静かさな夜 そぼ降る雨
静か騒ぎで深めます 夜を
何処かに逃げれゝばと 想いながらの そゞろ歩く石ノ畳道
何時の間に哀しさ捜し 心 啼き濡れまする
梅雨が もぉすぐ終わりましょうかと 少し汗ばむ夏の走りな此の晩
サッギで小雨が哀しげそうに サメザメと肩を濡らし降っていました
「さるかんとね? 」
歩くかぁ?
「ウチぃ 濡れるとスカンとぉ 」
濡れるの嫌ですからぁ・・・・
「よかとぉ? オイもぉ行くケン 」
いいのか? 行くぞ
登りの暗さナ坂道 古き石畳
歩きにくさは 想いとは裏腹な わざとな躓き誘いそう
「はよぉこんかッ! 」
早く来なさい
「知らんッ! もぉぅスカンッ! 」
「ナンバゆうとっと 三つごかッ! 」
ナニ言うか 三才の童みたいに
「手バ引っ張って 」
手を・・・・
「せからしかッ! 」
エェイッ面倒なッ!
「イヤとぉ? 」
キライなんですか わたくしが
「・・・・・バカ か 」
アホッ かぁ
言葉ジャレ合い 坂道下 電車の道まで届きましょうか
濡れたよぅに為って 聴こえてましょうか
下駄の石畳蹴る音 お供に
「キレカぁ! 」
綺麗ッ!
浴衣の貴女は額の汗 星影照らしで輝かせ
夜目にも白きハンカチ握り振り 素直に驚いてくださったッ!
僕は チョット得意げに喋りました
「ドゲンしても 観せたかったと 」
どうしてもこの景色 観せてあげたかった
貴女のお返事 無言返事
キット 浴衣の肩 降る霧雨沁みこみ 濡れていましょうかと
其れ確かめたくて 手を伸ばし触ろうとしたら ッ!
君の黒き瞳 綺羅綺羅ッナ 星影映し輝き コッチをッ!
僕の手 往き場をなくし夜の空気摑みます
幾度も 空気を
「ナンバしよっとぅ? 」
何をしてるの?
「ムッ虫が飛んどるケン 」
「暗かとに見えるとぉ 」
今度は僕が無言ナ返事ッ
「ウチ 見えると? 」
「なんがね? 」
「化粧ばしてきたとぉ・・・・ 」
僕は暗さな中 暗さが恨めしかった
眺めれば狭き湾の向こう 山肌隠すかと降る霧雨に 煙る街の灯り
互いに 想いの何か隠しで 黒色濃い染まりな港を見下ろせば
胸の想いの淵 覗けましょうかと そぉぅ出切ればと
微かに霧笛が流れ 暗い潮にと馴染まずに 視えない山ノ膚に吸われます
梅雨の終わりな晩は 言葉なき喋り
只タダぁ ナニをと 求めずにと
冷たい霧雨が 優しく肩濡らす儘にぃ
「ナンもせんとぅ? 」
「!ぇ 」
「ウチ 弱かと スカンッ!」
「ぁッ! 」
濡れれば 如何にかなるもんかッ!