【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

夜の赤に染まる 雪女

2005年08月15日 00時48分40秒 | 幻想世界(お伽噺) 
男はいつも気侭でした だから女の心は あてなく揺れ続けます
男が自分とは違う世界に行ってしまったと 気づかない儘なら 
此の世の果てまでも 二人はと想い続けます 
なのに何故 何処かに
何処とも消えていく 二人の世界

わたしが嫁いだのは あなたの心

硬く無くならない想いも 冬の世界が巡って来ると 冷たさで融けて往きます 
想いが影にならないのなら 無くなり様がないでしょう
其の想いが 厳寒の真冬の炎 月光の蒼なら 焔なら

女の研ぎ澄まされた心に 芽生えます 小さな焔が

女の常にと想う情念 男の虚ろぎな騙しの情愛 
絶対に混ざることなく焼かれます 意識の冷たい炎で

慣れと習慣で重なる心が 業火を燃やす炉になって
褥で 氷の情念を隠し火に
最初の焔が 
女と男が 気づかない間に チロチロっと 燃え始めます


街一番の高層マンションのベランダで 激しく吹く風を堪えて見渡すと 
夏でも溶けぬ雪を頂く青い山脈が 驚くほど近くに感じられます 
夜風が吹き込む様に 開け放たれた大きな一枚硝子の窓に 
日陰とりの 簾
湿気を帯び始めた風が 空中に小さく鳴らします
金色(こんじき)の風鈴 リンと 一度だけ
下げた小さな短冊 微かに揺れて

闇夜に小さく響きました

零時を過ぎた真夜中の 雨降る合図 稲光
もう直ぐにも 雨 風に湿り気が 

女の肌に冷たさが それでも流れる汗
男の肌に 欲する汗が 止め処なく 

男が 激しく求める女の唇 
女が意識を焦がして 首を捻って 逃げます

女の冷たい汗肌に 男の垂れる汗 男の熱持つ汗と混ざり合い
冷たい焔の炎の心が 決めさせます 絶てと
女の噛み締めた唇を割って 差し込まれた熱い舌が 
滑る歯茎を擽りながら 思わず緩んだ歯の隙間から 女の前歯の裏に
女の意識が 嗚呼と
 
氷の世界に組み伏せられた女が 求める男の首に回した艶の腕 
夏には光り輝く綺麗な湖水の 真冬の白く凍れる湖面のように 固まりました

引き寄せて 想いを絶つために

雷光 闇夜を照らして奔ります 同時に雷鳴 轟き音
何かの音が 隠されます
部屋の気持が です 隠されます 
一人になってしまった 命の遣り取りの 雰囲気がです

暗がりで女が 闇を梳く様に立ち上がると また風が
簾が振られます 風で
濡れた髪もです

雨が降り続けます
轟と成る雨音と共に


夜の暗さの中に 仄かに汗光りの肌影 
露な乳房の影の胸に 血の雫 
細い顎から


瞬く稲妻の光り 部屋の情景を切り取ります
連続して まるでストロボライト
稲妻の瞬き 刹那刹那で落ちる血玉 瞬く光りで止まりながら 空中に留まりながら 落ちます
赤い一粒の 雪のように 
落ち続けます

突風が 部屋に
白壁に描かれる 血飛沫模様の雪景色
吹かれる風に揺れもせず 景色の前に立つ 一糸纏わぬ 凍える夏の夜の 女

赤く凍りつく血化粧 赤い冬の 雪女
裏切りを許さぬ 凍える女

情愛の情けで 男を苦しませずにと

氷の心が 泣いていました 何故にと
裸の肌に 降る雨
涙が雨と混じって ベランダから 



夏の終わりの夜 最後に 再びの雷鳴
雷光が 想いの部屋を光りで満たして 隠しました

光りが醒めると 誰も居なくなっています 
一つの骸を残して


誰も