お正月に、東京から神戸まで、新幹線で往復しました。米原付
近が大雪で心配しましたが、ダイヤが少し乱れた程度でした。
東海道新幹線にはよく乗ります。
大変快適で、日本が世界に誇る高速鉄道です。
しかし、もう長い間、気になっていることがあります。
車内放送です。
東京から新大阪行きの新幹線のぞみに乗ったとします。
日本語のアナウンスの後、英語でアナウンスがあります。
“This train will stop at”と、こ
こまでは、いいのです。
さて、atの後、停まる駅名がアナウンスされます。
「stop at シッナガワ、シンヨッコハマ、ナゴーヤ、
キオト、アンド、シンオーサカ」
終戦直後の進駐軍じゃあるまいし、シッナガワ、シンヨッコハ
マ、ナゴーヤ、キオト、シンオーサカは、ないだろうと思います。
日本人は、品川のことを、シッナガワと発音したりしません。
品川は、しながわ と発音するのです。
新横浜も、シンヨッコハマではなく、しんよこはま です。
名古屋は、ナゴーヤではなく、なごや と発音します。
京都の、キオトって、いったい、なんでしょう。
京都は、きょうと です。
新大阪も、シンオーサカではなく、しんおおさか です。
日本に暮らしている日本人が絶対に発音しないような発音で駅
名を発音して、いったい、なんだというのでしょうか。
アメリカのことを考えてみましょう。
ニューヨークからボストンやワシントンに向け、アメリカの高
速鉄道アムトラックが走っています。ニューヨークに住む日本人
も毎日のように利用しており、海外からのビジネス客や観光客も
たくさん乗っています。
では、日本人がたくさん乗っているからといって、アムトラッ
クが、駅名を日本語風に発音してくれるかというと、そんなこと
はありえません。
ボストンに向かう高速鉄道は、ニューヨークを出ると、NEW
ROCHEL という駅に停まります。車内放送は、英語だけで
す。英語で
「NEW ROCHEL IS NEXT」
というだけです。
日本人が多く乗っているからといって、NEW ROCHEL
を、「にゅう ろっしぇる」と柔らかく発音してくれるかというと、
そんなことは絶対にありません。突き放すような口調で、「NEW
ROCHEL!」と言います。
当たり前です。アメリカを走る列車なのですから、現地の駅名
をアメリカ人が発音するように発音するのが当然です。
東京から関西に旅行するとします。友人に説明します。
「週末は関西を旅行します。新幹線で新大阪まで行き、帰りは、
京都を見てきます。できれば名古屋にも寄ってみたいと思って
いるんですよ」。
このとき、私たちが、
「シンカンセンでシンオーサカまで行き、帰りは、キオトを見
てきます。できればナゴーヤにも寄ってみたいんです」
と言ったとすれば、相手は、
「えっ? シンオーサカにキオト? いったい、どうししゃっ
たの? ダイジョーブ?」
と、心配してしまうでしょう。
そうです。
日本人が新大阪を、シンオーサカと発音することなど、ありえ
ないのです。
誤解のないように書いておきますが、英語のアナウンス、英語
の説明は、必要です。英語は、ほとんど世界の共通語のようなも
のですから、新幹線やJR、私鉄で、英語のアナウンスをするの
は当たり前です。
しかし、駅名や地名は、その国、その土地の固有の発音ですか
ら、その国、その土地の発音で発音しないと、意味がありません。
たとえば、日本に観光で来たアメリカ人に東京で、
「スミマセン。キオト ハドウイケバイイデスカ」
と質問されたら、
「え? キオトって、何?」
と、思わず、首をひねってしまうのではないでしょうか。
日本の固有の地名、駅名を、英語ならこう発音するのではない
かと勝手に推測して、だれも分からない英語風の発音で発音する
というのは、もう、やめたらどうでしょう。
そんなことは、ちっとも、国際化でもなんでもありません。
その点、東京のJRや私鉄の一部は、ここ何年か、大変素晴ら
しいアナウンスをしています。
東京の地下鉄メトロに乗ると、日本語のアナウンスの後、英語
で、
「NEXT STATION IS おおてまち。PLEAS
E TRNSFER FOR まるのうちライン、ちよだライ
ン、とうざいライン」
と、放送しています。
大手町は、オーテマチといわず、日本人が発音するように、お
おてまち と発音しています。
丸の内線、千代田線、東西線への乗り換えも、へんてこりんな
英語風にマッルノウチライン、チッヨダライン、トーザイライ
ンと不思議な発音をするのではなく、ちゃんと、まるのうちラ
イン、ちよだライン、とうざいラインと、固有名詞は日本語で
発音しています。丸の内線の線は固有名詞ではないので、せん
ではなく、ラインでいいでしょう。ですから、まるのうちライ
ンで、いいのです。
注意して観察していると、東京近郊のJRや私鉄、地下鉄は、
駅名や地名、路線名を、ちゃんと日本語で発音し始めています。
ところが、日本を代表する路線である東海道新幹線が、いつま
でたっても、「シッナガワ」「シンヨッコハマ」「ナゴーヤ」「キ
オト」「シンオーサカ」と放送するのは、どうしても、おかしい
のです。
もっといえば、はずかしい。
新幹線開業50年、東京駅開業100年です。
これを機に、駅名、地名、路線名は、ちゃんと日本語で発音す
るようにしませんか。