今日はまたしても冷たい雨がそぼ降る、生憎の空模様となりました。こんな陽気の日には、何もする気が起こりません。
本来であれば今日はコンサートの本番がある日でした。しかし、御多聞に漏れず憎き新型コロナウィルスに阻まれて、敢無くキャンセルの憂き目にあってしまったのです。
仕事も無い教室も無い、やることも無い、そんな私の昨今のマイブームは『パイプオルガンのCDを爆音で聴く』ことです。大オルガンの重低音を聴いていると、頭も気持ちもスカッとします。
ただ、勿論バッハやブクステフーデのドカーン!という大規模作品もいいのですが、こんな雨の日には落ち着いた曲もいいものです。特に聴きたくなるのが、パッヘルベルの《シャコンヌ へ短調》です。
パッヘルベルと言えば、泣く子も黙る(?)カノンで知られています。むしろ、一般的にはカノンしか作っていない一発屋くらいに思われてしまっている節もあるようです。
しかし、ヨハン・パッヘルベル(1653~1706)は中期バロックを代表する作曲家で、南ドイツオルガン楽派の最盛期を支えたオルガン奏者でした。バッハの父親ヨハン・アンブロジウスとも交流があり、バッハの長兄ヨハン・クリストフのの家庭教師も務めました少年時代のバッハもパッヘルベルの作品を自身で写譜し、二重フーガ等の作曲技法を学んだといいます。
余談ですが、少年バッハは兄にパッヘルベルの楽譜を貸してほしいと頼んだのですが断られてしまい、しかたなく少年バッハは夜中に月明かりを頼りにして写譜を完成させたといいます(因みにバッハが晩年失明してしまったのですが、その一因はこの時の無理が祟ったのではないかと言われています)。ただ、無断で楽譜を持ち出して写譜していたことが兄にバレてしまい、折角書き上げた写譜ごと取り上げられてしまいました。最終的にその楽譜がバッハの手元に戻ったのは、兄の死後のことでした。
そんなバッハにも多大な影響を与えたパッヘルベルのオルガン作品の中で、個人的に大好きなのが《シャコンヌ へ短調》です。
パッサカリアと同じく一定の進行を繰り返す執拗低音の上に何ともメランコリックなメロディを紡いでいくこの曲は、パッヘルベルの数あるオルガン作品を代表する名曲です。今日はその名曲を、盲目の20世紀の大オルガニストのヘルムート・ヴァルヒャが、アルプのシュニットガーオルガンで演奏した名演でどうぞ。
Pachelbel: Ciacona In F Minor