共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

12年に一度の日向薬師の寅薬師例大祭

2022年04月16日 21時00分21秒 | 神社仏閣
昨日からの雨は未明には上がり、少しずつですが陽が差してくるようになりました。そんな中、今日は伊勢原市にある日向薬師へ参詣するために出かけました。

毎年寅年は薬師如来の年とされていて、薬師如来を祀る各地のお寺で秘仏の御開帳や法要が執り行われます。日向薬師でも12年に一度の寅年の例大祭に秘仏本尊が御開帳され、稚児行列と『神木(しき)のぼり』とよばれる法要が挙行されます。

伊勢原駅から日向薬師行きのバスに乗って現地に向かっていたのですが、このバスの運転手が何だかチンタラチンタラ運転する人で、いつも以上に到着するのに時間がかかっていました。ようやく終点に到着すると、いるはずの稚児行列の子どもたちが見当たりません。

バス停横の茶店の人に伺うと

「今行ったばっかりだよ。」

というので慌てて追いかけてみると、ちょうど仁王門に向かう階段に色鮮やかな衣装に身を包んだ子どもたちが登っていくところでした。もう少しバスがキビキビ動いていれば、もしかしたら間に合ったかも知れませんが、そんな呑気なことは言っていられません。

とりあえず子どもたちの後から、普段なら絶対にしない速さで石段を駆け上がって先回りし、



どうにか稚児行列が登ってくるところに出ることができました。



みんな袴の裾を踏みそうになったり



男の子の烏帽子や女の子の冠が落ちそうになったりしながらも



本堂へと続く最後の石段に差しかかり、



大人たちと一緒に急角度の階段を登っていきました。そして無事に本堂前の境内にたどり着くと



子どもたちも役目を果たしてホッとしたような表情を見せて、最後には



御貫主や先導役の山伏と一緒に記念撮影をしていました。

本来、日向薬師の例大祭は毎年4月15日に行われますが、今年は12年に一度の寅年の例大祭であることから一日ずらして土曜日の開催となりました。もし昨日だったら雨の平日となってしまっていましたから、はからずもお天気の土曜日の開催となって本当によかったと思います。

今日は秘仏本尊の御開帳もされているということで、本堂の隣の宝城坊(ほうじょうぼう)に入ることにしました。こちらの中央には大きな御厨子があり、その中に



国指定重要文化財の薬師三尊像(平安時代)が秘仏として祀られています。



ノミ痕を残す鉈彫りの名品として名高いこの御本尊は、今日の例大祭を終えると次回の御開帳は来年の正月三が日となります。そうした意味でも、今日の例大祭は特別なものでした。

さて、13時から本堂の前で『神木(しき)のぼり』という呪法(しゅほう)が執り行われることとなりました。

これは、かつて修験道の道場でもあった日向薬師(霊山寺)で行われていた呪法です。明治の神仏分離令で途絶えていたものを昭和49年に復活させ、今日まで伝えています。

先ずは当山の修験者と客僧修験者との『山伏問答』から始まります。先に日向薬師の修験者が入場した後に、山城国(現在の京都府)醍醐寺からの客僧が訪れ、



修験道についての問答を始めます。

無事に迎え入れられた客僧は、正面に設えられた祭壇に



背負っていた笈(おい)を置き、不動明王立像を御開帳します。

その次に『斧の作法』が始まります。これは護摩木を焚く場所を切り拓く様を表すもので



大きな斧を持った修験者が「エイ!エイ!」と斧を振り下ろし、場の邪気を払います。

その次に行われるのが『宝弓(ほうきゅう)の作法』です。修験者が



不動明王の御前で弓を捧げ、青龍・白虎・玄武・朱雀を表す幡が翻る結界の四方に向けて



祓詞(はらえことば)を述べながら矢を射ます。

次に『神木(しき)のぼり』が始まります。寺域から切り出された神聖な木に



修験者が登り、本堂の御本尊に向けて願文を奏上し、



剣を抜いて「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」という『九字の真言』を唱えます。

修験者が神木から降りると、



いよいよ護摩木焚きが始まります。般若心経が唱えられる中、



不動明王の前に灯された燈明から採火した松明を



護摩壇の杉の葉に当てると



徐々に火が回り始め、やがて



もうもうと煙が立ち昇ります。

私の対岸にいた人たちは杉の葉の燃える煙に燻されて、むせたりはらったりしながら大騒ぎ。事前に風上を確保しておいて、本当によかったと思います。

そうこうしているうちに



護摩壇から炎が立ち昇りはじめ、辺りにもの凄い熱波が広がりました。やがて不動明王の御真言が唱えられる中、導師によって護摩木が次々と炎の中に投げ入れられると



燃え盛る炎のかたちが



まるで不動明王像の光背の迦楼羅炎光(かるらえんこう)のように渦巻きます。

その後、薬師如来の御真言が唱えられる中で護摩木が焚かれ、全ての護摩木が燃えると



護摩壇を崩してならした上を修験者が裸足で歩く『火渡り』が始まります。始めに



導師によって表白文が読み上げられ、その後次々と修験者たちが火の上を渡っていきました。

本当はその様子も撮影したかったのですが、あまりの熱さにスマホが

「本体が熱くなっているため、カメラを終了します。」

と音を上げて、一方的にカメラをシャットアウトしてしまったのです。それでも何とか撮影しようと奮闘したのですが、ようやく撮れたのは



最後の一人が火渡りする寸前のみでした(泣)。

全ての修験者が火渡りをした後で、居合わせた参列者も火渡りに参加することになりました。先程修験者が渡った上に杉の葉が敷かれ、その上を



参列者たちが次々と渡っていきます。

私も勿論渡らせていただきましたが、ついさっきまで炎が燃え盛って場所ですから、いくら杉の葉が敷かれあるとは言いながらも、なかなかの熱さでした。ここを裸足で渡った修験者の足の裏は、一体どうなっているのでしょうか…。

そして、



無事に火渡りをすると、修験者たちから護摩木の炎で清められた紅白の餅が渡されました。私がもらった餅には何やら印がついていたのですが、

「印付きの餅を受け取った方は護摩木受付へ行ってください。」

と言われて行ってみると



『日向のしゅげんちゃん』のラバーキーホルダーが当たりました(笑)。

例大祭にあわせて、



本堂前の御結縁柱(ごけちえんばしら)も新しくなっていました。この柱には本堂内の御本尊と繋がる五色の布が付けられ、参拝者は



その布を持って礼拝することで、御本尊との御縁を結ぶことができます。

12年に一度の法要に参加することができて、貴重な体験ができました。日向の森の爽やかな風を受けながら山を下り、清々しい気持ちでバスに乗り込みました。

次回この法要に臨むことがあるとしたら、私は還暦を過ぎていることになります…。


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