【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

突破!

2006年10月03日 12時47分19秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
  


後二時間もすれば 夜が明けるはずだった
だけどあの時 もっと長い時間が かかった気がした
それでも、夜は明けようとしていた

自分にとっての夜だけが 明けた



 【遮二無二】


河川敷堤防国道の行き交う車の流れが切れたとき
道路に先に飛び出したのは 、真二と自分の乗った無灯火の単車だった。
直ぐに振動で震えるバックミラーに、迫り来る眩しいヘッドライト照明!


真横で並んで併走るスリーS助手席窓からつね、身を乗り出し箱乗り
ルーフ越しに風に負けまいとして喚き言葉で言ってきた。

「ちぃふぅ、捕まったらあかんよぉ! 」

 自分 前方睨みつけ大声で 「アホ! 」 

出した声は、速度を上げたキチガイマッハの排気音で掻き消された。
夜の冷たい烈風は つねの色つき髪を気が狂ったみたいに舞わす。
直ぐ横運転席窓のボン 助手席向いて怒鳴った!

「つねさん 窓ぉ閉めてください! 」

同時にボン、フロアミッション シンクロお構いなしで叩き込んで落とす
激しくミッションギアの金属同士が噛み合う音 荒む風の音に負けずに聴こえました。
車のフロント持ち上がり怒涛の加速! つねルーフの向こうに消えた。
直ぐに後ろの窓に、赤い髪になりきった女の白い顔 張りつく。
顔中 赤い髪が纏つき 両手で撫でると表情は 目尻が引き攣るように固まっていた。

 赤い唇の口だけ 開いたり閉じたりした

自分、掴んでいたアクセルバー限界まで捻った。
跳ね上がるフロントホーク、耳の後ろで真二が喚いた。 意味不明!
自分大声返事、「もっと前に座れぇ!ケツが重たいからやあ~! 」

 風と排気音に負けじと怒鳴り会話

「あほぉ! 男にくっつくかぁ! 」
「落ちても知らんで! 」
「わかっとお! 」

真二、自分の肩掴んでた掌 一段と力入れやがった

「!・・・」 堪えた

直ぐに迫って来る 橋の袂の黄色点滅信号交差点、
急激減速しながら右に曲がって 街角舗道縁石ギリギリ加速しながら凌いだ。
肩越しに後ろを視ると 真二も同じようにして振り返っている。
自分等が曲がってきた交差点から反対側へ橋を渡ったスリーS
橋から可也な向こで赤色ブレーキランプ瞬いたかと思ったら、
街中信号辺りで直ぐに消えた。

無灯火キチガイマッハ 裏街道突っ走り
男二人の鉄の馬 一夜限りの精一杯の駆動力 
無いもの強請りの逃げ道探し でした。



真二と自分。 暗がりでタバコの火を掌で覆って吸い
ボンが事を起こすのを待ちかねていた。

新しいバイパス道路に面した某郊外型パチンコ店
其の店の横手裏側の デッカイ駐車場の奥の暗がりで待機した。
暫くすると遠くで パトのサイレンが鳴くのが聞こえてきた。
直ぐに、数が増えた。 違う方向からも聞こえ始めた。
パチンコ屋表のバイパス道路を 何台ものパトが
サイレン吼えもって猛然と走り去っていった

「ボン、やってくれてるなぁ 」
「そぉやな 」
「・・・・ありがたいこっちゃで! 」
「そぅやねんなぁ 」
「さっきの電話が利いたんやで 」

此処に滑り込む前に、公衆電話から警察に一報した
『タブン騒ぎの元の男と思うんが土漠色した車で走ってた 場所はぁ・・・
  助手席には 女が・・・・ 』


「いくか 」 
っの真二の声 煙草のヤニで喉が遣られたのか、掠れていた。
「そぉやな 」

駐車場を出て何回か角を曲がると、停車したパトと鉢合わせ!
思わず、単車の速度が落ちかり 停車しかけたが、何かが違った感じ? 
検問の後始末をしていたのだろう、パトの後ろトランクに荷物を積んでいた。
他にも機動隊バスや数人の警察官が居たが、疲れているのか此方を見様ともしない。
コッチは無灯火だから、尚更かも。

 オモイッキリ加速した! 
 パトの傍を脇見もせずに突っ走った!!

暫く後先考えもしないで、突っ走りました。

気分が高揚してきます! 何かが可笑しくてぇ~!
真二が掴んでたワイの両肩を、
両掌で何度も打ちながら、高笑っています。
痛かったですけど、可笑しさの方が上ですねん!
腹の底からですねん。 
胸の何処かっから、何かが湧き揚がってきますねん。
余りにも笑い過ぎ、走る風圧のセイじゃない涙が
風で眼から耳まで伝わり流れます。


真二言いました
「久しぶりにぃ ワロウタで!っ 」
自分、単車の速度を落とし、ゆるゆると流しながら言います
「ぅん わろうたなぁ~! 」

最後に真二 ワイの背中を一発ド突き言いました

「此れで検問 突破やな 」

声は、真面目腐った声やった


 突破しました
 悔やむ夜を