いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

農協改革。日本の農業を衰退させたのは・・・学生が農業に就職するにはどうすればいいのでしょう。

2015年02月12日 16時11分10秒 | 日記

 安倍政権が、農協改革に着手しました。私は必ずしも安倍首相
を支持するわけではありませんが、しかし、今回の農協改革に関
しては、よくやったと思います。
 簡単にいえば、全国農協中央会(JA全中)による農家に対す
る統制を緩めようということに尽きます。
 新聞、テレビを見ていると、賛否両論あるようです。
 
しかし、私は、日本の農業を改革するポイントは、若い人にど
うやって農業の世界に入ってもらうかという、その一点にかか
っていると思います。
今回の改革がその小さな一歩になればいいと思います。

これから就職を目指す大学生の就活のシーズンに入ります。
東京の大手町や丸の内も、濃紺のスーツに白いシャツという就
活ルックの学生が、目に着くようになります。

さて、では、そういう学生の一人が、
「農業に就職したいなあ」
と思ったら、いったい、どうすればいいのでしょう。

そうなんです。
農業に就職したいと思っても、どうしたらいいのか、さっぱり
分からない。
というより、道がない。
JA全中が、農業に就職しませんかという募集活動をしたという
話は聞きません。
全中の改革に着手した政府の側にしても、農水省がなにかそうい
う募集活動をしたという話は、聞きません。
全中も農協も、農水省も、新卒の学生に対し、
「農業にいらっしゃい」というような募集活動をしたことは、まず、
ないでしょう。

これに対し、
企業は、電機メーカーや自動車メーカー、銀行、証券、生命保
険など、いろんな業種の企業が、一斉に採用計画を発表し、い
い学生を採用しようとします。
大企業だけではありません。中堅企業や中小企業も、いい人材
を確保しようと、合同で就職説明会をやったり、採用情報をあ
れこれ流したりする。

ところが、農業って、そういう活動を全くしません。
 
就職は農業にと考える学生もいるはずです。
ところが、いわゆる「リクルート」のなかで、農業は、埒外に
置かれているのです。

いわゆる就活は、「農業を除く」なのです。

どうしてこんなことになっているのでしょう。
日本の農業は、基本的には、農業をやっている家で、息子(場
合によっては娘)が跡を継ぐということでしか、農業は出来な
いのです。

そんなことはない。テレビで、脱サラして農業に入った人の話
を、やるじゃないか。
そういう声が出るかもしれません。
いや、それは、脱サラして農業を始めた人が、「ニュース」にな
るからです。なぜニュースになるかというと、珍しいからです。
脱サラして農業を始めた人がテレビに取り上げられいる間は、
農業は、だめでしょう。

大学を卒業する学生が、「私、農業をやりたいんですけど」とい
うとき、それに答えられる道が広く開放されてこそ、初めて、
日本の農業は、再生のコースに乗るのではないでしょうか。

いま、日本で農業をやっている人は、何人いると思いますか。
農水省の統計によると、2013年の時点で、日本の農業人口
は226万人です。
これは、タイプミスではありません。
たったの226万人です。
日本の総人口は1億2000万人ですから、わずかに、その1・
8%にしかすぎません。

しかも、これだけ少なくて、まだ減り続けているのです。
その4年前、2009年の農業人口は289万人でした。
たった4年間で、73万人も減っています。

JA全中は、TPP(環太平洋経済協力協定)に反対していま
す。TPPが締結されると、海外から農産物がさらに入ってき
て、日本の農業は衰退するというのです。

しかし、日本の農業人口がここまで減ったのは、TPPのせい
ではありませんよ。
TPPともアメリカともまったく何の関係もなく、日本の農業
人口は減り、日本の農業は衰退しているのです。
この日本の農業の衰退に、では、JA全中は、いや、農水省は、
そして、農業は、いったい、何をしていたのでしょう。
同じ農水省の統計によると、2013年の時点で、日本の農業
人口239万人のうち、65歳以上は147万人を占めます。
なんと61%です。
平均年齢も上がります。
日本の農業の平均年齢は、66・2歳です。

こんな状態で、農業を再生させるのは、無理です。

ひと目で分かりますが、いまの日本の農業に必要なのは、若い
人が農業に携わることです。
大学生にも、農業をやりたいという人が多いはずです。どの大
学にも農学部があるでしょう。もちろん、農学部じゃなくても、
農業をやりたいという人は少なくないはずです。
ところが、そういう学生が就活で農業を希望しても、いったい、
どこに行けばいいのか、さっぱりわからない。
日本の農業は、若い人が農業に就職する道を閉ざしているとし
か思えません。

日本の農業をおかしくしたのは、TPPやアメリカなど海外の
動きや海外の要因ではありません。
日本の農業をおかしくしたのは、日本国内の動きであり、日本
国内の要因です。全中の責任は大きいでしょう。それ以上に、
それをほうっておいた農水省の責任は大きい。
農協改革を、その改革の第一歩にしないといけないでしょう。