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①東洋医学?中医学?漠方医学?
今回は、主に「漢方医学」について取り上げたいと思いますが、他にも「東洋医学」や「中医学」などさまざまな名称があり、混同しがちです。まずは、これらの違いについて確認していきましょう。
東洋医学とは、言葉の通り中国のみならず西アジア、インド、東南アジアなどかなり広範囲の医学を指しています。東洋医学の主流と位置づけられているのが、インド古典医学(アーユルヴェーダ)、中国医学、チベット医学の3つです。
中医学と漢方医学は、生まれは同じ中国医学(中国の伝統医学)ですが、「中医学」は中国で育ち、「漢方医学」は日本で育ったという違いがあります。
古代中国で発祥した中国医学が日本に伝来したのは、5~6世紀頃だといわれています。10世紀頃から日本の風土・気候や日本人の体質に合わせて独自に発展、体系化され、現在の「漢方医学」へと継承されています。
現代では、漢方エキス製剤が健康保険の適用になるなど、広く見直され始めました。この漢方医学で使用される薬は、漢方薬と呼ぶのが正式ですが、慣用的に「漢方」と称することもあります。
一方の中国でも、伝統医学を統合し、西洋医学も融合した「中医学」が体系化され、独自の進化を遂げています。なお、「西洋医学」にもアロマテラピーやホメオパシーなどの伝統医学があります。ですから、現在病院などで主に受けている医学は、厳密にいうと「現代西洋医学」になります。
②「病名」が知りたい西洋医学と「証」が知りたい漢方医学
次に、漢方医学の特徴を西洋医学と比較することでみていきましょう。
まず、漢方医学と西洋医学は、「病気に対する認識」が違います。漢方医学は全体の「証」を診る医療、西洋医学は局所の「病名」を診る医療です。
西洋医学では、まず患者の訴えを聞き、科学的に基づいた視点から「病気」という局所を分類し、画像診断(CTスキャン、レントゲン、超音波画像など)や検査(血液、尿など)などで鑑別を重ね、消去法で「病名」を追い詰めていきます。そして、病名が確定すれば治療内容もほぼ決まります。
西洋医学の治療では、薬を処方することで病気を治したり、病巣を外科的に取り除いたりしますが、副作用・術後の回復に問題が残ります。そして、極端にいえば、病名が決まらないと「原因不明」として治療ができないこともあります。
漢方医学は、体全体を大きな有機体として捉え、一つひとつの臓器や組織は独立したものでなく、連携を取り合いながら機能しているという「心身一体」の考え方で成り立っています。
そのため、漢方医学では、患者の体全体を総合的に判断し、病名よりも患者の「証」の見極めを重視します。患者一人ひとりの体質や病態には個性があり、その特徴が「証」として症例に現れるため、それらを見逃さないように全身をくまなく観察するのです。
それを鑑定し、病態の変化に応じて細かく処方をアレンジしていきます。もちろん、「証」が違えば、西洋医学でいう「病名」が同じ人同士でも、異なる処方になることがあります。
そして、体全体の歪みを正し、病気に対する免疫力や自然治癒力を引き出し、病気を治していくのが漢方医学の特徴といえます。
漢方医学はクオリティー・オブ・ライフ(生活の質)を高めて、普段通りの生活を大切にしながら治療することで、何千年も病気を治してきたという点で「臨床・経験医学」ともいわれます。