼのモーツァルト”と評しました。
オッフェンバックといえば、何と言っても喜歌劇《地獄のオルフェ》が挙げられます。日本では《天国と地獄》といった方が分かりやすいでしょうか。ギリシャ神話のオルフェウスの冥府下りをとんでもないドタバタ喜劇にしたこの作品はオッフェンバックの作品の中でも特に有名で、現在でも世界中で上演されています。
そして、それに匹敵するほど上演されているのが、未完の歌劇《ホフマン物語》です。《ホフマン物語》はオッフェンバックの4幕の正式なオペラ(オリジナルは5幕7場)で、1881年2月10日にパリのオペラ=コミック座で初演されました。
物語の内容は、主人公の詩人ホフマンが、歌う人形のオランピア、瀕死の歌姫アントニア、ヴェネツィアの娼婦ジュリエッタと次々に恋に落ちるものの何れも破綻するという自身の失恋話を語り、最後には現在想いを寄せている歌姫ステラへの恋にも破れてしまうという、何とも救いのないものです。ただ、このオペラは未完のまま作曲家が死去してしまったこともあって数多くの版があり、未だに謎の多い作品とされています。
オランピアのアリアなど数々の名曲がある《ホフマン物語》ですが、その中でも群を抜いて有名なのが『ホフマンの舟歌』でしょう。娼婦ジュリエッタとの恋の場面で歌われることで有名な『ホフマンの舟歌』ですが、実はこれは作曲者唯一のドイツ語の歌劇《ラインの妖精》という作品からの流用です。
フルートから始まり、さざ浪のようなハープにのせて歌われる舟歌はオーケストラのみでも演奏されることがあります。しかし、やはりこの曲の醍醐味はオペラとしてソリストや合唱が入ったかたちでの演奏でしょう。
そんなわけで、オッフェンバックの誕生日である今日は、名曲『ホフマンの舟歌』をお聴きいただきたいと思います。美しいオーケストラの響きにのせて幕を開けた中で歌われる、この上なく優雅な舟歌をご堪能ください。