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共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

恩師の御冥福を祈念して〜思い出のベートーヴェン交響曲第3番《英雄》より第2楽章『葬送行進曲』

2021年11月14日 14時00分15秒 | 音楽
私にとって、またしても悲しい知らせがありました。

私がヴィオラを弾くきっかけをくれた高校の恩師が、先日11月3日の文化の日に他界されていたことが分かりました。享年79、数年前に脳腫瘍を患われて手術もされたようですが、直接の死因は誤嚥下性肺炎とのことでした。

私が入った県立高校には吹奏楽部は無くオーケストラ部があったのですが、そこでは顧問である恩師が入部してきた部員の担当楽器をほぼ独断で決めていました。管楽器は基本的に中学校での経験者しか受け付けていなかったため、主に弦楽器担当を振り分けていました。

女子の殆どがヴァイオリンになる中で男子はチェロやコントラバスになる確率が高かったのですが、私は高校入学当初かなりのチンチクリンだったこともあって、早々に大型楽器は無理と判断されました。そんな私の体格を見て恩師が渡してきたのが、他ならぬヴィオラだったのです。

はじめは見たこともなかった楽器だったので戸惑いましたが、それでも先輩方に教えていただきながら教則本と首っぴきになって練習していました。何しろヴィオラの楽譜にはト音記号やヘ音記号といった馴染みのあるものではなく


ハ音記号という記号が使われているので、私は入部早々それまで見たこともなかった記号とも格闘することになったのです。

しかも私がいたオーケストラ部というのが、4月に入部してきたばかりの団員に練習を積ませて、その年の11月3日の文化の日に全員舞台にのせて定期演奏会を開くという、なかなか無茶なことをする部活でした。しかも、そんな素人集団だからといっていわゆる素人オケに有りがちな軽めの小品を並べてお茶を濁すのではなく、ベートーヴェンやモーツァルト、ドヴォルザーク、チャイコフスキーといったガチのクラシックを演奏することで、周辺地域にも知られていた部活でもありました。

私が現役時に演奏したのも

◎1年生の時

●ワルツ《ドナウ川のさざなみ》
(イヴァノヴィッチ)
●イタリア奇想曲
(チャイコフスキー)
●交響曲第5番《運命》
(ベートーヴェン)

◎2年生の時

●ピアノ協奏曲第5番《皇帝》
(ベートーヴェン)
●交響曲第9番《新世界より》
(ドヴォルザーク)

◎3年生の時
●歌劇《運命の力》序曲
(ヴェルディ)
●交響曲第25番より第1楽章
(モーツァルト)
●バレエ《白鳥の湖》組曲
(チャイコフスキー)

という、いずれ劣らぬ大曲ばかりでした。因みに《皇帝》のピアニストは、恩師が個人的にピアノを教えていた当時小学校5年生の女の子でした。この子は後に故中村紘子さんのマスタークラスを受講したりもしていた実力の持ち主で、高校生だった我々もそのテクニックに驚いたものでした。

これらのプログラムに、アンコールとしてシベリウスの交響詩《フィンランディア》を演奏するのが通例でした。こうしてみるとどれもこれも高校生が演奏するには大変な曲ばかりで、今考えてもよくやったな…と思います。

エキストラもいるとは言えこうした大曲を11月の本番までに完成させるために、団員たちは毎日自主朝練や自主昼練、放課後の合奏練習に合奏後の居残り自主練、楽器を持ち帰ることが可能な場合は自宅での自主練も重ねました。更に夏休み中には学内にある宿泊施設に泊りがけで4泊5日の合宿も行い、正に同じ釜の飯を食った仲間としての絆を深めていきました。

このオーケストラ部からは、私も含めて何人か音楽大学に進んだ部員もいました。そして卒業後にOBやOGとなった元部員たちは、音大進学組も含めて次の定期演奏会に賛助として参加したりもしていました。

そんな中で、個人的に一番印象に残っている定期演奏会は実は現役中のものではなく、卒業後に初めてOBとして参加した定期演奏会のメインだったベートーヴェンの交響曲第3番《英雄》です。これは自身が初めて指導に参加した曲でもあり、また大学の同期の何人かにエキストラをお願いして共演してもらったこともあって、自分の中では特に思い出深いものとなっています。

それにしても、かつてオーケストラ部の定期演奏会本番を開催していた11月3日に恩師が逝去されたということは、教え子の一人として感慨深いものがあります。地元にいる後輩に聞いてみたところ、他界されて間も無いことと、時節柄まだコロナ禍が完全に鎮静化したわけではないこととで弔問は遠慮してもらっているとのことでしたが、後日オンラインで偲ぶ会を開催する予定とのことでした。

悲しみは尽きませんが、今日は恩師の追悼のために、個人的に思い出深いベートーヴェンの交響曲第3番《英雄》の第2楽章『葬送行進曲』を贈りたいと思います。


最後に…


本田忠義先生、貴方が右も左も分からない高校1年生のチンチクリン坊主だった私にヴィオラという楽器をあてがってくださったことで、今日の私があります。通常の高校生生活では得ることのできないような貴重な経験を積むことができたことは、私の人生の宝です。

教員採用試験に合格することができず、先生の後を引き継いでオーケストラ部を指導するという約束を果たせなかったことは今でも心残りですが、形は違えど子どもたちに音楽を教える仕事に就いたことを喜んでいただけたことが何よりでした。本当に 本当に、本当に、有り難うございました。

ここに謹んで、先生の御冥福を御祈念申し上げます。

合掌。



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