共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

甘く哀しい桃の香に…

2021年07月15日 22時05分20秒 | 日記
今日、たまプラーザ教室の生徒さんが一人退会されました。私が音楽教室講師のキャリアをスタートさせて間もない頃に入会されてから20年以上続けてこられた、上御得意様と言っても過言ではない生徒さんでした。

音楽教室は義務で通う学校ではありませんから、生徒さんには通う辞めるの自由が保証されています。ただ、今回はちょっと信じ難い理由での退会となってしまったのです。

私がたまプラーザで教室を開講してから20有余年、今まで細々とながら様々な生徒さんたちと楽しくレッスンしてきました。その間、勿論入会する方もあれば退会する方もおられました。

先程の生徒さんは、長いこと木曜日のたまプラーザ教室にレッスンに通ってくださっていました。ところがここ数年はたまプラーザ教室の生徒数がどんどん減少してしまって、先月大学受験体制に入るために退会した生徒さんを除くと、とうとう先程の生徒さん一人だけになってしまったのです。

私はたとえ生徒さんが一人になったとしてもレッスンを続けていくつもりでいましたが、そんな私の元に、先週の水曜日に会社から一通のメールが届きました。そこには、驚くべきことが書かれていました。

現在、私はたまプラーザに本店のあるヤマハ音楽教室で、木曜日にたまプラーザ、水曜日にあざみ野でレッスンをしています。その状況で音楽教室からの

「社長からの伝言です」

というタイトルの付けられたメールには

「たまプラーザの生徒さんがひとりになってしまいました。そのたった一人の生徒さんのレッスンのために先生(私)に交通費を出すのも大変なので、〇〇さん(先程の生徒さん)にあざみ野教室に移動してもらってください。」

と書いてあったのです。

正直、我が目を疑いました。

通常音楽教室にレッスンに通われるお客様としての生徒さんは、御自身の都合に合わせて通う教室と曜日と時間帯を選んで契約を締結します。そのお客様に対して音楽教室側はこともあろうに

「うちでアンタの残ってる生徒さん一人のためだけに木曜日のたまプラーザ教室のレッスン続けさせると、アンタに対する交通費をわざわざ出さなきゃいけなくてしんどいんで経費節減を兼ねてあざみ野教室に一本化させるから、教室を移動してくれるようにアンタから生徒さんに言っといてくんない?」

と言ってよこしたことになるのです。

仮にもヤマハ音楽教室の看板を戴く株式会社の社長であれば、本來こんな会社側の自己都合でお客様にお願いしたいことがあるのなら、その理由について詳細に述べた手紙をしたためて封筒に入れて切手を貼って郵送くらいは最低限礼儀としてすべきです。それをこともあろうに部下に伝言してそれをメールで送信させ、更にそれを私から生徒さんに伝えさせるという暴挙に出たわけです。

先週の時点で、社長からの指示通り生徒さんに私から教室移動の要請をお伝えしました。すると、それを聞いた生徒さんは

「何故こんなことを又聞きで聞かされなければならないのでしょうか?」

と大変なご立腹ぶりでした。

それはそうでしょう、長年お月謝を払って通ってみえていた生徒さんからすれば、あまりにも軽んじられた扱いを受けたわけですから。しかも『講師の交通費を出すのも大変だから』といってよこしていましたが、そもそも生徒さんから徴収したお月謝の中に我々講師の交通費実費も含まれているはずなのに、それを払うのもしんどいという社長の言い分に

「こちらは毎月一万円以上収めているのに、それでもまだ足りないとでも言わんばかりの社長さんの言い草、意味が分かりません!」

と怒り心頭に発してしまったのです。

そして今日、20年以上もレッスンを続けてくださった上御得意様に遂に三行半を突きつけられてしまいました。こんなつまらない理由で退会者をだしてしまったのは、長い音楽教室講師生活で初めてです。

今日のレッスンの終わり際に、その生徒さんから



美味しそうな桃を頂きました。袋に入れて持ち帰る間にも甘い香りがマスク越しに鼻先をくすぐってきましたが、力及ばず退会者を出してしまったという事実が重くのしかかって、素直に喜べない自分がいました。

とりあえず今月末の木曜日まではレッスンに来てくださることになっていますか、どんな顔をして会えばいいのか今から憂鬱でしかありません。四半世紀勤めてきた教室から、まさかこんな仕打ちを受けようとは…。

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