(画像は勝手イメージ:勝手ナ物事語リ)
【赤い髪の女ツネ嬢】(21)
茶店の滴が垂れる窓の向こう側。
肌寒い外は輝きのない淡い灰色だった。
心の暗さで沈んでいた。
魚町(トトマチ)通りの人気のない濡れた舗道。
穏やかな風に流れる粉糠な驟雨で静かに煙ってた。
「カッキャン。アンタ苦しぃないんかぁ?」
❍○さんが鼻歌混じりで、ワイに訊いてきた。
コンマイ匙ぉ太い指先で摘まみ、珈琲カップの中を搔き回しながらやった。
「ナンもないですはぁ」
ワイ応えながら茶店の木枠窓に嵌った、細く流れる露で濡れた硝子。
俯いたまま首を無理やり曲げながら覗いた。
ワイ。❍○さんの方を向くのが厭ヤッタ。
コッチぉ観てる❍○さんの眼を覗くコトができなかったから。
短くなった煙草ぉ、口に挟みかけたら窓の外を人影が横切った。
入口扉に吊るされた小さな鈴が鳴った。
濡れた肩で扉ぉ押しながら、❍○さんの若い衆が戻ってきた。
ワイらの席まで、音もなく歩きながら近づいてきた。
❍○さんの傍らにくると腰を屈め、❍○さんの耳元に顔をよせた。
「頭(カシラ)ぁ。頭のゆぅとぉりですわ」
その後はワイには聴こえなかった。
❍○さん、若い衆が耳元で囁くのを、珈琲カップを掻き混ぜながら聴いていた。
若い衆の方を視もしなかった。表情も変わらなかった。
「そぉか。お前、ナンか飲むか?」
「イエ。自分。用ぉ事がありますさかい、コイデ失礼させてもろうてえぇやろか?」
「えぇで、御苦労ハンやったなぁ」
「ホナ、失礼します。」
ワイにいうとき、伏し目ガチやった。
「カッキャン。人サンな。イロイロやなぁ」
「ナンがですんか?」
「上等なモンはぁ、アンマシぃ居らんチュウことや」
ワイ。頭ん中フル回転してた。
高速すぎて、パンクしそうやった。
脆い胸ん中の心。冷え冷えやった。
駆け引きゴトなんかしてなかったんやけど。
恐かった。
誤解されるんが。
若いコロ ナニぉやっても嘘がと
夢ぇ掴むん 難しすぎました
希望は 叶えるコトも叶わぬもんやと
赤い髪の女ツネ嬢】(21)
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