いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

東芝はこんなことでいいのでしょうか・・・宝物のメモリー子会社を売却し、元凶となった原発部門が残るのです。これはおかしい。

2017年09月20日 22時42分37秒 | 日記


 桐生君が100メートルで10秒を切り、その続報を書くはずで
した。しかし、その後、大きなニュースがあまりに続くので、桐生
君の続報をかきそびれてしましました。
 続報は、必ず書くとして、先に、別のニュースを取り上げます。
 まず、きょう20日のニュースです。
 東芝が、メモリーの子会社を、日米韓連合に売却することを決め
ました。
 東芝は、初め、メモリーの子会社を日米韓連合に売却する予定で
した。ところが、東芝が提携していたアメリカのWD社が猛烈に反
対し、一時は、東芝も、WDへの売却に傾きました。
 ところが、売却後の経営権をめぐって東芝とWD社が折り合いま
せんでした。WD社は、買収したあとのメモリー会社を、完全に自
社のものにするつもりだったようです。東芝は、それを拒否し、結
局、日米韓連合に戻りました。

 しかし、この売却は、そもそも、大きな疑問があります。
 前にも一度書きましたが、再度、書かなければなりません。
 なにか?
 それは、このメモリー子会社は、将来性が豊かな、これから大い
に期待できる会社なのです。東芝のメモリーは、世界的に信頼され
ており、日米で、産業の基盤を支えています。
 それを、東芝は売ってしまうのです。
 
 東芝は、原子力発電への無理な投資がたたって、大赤字に陥りま
した。大赤字だけだったら、まだ、なんとかなったかもしれません
が、決算で、その赤字を隠していたのです。粉飾決算です。
 もとはといえば、10年ほど前、東芝がアメリカの原子力発電の
老舗ウエスティングハウス社を買収したのが失敗でした。
 ウエスティングハウスといえば、原子力発電の世界では、老舗も
老舗、名門中の名門という企業でした。それを日本の東芝が買収し
た。
 このとき、あのウエスティングハウスを東芝が買ったという、妙
な高揚感みたいなものがありました。
 原発は、もう、日本が名実ともにトップだと。
 しかし、その後、東日本大地震が起き、福島原発が修復不能の事
態となりました。これで、原発の建設は、待ったがかかります。
 それは確かに東芝の原発部門がおかしくなった原因ではあったの
ですが、それ以前に、ウエスティングハウスは、福島原発の事故と
は関係なく、経営がかなり厳しくなっていたのです。原発の建設を
請け負ったものの、建設のプロセスで大きなトラブルがいくつも発
生し、資金繰りが苦しくなっていました。
 東芝がウエスティングハウスを買収したときには、すでに、経営
が苦しかったのだと思います。
 そして、東芝は、そのとき、ウエスティングハウスの経営があや
しいということを、もしかすると、気づいていなかったのかもしれ
ません。いや、気づいていても、あの名門ウエスティングハウスを
買収するのだという高揚感で、あえて、そこには目をつぶったのか
もしれません。
 
 ウエスティングハウスは、要は、東芝から、資金を融通してほし
かったということなのです。
 簡単にいえば、東芝は、利用されたのだろうと思います。

 そして、ウエスティングハウスの赤字のため、東芝本体そのもの
も、大赤字になってしまいました。
 東芝は、倒産の危機です。
 この危機から脱出するために、東芝は、カネになりそうなものを、
どんどん売却し始めました。
 パソコン部門がそうです。
 白物家電、テレビ、照明、東芝のシンボルだった家電をまるごと、
中国の企業に売却しました。
 東芝は、医療機器の部門で有力な企業だったのですが、その医療
部門も売却です。
 そして、最後に、東芝のIT部門の宝物であるメモリー子会社ま
で手放すのです。

 東芝に残るのは何か。
 原子力発電です。

 これはもう、いったい、どういえばいいのでしょうか。
 赤字の元凶、東芝の危機の元凶である原子力が手元に残り、東芝
にとって要であるメモリーや家電、医療機器を売り払う。
 こんなことがあっていいはずがないでしょう。

ここでおかしいのは、政府・経済産業省の姿勢です。
 東芝のメモリー子会社の売却は、経済産業省が関与しています。
 かつて、経済産業省が通産省だったころ、1960年代、70年
代に、通産省は、日本企業と手を携えて政策を立て、日本経済を拡
大してきました。
 柳田邦男さんの著作「日本の逆転した日」によると、かつて、ス
バルがスバル360という軽自動車を開発した時、通産省が全面的
にバックアップしました。スバル360が、箱根の急坂を登り切っ
て、芦ノ湖に到着したときは、スバルの社員と通産省の官僚が手を
取り合って喜びあったという話が、そこには、書かれています。
 政府・通産省が企業と二人三脚で進んで政策を「産業政策」と呼
びました。

 今回の東芝のメモリー子会社の売却は、久しぶりに、経済産業省
が企業に関わり、売却先を模索しています。

 しかし、いまこのときに政府・経産省が関与するのであれば、そ
もそも、なぜ、メモリー子会社を東芝に残す政策を立てなかったの
かと、ねっこから疑問に思います。
 メモリー子会社や医療、白物という東芝の宝物の分野をなんとし
ても残し、原発を切る。
 それこそが、いま取るべき方策だったのではないかと思います。

 東芝のメモリー子会社は、日米韓連合に売却されます。
 アメリカは、投資ファンドです。
 韓国は、韓国の半導体企業です。
 アメリカの投資ファンドは、買い取った株を、有利な条件で売る
ことにためらいなどありません。
 もし、韓国の半導体企業が、アメリカの投資ファンドに良い条件
で株を買うことを持ちかければ、投資ファンドは、喜んで売るでし
ょう。
 そうなると、東芝のメモリー子会社は、資本の半分以上が韓国企
業に取られ、韓国企業が経営に関わるようになります。
 ただでさえ、日本は、いま、半導体の分野で、韓国の後塵を拝し、
後れを取っています。かつで「電子立国」といっていた面影は、今
の日本には、ありません。
 このうえ、東芝のメモリー子会社が、韓国資本になれば、日本の
半導体は、回復が難しいぐらいのダメージを受けます。
 
 政府・経産省は、そこまでの危機感を持っているのでしょうか。
 いや、そんな危機感は、まるでないように見えます。

 日本の強みは、なんといっても、経済です。
 その経済を、自ら弱めるようなことをしていてはいけないでしょ
う。
 東芝のメモリー子会社、今回は売却するにしても、いずれ、日本
企業の連合体で、将来、買い戻すということを計画するべきだろう
と思います。
 それが、本当の産業政策だと思います。 
 このままではいけない。